成功者はどう稼ぎ、何に金を使ったのか? ティファニー、フォード…19~20世紀を生きた世界の大富豪たちの素顔

文芸・カルチャー

更新日:2021/11/10

世界大富豪列伝 19-20世紀篇

著:
出版社:
草思社
発売日:
世界大富豪列伝 19-20世紀篇
『世界大富豪列伝 19-20世紀篇』(福田和也/草思社)

 誰しも一度くらいは「大金を稼ぎたい」と思ったことがあるだろう。しかし思ったり、願ったり、ただ寝て暮らしたりしていては、どう転んでも無理だ。これまで誰も考えつかなかったことを思いつき、それを具現し、商売にしていくには並々ならぬ努力が必要となる。では世界の大富豪と呼ばれる人たちは、何を思いつき、どう稼ぎ、どこへ注力したのか? それがとてもよくわかる読み物が『世界大富豪列伝 19-20世紀篇』(福田和也/草思社)だ。

 本書は19世紀に生まれ、19世紀~20世紀にかけて活躍した22人の大富豪たちの人生が、生まれた年が早い順で描かれる。ひとりにつき10ページほどの短さであるが、情報と内容が詰まり、鮮やかな筆致でぐいぐい読ませる。

『19-20世紀篇』で最初に登場するのは、ドイツのアルフレート・クルップだ。クルップは父から受け継いだ工房で鋳鉄製造に成功、その技術によって鉄道事業、軍事産業に参入した。1870~71年にドイツ統一を目指すプロイセンと、それを阻もうとするフランスが戦った「普仏戦争」で使われた鋼鉄製後装砲「クルップ砲」を生み出し、その後第一次世界大戦、第二次世界大戦でも兵器を作った。戦後は兵器から手を引き、鉄鋼や造船、プラントなどを手掛ける「コングロマリット」となり、現在はこちらも巨大企業であった「ティッセン」と合併、ドイツを代表する重工業企業「ティッセンクルップ」となった礎を築いた人物だ。

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 クルップは14歳で父を亡くし、破産同様の状態で工房を継いだのだが、仕事を待つのではなく旅へ出て注文を取ってきたり、蒸気機関をいち早く導入したり、第1回万国博覧会で金賞を獲るなど、とにかく仕事熱心なのである(妻からのコンサートの誘いも断ってしまうほどだ)。やはり富豪になる人の胆力と馬力、何をおいても自分がやりたいことを優先させる力はすごいものがある。

 その他にはダイナマイトを発明し、ノーベル賞を創設したアルフレッド・ノーベル(子どもたちへの遺産を減らし、賞創設を指示)、宝飾品ブランド「ティファニー」の創業者チャールズ・ルイス・ティファニー(二月革命で現金が必要なヨーロッパの王族から秘宝を買いまくって成功)とその息子ルイス・コンフォート・ティファニーの芸術的センス(死ぬ前に秘蔵メモを焼き、美しいガラスの製法が永遠の謎に)、警視庁勤めから読売新聞のオーナーとなった正力松太郎(新聞社が部数を伸ばしていくための様々なアイデアと資金投入のタイミングと決断力、そして野球や原子力など幅広い分野への関与)などなど、「ここぞ」というところでひらめき、ライバルを蹴散らし、アイデアを現実のものとしていくダイナミックな人生は読んでいて興奮することだろう。

 そんな錚々たる大富豪たちの中で、読んでいて個人的に感じ入ったのが、栄養剤「わかもと」を世に送り出した長尾よねだ。夫とビジネス・パートナーとひとつ屋根の下に住み(夫とは後に離婚するが生活は変えず)、巧みな戦略によって知名度をアップさせ、売上を伸ばしていくしたたかさには恐れ入った。これぞ“破天荒”である。

 また金の使い方も人それぞれだ。大河ドラマ『青天を衝け』が話題の実業家・渋沢栄一は非常に真面目な人物であったが、妾を囲う艶福家であったらしいこともしっかりと書かれており、その罪滅ぼしなのか女子教育に力を注いでいる。また自動車会社「フォード」を立ち上げたヘンリー・フォードは「高い賃金こそが市場を創設する」と考え、生産性の向上によって車の販売価格を下げ、労働者の賃金をアップさせたそうだ。労働者も消費者であり、車の購買者であるから、賃金が増えれば市場は拡大して会社が儲かる。そうすればさらに賃金をアップさせて……という好循環、政治家や経営者にとっくりと聞かせたい。

 さて【後編】では『世界大富豪列伝 19-20世紀篇』の続きとなる『世界大富豪列伝 20-21世紀篇』を取り上げ、19世紀末から20世紀に生まれ、20~21世紀にかけて活躍した大富豪たちについてご紹介する。

文=成田全(ナリタタモツ)

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