「胃が疲れてんのかな」と思ったら大腸ガンだった! 38歳BL漫画家が描く実話ポジティブ闘病記

マンガ

公開日:2021/12/30

末期ガンでも元気です 38歳エロ漫画家、大腸ガンになる
『末期ガンでも元気です 38歳エロ漫画家、大腸ガンになる』(ひるなま/フレックスコミックス)

「なんとなく身体の調子が悪い……」ということは誰にだってあるだろう。そして、多くの人は、気になる症状をそのまま放置しがちなのではないだろうか。だが、この本を読むと、考えが変わるかもしれない。その本とは『末期ガンでも元気です 38歳エロ漫画家、大腸ガンになる』(ひるなま/フレックスコミックス)。SNSで話題沸騰、BLマンガ家・ひるなまさんによる闘病記だ。

 ひるなまさんが身体に不調を感じたのは、2019年頃のこと。感じていたのは、「お腹が減る」という症状だった。昔の量の半分くらいしか食べられず、それなのに、いつも空腹。「胃が疲れてんのかな?」と思っていたというが、それは大腸ガンの末期の自覚症状だった。ある時、激しい生理痛をきっかけに受診。そこから大腸ガンだと発覚するまで3週間、7時間の手術を経て「ステージ4の末期ガン」と判明するまでさらに2週間、後日、詳しい検査結果が分かり「術後の平均余命は30カ月」だと告げられるのに、もう追加で3週間……。そんな怒涛の日々が冴えわたる筆致で描かれていくのだ。

「闘病記」というと、どうしても暗くなりがちだが、この作品はポジティブ。鳥獣戯画のウサギ風に描かれた作者自身の姿が重くなりがちなテーマを和らげ、そのウサギを支える偉大なる医師や友人たちが、圧倒的画力で個性的に描かれているのについ目を奪われる。そして、軽妙な語り口に、ページをめくる手が止められなくなってしまう。構成も絶妙。大病院への紹介状をもらった帰り道、台風で同人販売会イベントが中止になったことを嘆いたり、注腸造影検査を「おいしそうな桃」のイラストで説明したり、大腸内視鏡の衝撃に耐えながら「これからはもっとリアルにBLが描けそう」だなんて思ったり……。とにかく、大変な状況であっても明るくコミカルに描き出されている。

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 だが、ひるなまさんが感じていた不安は相当なものだったはずだ。彼女は病気以外にも問題を抱えていた。夫がうつ病であること。それに起因して仕事が不安定で経済的に貧弱なこと。そして、自身が「虐待サバイバー」であるということ……。自分の夫に病気についてどう受け止めてもらえば良いのか。入院手続きには同居家族以外の「身元保証人」(=入院費の連帯保証人)、手術には二親等以内など病院によって条件の異なる「立会人」が必要だが、それを親に頼めない場合、一体どうすればいいのか。ひるなまさんは、自身の経験を事細かに教えてくれる。その苦悩を垣間見るにつれて、胸が苦しい。そして、彼女と似た状況の人もそうでない人も、「自分が病気になった場合」について思わず考えさせられてしまうのだ。

「このくらい大したことないだろう」と自分の不調と向き合っていない人こそ、この本を読むべきだろう。ひるなまさんの経験は、決して他人事ではない。人間、いつ何が起こるか分からない。いつ大きな病気にかかったっておかしくはないのだ。体に不調を感じたらすぐに病院に行こう。年に一回は健康診断に行こう。ひるなまさんのポジティブな闘病記に学ぶべきことは多いに違いない。

文=アサトーミナミ

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