政治がわからぬ人にこそ読んでほしい! ライターと小川淳也議員の問答365日。 話題の『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』

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公開日:2021/11/28

時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか?
『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』(和田靜香:著、小川淳也:取材協力/左右社)

 先日行われた第49回衆議院議員選挙は、与党が293議席を獲得して勝利を収めた。そして後日発表された最終投票率は55.93%、戦後3番目に低い投票率だったとか。

 投票に行かなかった友人に理由を尋ねると「どこに入れていいのかわからないし、難しい」という答えが返ってきた。投票しなかった残りの44.07%のなかには、そうした意見もあるだろう。

 また「政治は難しい」と敬遠する気持ちも痛いほどわかる。新しい法案が可決され、その内容を確認しても煙に巻くような内容が書かれているだけ。その結果、モヤモヤした実態のない不安ばかりが募っていく、そんな日々を過ごしている人も多いはず。

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『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』和田靜香:著、小川淳也:取材協力/左右社)は、政治が何もわからない人にこそ手に取ってほしい一冊だ。

 著者の和田靜香さんは、音楽と相撲をこよなく愛する50代のフリーライター。音楽評論家の湯川れい子氏のアシスタントを経て独立した。音楽雑誌などで執筆していたが、しかし2008年以降、仕事が激減。ライター業の傍ら生計を立てるために、パン屋やスーパー、レストラン、コンビニなどさまざまなバイトをこなしてきたという。

 そんななか、世界はコロナ禍に突入。当時彼女は、人通りの多い通りに面したおにぎり屋でバイトをしていたが、感染に怯えてシフトを入れずにいると、さらっとクビを切られてしまった。和田さんは「自分の人生は行き当たりばったりだった」と振り返りつつも、こう綴る。

「ええっと、和田さん、あなたの人生のダメさや不安は、あなた自身の問題じゃないですか? いい年をして、もっと計画的にやるとか、努力されたらいかがでしょう?」
 きっと、そんな風に自己責任を問われるだろう。まったくその通りだけど、世の中そうそう上手くは生きられない。努力は必ずしも報われない。と言うか、この時代、いくら計画したって、計画通りに生きられる人なんて、ほんの一握り。私みたいな人があっちにもこっちにもいて、みんな不安で、息もできないよう。

 誰もが不安なコロナ禍で、政府は260億円をかけて布マスクを配ったり、迷走の末に10万円を給付したり、感染が広がるなかでGoToをスタートしたりと、迷走しているように見えたのも記憶に新しい。筆者も「どうしてそうなる!?」と、ツッコミを入れてはいたが、選挙で意思表示をするしかできなかった。しかし和田さんは「分からない気持ち」を直接国会議員にぶつけに行く行動力があった。同書の原点には、彼女の怒りと熱意がある。

 そんな和田さんを迎え撃つのは、現・立憲民主党所属の国会議員、小川淳也衆議院議員。彼は『なぜ君は総理大臣になれないのか』というドキュメンタリー映画で、17年間の政治家人生をさらけ出した、話題の政治家だ。有象無象がはびこる政治の世界にいながら、不器用に政治と向き合う姿が話題になった議員だ。“なぜ君”効果か、地盤がない小川議員は長年選挙で苦戦を強いられていたが、先日の衆院選では、香川1区で自民党の平井卓也衆議院議員に圧勝している。

 同書を読むと、ふたりがいかにガチンコで本を作ってきたか、その苦労が伝わってくる。まず、1回目の面談にほぼノープランで現れた和田さんに対し、小川議員は「和田さんが何に困っているか、不安に思っているかを、まずはゆっくり考えて具体的に書き出してください。そこからいっしょに考えましょう」と提案するシーンからはじまる。お互いに手探りのまま進み、その過程がすべて綴られているという、斬新な構成も同書の魅力だ。

 そして、目次に並んでいるのも「『なんか高い』では済まされない税金の話」「歳をとると就職できない理由」など、日本に住むすべての人が抱える“関心事”ばかり。税制など、難しい制度にも切り込んでいるが、和田さんの軽妙な筆致と小川議員のわかりやすい解説によって、政治ビギナーにやさしい内容になっている。

 読み進めるうちに「なるほど、これが理想の形なのか」と、つい納得しそうになるが「小川さんが100%正解ではない」というコラムでは、そうした読み手の危うさにも触れている。

 小川議員は自分の案も“正解ではない”としつつ「この場のコンセプトは、専門家であり、責任ある立場の人間と、普通に暮らしてきた人が、取っ組み合いで一緒に考える、それだと思う」と語った。

 同書における小川議員の役割は、日本に暮らす私たちが、“今何を考えるべきなのか”、そのヒントをくれる存在と捉えるのが適切なようだ。

 私たちには、よりよい未来を考える“権利と義務”がある。この本は、未来を考えはじめた人の入門書になるはずだ。

文=とみたまゆり

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