天才アラーキーが天才たる由縁が詰まった一冊

小説・エッセイ

公開日:2012/10/11

男と女の間には写真機がある

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 :
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:eBookJapan
著者名:荒木経惟 価格:864円

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AVE(スペインの新幹線)で移動中にこの原稿を書こうとiPhoneを開き、書籍情報を見ようと思ったら、思い切り全裸女性の開脚写真が飛び出てきて、慌ててスイッチをオフにしてしまいました。つまりは、この一冊にはアラーキーが詰まっているわけで、電車での読書などには不適当かも。

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個人的には「グロテスクすぎてダメ…」という認識しかなかったアラーキーの写真がすごいなぁと思い始めたのは、愛妻陽子さんの病床から死までを綴った『センチメンタルな旅 冬の旅』で、初めて写真集で涙して以来。あれからアラーキーの撮る裸はセックスやエロチックからは超越して見えてきました。氏の書籍を読むのはこれが初めて。文章もなんともエロ度満点で、「やっぱりこのことしか考えてないのかなー」という気もしますが、氏の生活感というか、実際に毎日呼吸をして食事をして、排泄をして、セックスをしてという全人類共通の営みが当たり前のように描かれていて圧倒の感も。彼の場合、生きることはレンズを覗くこと。レンズを覗くことがほぼセックスをすることなのかというと、そう一筋縄ではいかない感じ。フツウの女性なら拒絶感が沸くでしょうか。天才アラーキーと言われる由縁を垣間見る充実の作品と文章の詰まった内容です。

書籍の前後に挿入された彼の直筆の美しさや、亡くなった父母の固くなった身体を斜め上から、捕らえた作品などを見ていると、バカがつくほど正直で純情で、まっすぐな写真家の愛おしいほどの人生への実直さがうかがえます。「写真は過去なのである」「故郷は美しく、残酷であった」「故郷はエロティシズムである」「写真は嫉妬なしには撮れない」などなど、詩人のような文才もあちこちにちりばめられ、アラーキーファンならずとも、アラーキー入門書にもなるのではないでしょうか。大人の男女に、おすすめします。


こういう写真も中にはあります。美しい

「妖艶」「エロティズム」という言葉も陳腐に聞こえるぐらいの迫力

氏の撮る「裸体」、一度じっくり鑑賞すべきです

女性が持つ「色」を引き出すのが天才アラーキーの天才たる由縁
(C)荒木経惟/太田出版