三世代100年の歴史を紡ぐ朝ドラ『カムカムエヴリバディ』。稔の出征・出産・岡山空襲……怒涛の第四週を振り返る

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公開日:2021/12/8

NHKラジオ ラジオで!カムカムエヴリバディ 2021年 12 月号
『NHKラジオ ラジオで! カムカムエヴリバディ 2021年12月号』(NHK出版)

 11月1日からスタートした、朝の連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』。朝ドラ史上初めて、祖母・母・娘、三世代の女性たちを主人公にしたファミリーストーリーです。「ラジオ英語講座」を軸に、昭和から平成、令和をまたぐ100年の物語が展開。同じく朝ドラ『ちりとてちん』などで知られる藤本有紀が脚本を務めます。

 三世代の祖母にあたる一人目の主人公・安子(上白石萌音)は岡山市内の和菓子屋に生まれます。第三週までは安子と、のちに夫となる稔(松村北斗)の物語。ふたりの出会いや、次第に惹かれ合う様子が描かれました。しかし雉真繊維という大企業の後継ぎである稔と、家業のため婿を取る予定の安子の結婚は、当時は素直に認められるものではありません。お互い「将来をともにするならこの人」と心に決めながらも引き裂かれるふたり。実は安子のことが好きな稔の弟・勇(村上虹郎)との三角関係の描写も。しかし皮肉にも、稔に召集令状がきたことをきっかけに、二人の仲は認められることに。わずか一ヵ月のみの夫婦生活を仲睦まじく暮らすふたりの姿に、朝から幸せな気持ちになりました。

 続く第四週は、そんな幸せだった前週から一転、稔の出征からスタート。稔がいなくなった後に、安子の妊娠が発覚。また、野球の腕を買われて東京の大学に通っていた勇のもとにも召集令状が届き、勇も岡山に帰省してきます。勇ら義家族に見守られ、安子は無事に女の子を出産。子供の名前を「実はもう決めとるんじゃ」と前週言っていた稔でしたが、その名前は「るい」であることが、稔の残した命名書で判明しました。「るい」と聞いて安子が思い出したのは、ふたりの馴染みの喫茶店で聴いたレコードの歌い手、ルイ・アームストロング。安子は「どこの国とも自由に行き来できる、どこの国の音楽でも自由に聴ける。僕らの子供にゃあそんな世界を生きてほしい。ひなたの道を歩いてほしい」という稔の言葉も同時に思い出し、名前に込められた思いを悟ります。しかし今は戦時中で、異国の音楽は厳禁。稔の真意を伝えられず安子が戸惑っているうちに、野球少年勇は「野球の塁じゃ」と勘違い。これには義父・千吉も義母・美都里も納得していないようでしたが、勇は「みんなでるいを守るんじゃ」と続けます。この言葉、稔が傍にいない安子にとってどんなに心強い言葉だっただろうかと、ほろりとさせられました。

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 そんな勇も出征。岡山市も空襲にさらされます。安子とるい、千吉、美都里はなんとか難を逃れるも、安子の母・小しずと祖母・ひさは避難した先の防空壕が焼夷弾に焼かれ、帰らぬ人に。「あの防空壕に入れ」と二人に指示し、自分は火消しへ走った安子の父・金太は「自分の判断が二人を殺してしまった」と、心身ともに調子を崩してしまいます。そんな岡山空襲からひと月半ほどで、日本は敗戦。ラジオからは玉音放送が流れます。

 ここで印象的だったのが、玉音放送を聴いて泣き崩れる金太の姿と、数日後、戦時中は敵への情報漏洩を防ぐため禁止されていた天気予報がラジオから流れてきたときの千吉の「こねんして、ちょっとずつ元の生活にもどりゃあええが」という言葉の対比。家も家族もなくし、元の生活に戻れない金太と、家も家族も今のところ無事な千吉の終戦の捉え方の差に、胸が苦しくなりました。

 床に臥せ、生きる気力を取り戻せない金太。しかしある日、安子が見よう見まねでつくったおはぎを食べると、台風の中焼け跡となった自宅へ走り出します。そこで掘り起こしたのは、配給から少しずつよけておいたという砂糖の入った缶。「あねんまじいおはぎゅう備えられたんじゃあ、小しずらも安心して成仏できんわ」とおはぎをつくり、たちばなの再建へ向けて動き出しました。金太の「菓子は苦しい時こそ必要なもんじゃとわしは思う。たちばなの菓子で救われる人がきっとおるはずじゃ」という言葉通り、おはぎを食べて「うめえうめえ」と顔をほころばせる人々。でもその時、戦争孤児と思しき男の子がおはぎを盗み食い。叱る金太でしたが、しまいにはその子におはぎひと箱を渡し、「売り上げ金を持ってくれば一部を渡す」と伝えます。実はその子に、出征していまだ帰らない安子の兄・算太の陰をみた金太。「その子が戻ってきたら、出征中の算太も戻ってくる」という賭けをした、と安子に話します。そしてある晩、その男の子は本当にお金を持って戻ってきました。しかし金太はその子を算太と勘違い。勘当したまま送り出してしまった算太との再会を喜び、戦前幸せだったころの家族の記憶を回想しながら息を引き取ります。

 そして終戦から三カ月半以上が経ち、ついに勇が帰還。しかし稔は戦死したとの手紙が届きます。訃報を聴いた直後、以前ふたりで訪れたこともあり、稔の出征が決まってから幾度となくお祈りに行った神社へ走る安子。そこで発した「(稔さん)意地悪せんで……」という言葉は、稔が出征前に子どもの名前について「(生まれるまで)秘密じゃ」と言ったときに、安子が返したのと同じ言葉。前週の幸せから一転、ほぼすべての肉親を失い、稔までもなくしてしまった安子の悲しみに、胸が張り裂けそうになる第四週でした。

 特に泣かされたのは、金太とおはぎを作りながら「戦前は女子おなごだからとお菓子づくりは教えてもらえなかった。今お父さんにこうして教えてもらえて嬉しい」と喜んだり、男の子から父の最期の様子を聞いて「お父さん、お兄ちゃんに会えたんじゃ」と喜ぶ安子の姿。自分がどんな辛い立場にあっても、その時の幸せをしっかりと感じ、相手の幸せも喜ぶことができる。100年の物語という性質上もあってか、とにかく急展開の安子編ですが、置いて行かれず、一喜一憂して観られるのは、そんなどこまでも優しい心を持った安子のことを応援せざるにはいられないからなのかもしれません。

 また、おはぎを売った男の子に安子は売上金をそのまま渡し、「どねえなことでもええ、ちょっとずつ商いを始めて。しっかりと生きていかれえよ」と声をかけて送り出しました。あの男の子が商いで身を立てる姿が今後見られるのか、気になります。
とにかく、今週が悲しみの底であることを祈るばかり……そんな第四週でした。

 稔という繋がりを失ってしまった雉真家と安子の関係は良好に続いていくのでしょうか。

文=原智香

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