「家計簿」が生き方も変える? 『これは経費で落ちません!』著者の新シリーズが漫画化

マンガ

公開日:2021/12/5

派遣社員あすみの家計簿@comic
『派遣社員あすみの家計簿@comic』(青木祐子:原作、雨野さやか:漫画/小学館)

 家計簿をつけるのは面倒くさい。そもそも家計簿って本当に必要なのだろうか。そんな疑問を抱いたら、『派遣社員あすみの家計簿@comic』(青木祐子:原作、雨野さやか:漫画/小学館)を読んでほしい。

 原作小説を書いた青木祐子さんは、テレビドラマ化もされた『これは経費で落ちません!』(集英社)の作者だ。経理部で働く主人公が、領収書から社内の問題をあぶりだし、解決させるという斬新なストーリーで反響を呼んだ。

 今回も青木さんは人生とお金の関わりをテーマに、家計簿とは何なのかをわかりやすく教えてくれる。そして2021年10月、漫画家の雨野さやかさんによってコミカライズ版が発表された。

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 28歳の藤本あすみは、企業で正社員として働いていた。本作は、あすみが寿退社をする場面から始まる。しかしその日の夜に、婚約者は彼女の前から姿を消す。予定が狂ったあすみだが、退職後も正社員の頃と同じようにお金を使い、経済的に困窮してしまう。

 彼女に活を入れたのが、親友の原沢仁子(はらさわ・ひとこ)である。

“…あすみさ
家計簿つけてみたら?
つけたことないでしょ?
自分がいかに恵まれてたかわかるよ”

 お金がないなら、ないなりに生活を工夫するしかない。

 当たり前のことだと思うだろう。だが、一見のほほんとした雰囲気の主人公が、多くの人が経験する人生の壁にぶつかりながらも、だんだんと家計簿の大切さを理解していくところに本作の面白さがある。

 あすみは家計簿をつけ始め、自分が何にどれだけ使っているのかがわかってくる。

“抵抗あるとか わがまま言ってられない
働かなくちゃ
泣いても お金は増えない!”

 家計簿をつけ、振り返ることであすみは自分の人生を前向きにとらえられるようになっていく。

 1巻で既に彼女は気づき始めたのかもしれない。幸せになるためには、必ずしもお金持ちになる必要はないことを。

 ただ自由に使えるお金がゼロになれば、生活が大変になるのはもちろん、心にも余裕がなくなってしまう。お金のやりくりを工夫することは、自分の精神を安定させる手段のひとつであり、家計簿はそのために有効活用できるツールなのだ。

「私も、家計簿つけてみようかな」

 本作を読んだ後、多くの人がそう思うのではないだろうか。

文=若林理央

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