好きなものは好きでいていい! コスプレギャルと服作り少年の純情ラブコメマンガ『その着せ替え人形は恋をする』

マンガ

公開日:2021/12/10

その着せ替え人形は恋をする
『その着せ替え人形は恋をする』(福田晋一/スクウェア・エニックス)

この記事には作品の内容が含まれます。ご了承の上お読みください。

「あたしにコス衣装作ってくれない…!?」

 美人で明るいクラスメイトに、そう頼まれたのは雛人形職人を目指す少年。

 8巻で累計300万部突破のコスプレ×ラブコメコミックが『その着せ替え人形は恋をする』(福田晋一/スクウェア・エニックス)だ。

 陽キャのレイヤー女子と、生真面目で職人気質の少年のボーイ・ミーツ・ガールは、2022年1月からTVアニメの放送を予定している、今話題のマンガである。


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好きなものを隠している少年が、好きなことを好きにしている少女に頼られる

 五条新菜(ごじょうわかな)は高校1年生。両親を早くに亡くして雛人形職人の祖父のもとで育った彼は、子どもの頃からその雛人形の“綺麗さ”に魅せられ、人形の顔を作る頭師(かしらし)になることを目指していた。

 雛人形とその制作が好きで、他に趣味もない新菜は、「自分の好きなものはみんなとは違う」「俺はみんなの和を乱す」と思い込んでいた。クラスメイトと普通の会話ができず、大人しい性格も災いして学校ではいわゆるぼっちだった。

 彼のクラスにはいつも楽しそうな陽キャの男女数人のグループがあり、いつもその輪の中心にいる美少女・喜多川海夢(きたがわまりん)の元気な声が聞こえてくる。

 彼女はマンガやアニメが大好きで、「それ系の話は分からん」という友人たちを気にせず、カットサロンの店員にバッグに付けたキャラクターをイジられたことを話し「人の好きなもの、バカにすんなよってなるでしょ」とキレていた。自分とは真逆で、ありのままの自分を受けて入れてもらえている海夢を、新菜はうらやましく思う。

 ある日新菜は、学校の被服実習室で雛人形の衣装制作をしていた。すると部屋にあの元気な声が響きわたる。「すっごーい! ごじょー君ミシンできる人なの!?」

 海夢は動揺する新菜が持ってきていた雛人形の頭部を見て「わーめっちゃキレイじゃん…っ!」「ごじょー君が作ったの?」と本気で感心している。

 引かれるどころか、自分の好きなものを褒めてもらった新菜は、思わず口にする「これはじいちゃんが作ったもので、俺はまだ服作りしかできなくて…っ」。

 聞き逃さなかった海夢は、いきなり制服を脱ぎ始め、制作途中の衣装に着替えてみせる。彼女はコスプレイヤーだったのだ。

 海夢は新菜が服を作れると知り、コスプレ衣装作りを懇願する。今の衣装は非常に残念な出来だったからだ。彼は“住む世界が違う人”だと思っていた彼女がくれた言葉をかみしめ、制作を快諾する。

 ただそのコスプレキャラはアダルトゲームのキャラだった……。

激アツなコス衣装制作…からのラブコメ展開にテンアゲ必至!

 物語は、コスプレそのものと衣装作りにもフォーカスしていく。新菜はもちろん本気で、海夢に渡されたアダルトゲームも真面目に(?)プレイ。そこからポイントをびっしり書き込んだキャラの三面図を書き起こし、生地や素材、ウィッグを選んだ。衣装の完成後は、ていねいに海夢の顔をメイクして仕上げる。それはまるで雛人形の顔を作るように……。新菜の職人魂には、「文系スポ根マンガ」と言っていいアツさがあるのだ。

 そんな新菜も「採寸」には困る。海夢の正確なサイズを測るために、下着になってもらわなくてはならないのだ。照れるどころではないドキドキ展開で、彼女はちょっと面白がり、からかう。

 とはいえ照れはしても、職人・新菜は衣装作りに没頭している。彼からすると海夢は尊敬すべき存在なのだ。ここからどう発展するのか……?とやきもきさせるが安心してほしい。めちゃめちゃラブコメの度合いは強まっていく。

 初めてふたりでコスプレイベントに出た帰り道、“好きな事をしている人しかいない空間”にアガった海夢は言う。

好きな事して
楽しんでる人
めっちゃ好き
なんか
キラキラ
してるじゃん

 ふたりの関係は名前だけ知っている同級生からただの友達、そしてその先へと徐々に変化していく。ただ変わるのは海夢が先だった。

 突然スイッチが入った彼女のハンパない“行動力”に、読んでいるこちらは“テンアゲ最高すぎ”になる。まずは一気に2巻まで読んでもらいたい。

 最新の8巻では、文化祭のコスプレミスコンがクライマックスを迎えている。レイヤーとしての海夢と、新菜の衣装作りとメイクの腕が嵐を巻き起こし……。

 2022年、さらに注目度が高まるであろう本作を、今のうちにチェックしてほしい。

文=古林恭

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