【シリーズ累計50万部突破】「このミステリーがすごい!」大賞作『元彼の遺言状』の続編登場!人気の理由、見どころは?

文芸・カルチャー

公開日:2021/12/3

倒産続きの彼女

著:
出版社:
宝島社
発売日:
倒産続きの彼女
『倒産続きの彼女』(新川帆立/宝島社)

「このミステリーがすごい!」大賞受賞作『元彼の遺言状』(新川帆立/宝島社)の人気がとまらない。「ぜひとも映像化してほしい」なんて声も上がり、大きな話題を呼んでいるのだ。ヒロインは、お金が大好きな高飛車美女弁護士・剣持麗子。「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」という奇妙な遺言と、数百億円ともいわれる遺産。その分け前をめぐるこのリーガルミステリーは、多くの人を魅了してやまない。

 そして、今、続編として刊行された最新作『倒産続きの彼女』(新川帆立/宝島社)にも注目が集まっている。「また、あの剣持麗子が主人公なのか?」と思えば、どうやら違うらしい。前作とは別の物語が展開されるため、この作品から読み始めても良さそうだ。今回のヒロインは、麗子の1つ後輩、ぶりっ子弁護士・美馬玉子。最新作では、玉子と麗子はコンビを組み、「会社を倒産に導く女」として内部通報されたOLの身辺調査を行うことになる。そのOLは転職するたびに企業が倒産、今、彼女の勤める会社にもその危機が迫っているのだ。シリーズ累計50万部突破。どうしてこのシリーズはここまで多くの人を惹きつけるのか。『倒産続きの彼女』の見どころとともにご紹介するとしよう。

強烈キャラのヒロインに滲み出る人間味、その成長に共感

 このシリーズの一番の魅力はヒロインのキャラクター造形だろう。「お金が大好き」で高飛車な剣持麗子の姿も衝撃的だったが、ニューヒロイン、ぶりっ子弁護士・美馬玉子もまた強烈なのだ。現在婚活中の玉子は、どんな男も手のひらで転がす小悪魔的女性。どんな相手にも喧嘩腰の麗子とは正反対の性格ながら、麗子に匹敵する強さを秘めた女性だ。

advertisement

 だが、読めば読むほど、玉子の姿に感情移入せずにはいられない。玉子は唯一の家族である祖母と2人暮らし。ぶりっ子を演じるのは、周囲の顔色ばかりが気になるため。「いい男を捕まえたい」と願う裏には悲しい過去、そして、劣等感があるのだ。美馬玉子にしろ、剣持麗子にしろ、このシリーズではぶっ飛んだヒロインを描きながらも、そこにしっかり人間味も添える。だからこそ、読者は彼女たちの活躍からいつの間にか目が離せなくなってしまうのだろう。

ウィットに富んだ謎を支える法律知識と専門知識

 そんな玉子と麗子が今回解き明かしていくのは、謎の連続殺「法人」事件だ。突飛にも思える設定かもしれないが、この物語ではその謎がきちんと法律知識に基づいて解き明かされていく。何を隠そう、著者の新川帆立さんは東大法学部卒の元弁護士。だからこそ、本格的な法律知識がこのミステリーの土台基盤となっているのだ。

 だが、このシリーズはそれだけではない。法律以外の専門知識がさらに物語に深みを与えていくのだ。たとえば、『元彼の遺言状』では民俗学の「ポトラッチ」という概念や経済心理学の「コンコルド効果」が謎を解く鍵となった。最新作で、鍵になるのは、数学の「みにくいあひるの子の定理」。その知識が、劣等感の強い玉子の思考を解きほぐす一要素になり、謎を解くヒントにもなる。法律知識と他の専門知識の組み合わせ、その奥行きが、読者をぐいぐい物語へと惹き込んでいく。

怒涛の展開とスピード感、読後の爽快感

 さらに、怒涛の展開とスピード感も、この作品シリーズの大きな魅力だ。たとえば、最新作では、不審なOLの調査を進めていく中で、玉子と麗子は死体を発見することになる。それも、企業のリストラ勧告で使われてきた「首切り部屋」で、本当の「首切り死体」を発見してしまうのだ。予想外の事件に巻き込まれていく2人はその危機をどうやって脱していくのか。ハラハラドキドキが止まらない展開の先、読後感は爽快。重苦しい世の中の空気さえ吹き飛ばすようなこの痛快さは、閉塞感ただよう今の時代にピッタリといえるだろう。

 このシリーズは単なるリーガルミステリーではないのだ。法律知識をベースとしながらも、人間味のある強烈キャラとあらゆる専門知識、そして、怒涛の展開が化学反応を巻き起こしていく。玉子や麗子の活躍に、何だか勇気が湧いてくる。毎日を頑張ろうと思えてくる。未読なら今すぐ読むべし。この新感覚の爽快ミステリーシリーズをぜひともあなたも体感してほしい。

文=アサトーミナミ

あわせて読みたい

この記事で紹介した書籍ほか

倒産続きの彼女

著:
出版社:
宝島社
発売日: