「出前がスイスイスーイ♪」社名連呼のCMで急成長! 常識を打ち破った「出前館」が成功した理由【書評】

ビジネス

更新日:2021/11/17

それっておかしくね? 「素朴な問い」から始める出前館のマーケティング思考
『それっておかしくね? 「素朴な問い」から始める出前館のマーケティング思考』(藤原彰二/ダイヤモンド社)

 コロナ禍でフードデリバリーを使う機会が増えた。はじめはおそるおそるアプリから注文するのだが、一度慣れてしまえば簡単だ。家から出ずして、30分後くらいには好きなものが食べられる誘惑には抗いがたい。筆者がよく使うシーンは、会社のオンライン懇親会でちょっと良いものを食べたいとき。お昼に開催されることが多いので、準備する手間がなくてありがたい。

 すっかり定着したフードデリバリーだが、中でもひと際存在感を増しているのが「出前館」だ。ダウンタウンの浜田雅功さんが「で、で、出前館、出前がスイスイスーイ♪」と歌いながら踊るテレビCMは耳馴染みが良く、バラエティ番組などでこのCMや「出前館」自体が話題になることもある。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで成長している同社だが、実は1999年に設立された20年以上の歴史がある会社。インターネット業界では「老舗」の部類に入る。

 どうして老舗企業の出前館がここにきて急成長を遂げられたのか? 本書『それっておかしくね? 「素朴な問い」から始める出前館のマーケティング思考』(藤原彰二/ダイヤモンド社)を読めば、その秘密が見えてくる。著者は、2020年に出前館取締役/COOに就任した藤原彰二さん。元プロキックボクサーという異色の経歴をもつ藤原さんは、「それっておかしくね?」を口癖に、数々の常識を覆す考え方で出前館を改革している。本書ではテレビCMの裏側から、マーケティングや組織論についても語りつくしている。

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なぜ社名連呼のCMなのか?

 出前館がテレビCMで大きく知名度を上げたことは間違いないが、なぜ社名連呼のCMを選んだのだろう。かなりの本数を打っていたし、浜田さんへのギャラも……。一見、博打にも思えるCM攻勢には、どんな戦略があったのだろうか。

 実は、出前館というサービスにとって「知名度」はものすごく重要。近年グーグルなどの検索サービスは、検索結果のいちばん上にお店の情報をダイレクトに掲載し、予約できる仕組みを構築している。たとえば、「渋谷 デリバリー」で検索したとき、ユーザーは「出前館」などの注文サイトを経由せずにお店に電話することもできる。

 だが、キーワードに「出前館」と含めて検索してもらうと、単に「デリバリー」の検索に比べて出前館で注文する確率がぐっと高まる。著者によれば、通常の検索では1%なのに対して、「出前館」というワードが含まれる“指名検索”では約10倍になったという。だから、たくさんのお金をかけて知名度を上げ、“指名検索”を増やす施策が理にかなっているのだ。

 テレビCMの企画は、当時「お金がかかりすぎる」という理由で社内から猛反対されていたそう。だが、藤原さんはその“常識”を打ち破り、出前館を急成長に導いた。本書では他にも、藤原さんの「それっておかしくね?」を起点にしたマーケティング事例が豊富に語られている。選挙特番などでよくある「L字表示」でキャンペーン内容を訴求したCMや、ハレの日にビザや寿司を頼む日本人の習慣を利用した施策など、イメージしやすい事例が当事者から語られているからおもしろい。進化を続ける老舗企業には、明日の仕事のヒントがあるはずだ。

文=中川凌 (@ryo_nakagawa_7

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