棄民、箝口令、無主物の責任…?! 知りたくなかった原発事業の「不都合な真実」
更新日:2012/10/5
プロメテウスの罠―明かされなかった福島原発事故の真実
ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader | 発売元 : 学研 |
ジャンル:ビジネス・社会・経済 | 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy |
著者名:朝日新聞社 | 価格:1,131円 |
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とにかく腹の立つ本でアイコンを選ぶのに困った。しかし、どのような国に住まわされているかという現実をチェックするためには、選挙権を持つすべての人々が読まなくてはならない本だ。
サブタイトルは「明かされなかった福島原発事故の真実」。福島原発事故について朝日新聞が現在も連載しているドキュメンタリーの書籍化だが、東電と原子力保安院の無責任ぶり、官庁の無策は目を覆うばかりだ。しかもマスコミもその無責任に加担していた(現在も加担している媒体もある)。当の朝日新聞特別報道部が「はじめに」で原子力発電について“私たちが長い間「安全」と信じようとしてきたもの”と書いている。その安全性をまったく検証してこなかったことへの反省と弁解の入り交じった感情をなんとか表現しようとしている一文と読んだ。
しかし、彼らは無責任な加担をつづけようとはしなかった。なぜ恐ろしい事故が防げなかったのか、なぜ十分な対処がいまだにできないのか、なぜ住民はすぐに避難させられなかったのか、官僚・政府は何をしていたのか、疑問を抱きつづけ、その取材の成果が本書となった。「おわりに」では“主観を省き、事実のみを書く”“匿名ではなくすべて実名で書く”など取材の姿勢が述べられている。その淡々とした文章から、かえって原発事故の“不都合な真実”を隠蔽しようとしてきた人々の姿が露わになった。
事故の重大性をこの期に及んで糊塗しようとする東電はもちろん、原発の安全性を盲信したためトラブルに対処できなかった行政機構、原爆の内部被爆を認めなかったために充分なデータを用意できない保健機関、東電の落ち度を認めない裁判官、報道に待ったをかける一部のマスコミ。それぞれの権力がまったく機能していない、存在意義を問われる現状となっていることがよく理解できる。この事故はまさに人災なのだ。
絶望的な状況のなか、唯一希望が持てるのは、内部被爆した子供も疎開さえさせれば体内の放射線物質を減らせるということ。被爆した人々に「心配するな」と言うのは無責任だが、免疫力が低下しないような生活を心がけ被害を最小限にとどめることも可能ということだろうか。
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