愛する人を失った守護者×伝説の巫女のゆくえから目が離せない! 王道ファンタジー『聖巫女の守護者』

マンガ

更新日:2021/12/1

聖巫女(シアリズ)の守護者
『聖巫女(シアリズ)の守護者』(友藤結/白泉社)

「花とゆめ」で活躍中の漫画家・友藤結氏の新シリーズ『聖巫女(シアリズ)の守護者』(白泉社)の1巻が、10月20日に発売となった。友藤氏のヒット作であり、テレビアニメ化も決定した『贄姫と獣の王』は、魔族の王と、彼に生贄として捧げられた人間の少女を中心とした物語。ハイファンタジーの世界観が、多くの読者を魅了した。

 そして待望の新作『聖巫女の守護者』では、特別な巫女と、彼女に選ばれた青年の主従ファンタジーを主軸とした物語が紡がれる。

 龍神信仰を掲げる世界で、異端者と呼ばれる少年・サビは、忍び込んだ修道院で“聖巫女”の生まれ変わりだと崇められている少女・アリスと出会った。立場が全く異なる2人は互いに惹かれ合うが、16歳になったアリスは化け物と化した人間に襲われ、命を落としてしまう。

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 悲嘆に暮れるサビの前で、アリスは突如息を吹き返した。だがそれはアリスではなく、彼女の身体を器に復活した伝説のシアリズ本人だった。サビはシアリズの“守護者”に選ばれてしまい、役目を果たせばアリスの魂を取り戻すという約束のもと、2人で世界を救済する旅に出る。だがすべての元凶で、人の心を惑わし穢す“黒き龍”ことクロウは、シアリズに強い執着を抱き、おまけにアリスの魂も手中に収めていたのだった――。

『聖巫女の守護者』はシリアスを基調としつつも、コメディ的な要素も展開する。とりわけシアリズとサビが見せるやりとりが絶妙で、2人の関係の変化は本作の読みどころのひとつだ。

 シアリズはサビを「バカ犬」や「ポチ」などと呼び、巫女とは思えぬ言動で彼を翻弄していく。なにせ目覚めた時の台詞が「キャンキャン吠えるなバカ犬」で、あまりの事態にサビは茫然となった。シアリズは圧倒的な聖力を持つ“聖巫女”であり、と同時に人間らしい感情も持ち合わせている。物語が進むにつれて彼女のさまざまな一面が見えてくるのが興味深い。

 サビはアリスとは何もかも異なるシアリズに当初は反発し、それでもアリスの魂を取り戻すためと、渋々従っていた。だが旅を続けてさまざまな出来事に遭遇するなかで、少しずつシアリズとの絆を深めていく。とはいえ、彼が愛しているのはあくまでアリスだ。シアリズの中に芽吹きつつある感情が今後どのように変化するのか、ロマンスの行方も見逃せない。

 サビはアリスに一途に思いを寄せているが、“黒き龍”のクロウもまた、別の意味で一途な男である。何千年もの間、一方的にシアリズを愛し、今もなお圧倒的な執着を見せ続けている。彼のもとにいる謎の少年カミルを含め、“黒き龍”側にはいまだ謎が多く、今後の展開を見守りたい。

 コミックスには、幼き日のアリスとサビをめぐる番外編も収録されている。切なくかつほっこりとしたエピソードで、こちらもファン必見だ。

 新たに幕を開けた王道ファンタジー『聖巫女の守護者』。2人の旅の行方をぜひ見届けてほしい。

文=嵯峨景子

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