もし親の介護が必要になったらどうすれば? 介護保険制度を上手に活用できる『最新版 図解 介護保険のしくみと使い方がわかる本』

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更新日:2021/11/19

最新版 図解 介護保険のしくみと使い方がわかる本
『最新版 図解 介護保険のしくみと使い方がわかる本』(牛越博文:監修/講談社)

 誰だって老いていく。今は元気にしている親も、老後なんて想像もつかない自分も、隣にいるパートナーも、いずれ年に勝てなくなり、体が思うように動かなくなる。年齢以外にも、脳梗塞をはじめとする病気にかかって、ある日を境にまったく違う日常を強いられることもある。そんなとき必要になるのが、介護だ。つまり、いつか「介護保険制度」を使う日が来ることを想定しなければならない。

 介護保険とは、老人ホームに入居したり、デイサービスに通ったり、さまざまな介護を受けられる社会保障のひとつだ。40歳を超えれば、介護保険料として毎月の給与から支払うなどしている。

 しかし介護保険制度と聞いて、ピンとくる人のほうが少ない。何をどうすれば介護サービスを受けられるのか、何も手がかりがつかめず途方に暮れる人もいるかもしれない。そんなとき頼りにしてほしい本として、『最新版 図解 介護保険のしくみと使い方がわかる本』(牛越博文:監修/講談社)がある。

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まず一番は窓口に相談すること

 本書の特徴を一言で述べると、介護が必要になったとき、この本を読めば、大まかな流れや手続きがすぐに把握できるということ。介護保険制度の手引きといっても差しつかえない。

 まず一番にするべきことは、市区町村や地域包括支援センターに「介護保険制度を活用したい」と相談・申請をすることだ。その相談を受けて、担当者が訪問調査を行い、介護を必要とする人がどれだけの支援を必要としているか認定を行う。その認定には「要介護」「要支援」「非該当(自立)」の3段階があり、受けられる介護サービスが変わる。

最新版 図解 介護保険のしくみと使い方がわかる本 P16-P17

 もう一度、一番大事なことを述べると、介護が必要になったときは、迷わず市区町村や地域包括支援センターに相談すること。申請から介護サービスの開始まで30日程度かかるとされ、相談せずにギリギリまで心身を酷使して頑張ると、大変な苦労を強いられる。介護はとてもひとりで乗り切れるものじゃない。家族の介護が予想された時点で、各窓口に相談してみよう。

良いケアマネジャーを選ぼう

 介護保険制度を活用するうえで、重要な存在となるのがケアマネジャーだ。ケアマネジャーとは「介護支援専門員」のこと。利用者が、必要な支援を得られるよう相談にのり、今後の介護生活を一緒に考え、その管理などを行う重要な役割を担う。利用する介護施設を選ぶときも、ケアマネジャーの意見が参考材料になる。

最新版 図解 介護保険のしくみと使い方がわかる本 P28-P29

 つまりケアマネジャーは介護生活を送るうえでのパートナーであり、その良し悪しで、介護生活が左右されるといっても過言ではない。

最新版 図解 介護保険のしくみと使い方がわかる本 P48-P49

 本書では、ケアマネジャーが要介護者の状態に応じて組んだ「ケアプラン」の一例を解説。要介護者や家族の希望を反映しつつ、プロの目線だからできる判断も加えられたケアプランが組まれている。よりよい介護生活を送りたければ、ケアマネジャーの選択が大きなポイントとなるのがよくわかる。

 しかし初めての経験だと、一体どうやって選べばよいのかわからない人も多い。そこで本書は4つのチェックポイントをあげている。

①利用者の意見をよく聞いて反映してくれる
②専門知識が豊富で充分な情報を提供してくれる
③サービス事業所とチームワークがとれている
④フットワークが軽く、気軽に自宅に足を運んでくれる

 これらの4つを満たしているか、しっかり確認しよう。また、ケアマネジャーも社会人なので、電話対応の雰囲気も見極めのひとつだ。

介護サービスのお金はどれくらい必要?

 介護生活で気になるのが、やはり金銭面ではないだろうか。本書ではその説明も図解でわかりやすく説明されている。

 介護サービスを受けると、費用の一部は自己負担となる。自己負担額は所得によって異なり、1~3割のいずれかを支払う。

最新版 図解 介護保険のしくみと使い方がわかる本 P66

 ただし自己負担額を払えばいくらでも介護サービスを受けられるというわけではない。「要介護」や「要支援」といった7段階の介護サービスごとに決められた、1カ月の利用限度額も決まっている。それを超えた分は全額自己負担となるので、基本的には限度額内に収めるかたちでケアプランを立てていく。

最新版 図解 介護保険のしくみと使い方がわかる本 P68

 また、なかには介護保険が適用できないサービスもあり、施設での食費や滞在費など、全額自己負担となるものもある。このあたりは本書の第3章をはじめからじっくり読み通せば、不足なく理解できると思うので、詳しく知りたい人はぜひ本書を手に取ってほしい。

 もし費用面で漠然とした不安を覚える人に一言いうならば…介護保険制度には「高額介護サービス費」の制度があるので、払い過ぎた分は戻ってくるということだろうか。このあたりも本書で解説されているので、不安な人ほど介護保険制度の手引きを一読して損はないだろう。

 介護は肉体的にも精神的にも、かなりのパワーを消費する。とてもひとりで背負いきれるものではない。だから介護サービスを活用したいと、少しでも頭をよぎったら、まずは市区町村や地域包括支援センターに相談しよう。介護する人も、介護される人も、ゆとりある毎日を送る一助となるだろう。それこそが介護保険制度の存在意義であり、上手に活用しなければ、保険料の払い損で、もったいない限りである。

文=いのうえゆきひろ

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