不遇な扱いを受けていた冒険者の大逆転無双譚!「なろう」のトレンド「追放系」の人気作がコミカライズ『Aランクパーティを離脱した俺は、元教え子たちと迷宮深部を目指す。』

マンガ

公開日:2022/1/4

Aランクパーティを離脱した俺は、元教え子たちと迷宮深部を目指す。
『Aランクパーティを離脱した俺は、元教え子たちと迷宮深部を目指す。(1)』(ユーリ:作画、すーぱーぞんび:キャラクター原案、右薙光介:原作/講談社)

 今や「小説家になろう」発の作品は漫画やアニメ業界において一大ムーブメントの感があるが、そのトレンドは少しずつ変わっているように思える。かつては「異世界転生もの」がその中心だったのだが、現在はいわゆる「追放系」が人気のようだ。「追放系」とは、たとえば勇者パーティで地味な存在の主人公が、勇者たちからお荷物扱いされてパーティを追われるのだが、実は彼はかなりの実力者であり──というような筋立ての作品群のこと。『Aランクパーティを離脱した俺は、元教え子たちと迷宮深部を目指す。(1)』(ユーリ:作画、すーぱーぞんび:キャラクター原案、右薙光介:原作/講談社)も、そのような「追放系」に属する作品であり、WEB漫画サイト「マガポケ」で連載中のコミカライズも好評で、このたびコミックが発売された。

 本作の主人公であるユーク・フェルディオはAランクのパーティ「サンダーパイク」に所属していたが、サポートや雑務が主な仕事の不遇職「赤魔道士」であるため、仲間からは「お荷物」扱い。「追放系」ではここから主人公が仲間から「用済み」宣告を受けて追放されるケースが多いが、本作ではユークのほうから「やってられるか!」とパーティを去っていくのである。

 飛び出したのはいいものの、不遇職の赤魔道士にはひとりで受けられる仕事もなく、パーティからの求人も少ない有様。冒険者廃業もありうると覚悟したユークだったが、思いがけない再会が彼に訪れる。それはかつて、ユークが「冒険者予備研修」で教官をしていたときの教え子であった新人冒険者のマリナ、シルク、レインの3人。彼女たちは教官だったユークのことを信頼しており、彼の現在の境遇を聞くや、自分たちのパーティに誘うのであった。絶望的な境遇の中、理解ある人々が現れる──これも「追放系」の定番であり、醍醐味ともいえるだろう。

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 そして「追放系」でも一番のポイントとなるのは、主人公の「能力」だ。ユークは赤魔道士という補助魔法メインの地味な職業で冷遇されていたが、実は彼の能力は非常に卓越していたのだ。「身体強化」や「魔力継続回復」のほか、自らの錬金術で制作した聖水などのアイテムは非常に強力で、マリナたちパーティメンバーをこれ以上なくサポート。さらに補助魔法であるはずの魔法を「多重無詠唱」することで、フロアボスまで倒してしまうのだった。さらにこの世界では自分たちの冒険を「配信」することが可能であり、今回の戦闘を生配信していたユークたちは、一気に注目を浴びることになるのである。

 ユークはマリナたち3人の教え子たちと再会し、新たなパーティ「クローバー」を結成。ここから、彼らの「伝説」が始まる。もちろん「追放系」の宿命として元パーティのメンバーとのイザコザもあるわけだが、ユークは基本的に「いい人」なので、あまり負の感情に振り回されることはなさそうだ。むしろユーク自身やマリナたちの成長がメインで描かれるので、非常に爽快な物語なのである。ユークと教え子の女の子たちとの交流も含め、今後の展開が楽しみだ。

文=木谷誠

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