節約のヒント満載! 今話題の“実用小説”『三千円の使いかた』を、読書家たちはどう読んだ?

文芸・カルチャー

公開日:2021/12/11

三千円の使いかた
『三千円の使いかた』(原田ひ香/中央公論新社)

〈人は三千円の使い方で人生が決まるよ、と祖母は言った。〉そんな印象的な一文から始まる小説が、今、読書家たちの間で話題を呼んでいる。その本とは、原田ひ香さんによる『三千円の使いかた』(中央公論新社)。人生の岐路に立つ女性たちをめぐる「節約」家族小説だ。

 就職して理想の一人暮らしを開始した24歳の会社員・美帆。結婚前は証券会社勤務だった29歳の姉・真帆。親友が熟年離婚をすると言いだした55歳の母・智子。老後の資金が足りなくなることを恐れている73歳の祖母・琴子…。この物語では、さまざまな年代の御厨家の女性たちがお金の悩みと向き合っていく。人生の節目を乗り越えるため、お金をどう貯めて、どう使うべきか。日々の節約術から保険や預金の見直しまで、役立つ情報も満載。家族小説として面白いだけでなく、自分のお金の使い方も見直すこともできる“実用小説”なのだ。

 この異色の小説を、読書家たちはどう読んだのだろうか。

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節約しよう! っていう気にさせられる楽しい本です。お金や、節約が目的ではないんです。それらは、人生を豊かにし、幸せにし、目的を達成する為の“手段”と言えます。だから節約=苦痛・貧乏というくらいイメージじゃない。むしろポジティブなイメージ。期待以上でした。

Saku
お金の話は得意でない。そんな私だけど、これは御厨家の連作短篇集になっていて面白かった。孫から祖母世代まで、抱える悩みはそれぞれで奮闘している。人の繋がりや生き方を考えさせられた。

なゆ
金額や数字も細かにはじき出されているから、なんともリアルで、読んでいて冷や汗。年の近い智子の章からは、人ごととは思えず一気読み。

心と花
家族それぞれが主人公となって、各々の状況や価値観、金銭感覚などリアルに話が進んでいく。美帆の彼氏の言葉に冷えていく感覚、自分なりにしっかりお金を貯めてはいるけど周りの言葉に動揺する真帆、家事ができない夫にイライラが募る智子など、経済的不安を各自感じる姿は身近に感じてすいすい読めた。

ぽんぽこ
節約や資産運用、年金生活など勉強になりました。お金の話を糸口に語られる等身大の人間ドラマ。私は年齢の近い智子よりも可愛らしいおばあちゃんの琴子に惹かれました。

ちゃかちん
この本を読み終わって泣いた方おられますか? 私は泣いてしまいました。この本は全ての人にとって“他人事”ではなく自分の物語だって事です。私も死に金は使わない様にちょっと軌道修正します。三千円の使い方で全てがバレますねぇ。

Ikutan
サクサクと読みやすい文章で日々の我が身を振り返ったり、考えさせられたり。家計簿は原田さんの得意分野なのかな。初めて読んだ原田さんの作品『彼女の家計簿』を思い出した。

 読書家たちを魅了するのも納得。この作品で描かれているのは、決して他人事とは思えない身近な物語だ。生きることと直結するお金の問題がありありと描き出されているからこそ、ついつい「自分ならどうする?」とリアルなシミュレーションをしながらページをめくってしまう。

 読書家たちの間で話題の“実用小説”をあなたも読んでみてはいかがだろうか。この本は、これからお金をどう貯めてどう使っていくべきか、そのヒントになる。手に取る前と読了後では、きっとあなたの“三千円”のとらえ方、使い方にも、変化が生まれるに違いない。

文=アサトーミナミ

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