障子破りやお魚の強奪事件も発生! おてんば猫“やっちゃん”がくれた「ドタバタで幸せな日常」

マンガ

更新日:2021/12/16

茶トラのやっちゃん
『茶トラのやっちゃん』(類/KADOKAWA)

 初めて動物を迎えた時は、毎日が驚きの連続。知らなかった生態や予想だにしない行動に目を丸くし、笑顔にさせられる。

『茶トラのやっちゃん』(類/KADOKAWA)は、そんな日々を綴ったTwitter発のコミックエッセイ。本作に描かれているのは、初めて猫と暮らすことになった作者・類さんとおてんば猫やっちゃん(本名:やち)が歩んできた、賑やかで温かい日々の記録。

 ここでしか見られない描き下ろし作品や、やっちゃんの秘蔵写真もたっぷり楽しめる一冊となっている。

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保護した子猫がおてんば猫に!賑やかで幸せな初めての猫ライフ

 類さんとやっちゃんが出会ったのは、2017年のこと。お母さんから、近所の病院で子猫が鳴いていることを聞いた類さんは保護しに行くことに。

 おうちに迎えると、保護した子猫は手袋をしていても触れないほど激しく威嚇。猫を迎えるのが初めてだった類さんは戸惑いを覚えたが、小さな体で声がかれるほど鳴いていたという事実に胸を痛め、「必ず幸せにしてみせる」と心に誓った。

 少しでも長生きしてほしい。そんな思いから、類さんは永遠にという意味を持つ君が代の「八千代に」から取り、「やち」と命名。やっちゃんと呼ぶようになった。

 警戒心の強いやっちゃんに少しでも安心してもらうべく、自宅では「目を合わせない」「姿勢を低くして小さく見せる」など、猫を怖がらせないように工夫。

茶トラのやっちゃん

 努力のかいもあり、やっちゃんの威嚇は徐々になくなっていき、やがてスキンシップがとれるように。心を許してくれた姿をみて、類さんはますますやっちゃんのことが愛しくなり、各パーツを溺愛するようにもなった。

茶トラのやっちゃん

茶トラのやっちゃん

茶トラのやっちゃん

 すっかり家に慣れたやっちゃんは、本来のおてんばな性格を惜しみなく披露。

茶トラのやっちゃん

茶トラのやっちゃん

茶トラのやっちゃん

 好奇心は止まることを知らず、類さんは障子破りやお魚の強奪など、様々なイタズラに翻弄させられることに…。

 自由気ままなやっちゃんと、すっかり猫の下僕と化した類さんのドタバタな日常に自然と目尻が下がってしまう。

動物との出会いは人生を変える

 本作はコミカルな描写が多いが、単に笑えるだけではないからこそ、しっかりとした読後感が心に残る。

 生きていると人生を変える縁に巡り合うことがあるものだが、それは人間同士だけでなく、動物と人間との出会いにも言えることなのかもしれない…と思わせてくれるエピソードが収録されており、胸が熱くなるのだ。

 実は類さん、以前は印刷会社でデザイナーとして働いていた。しかし、心労により、パニック障害を発症。生活スタイルを大きく変え、症状が少し落ち着き始めた頃にやっちゃんと出会った。

茶トラのやっちゃん

茶トラのやっちゃん

 人馴れし始めたやっちゃんは類さんの心身に寄り添い、闘病をサポート。その優しさに感動した類さんは「やっちゃんのためにも意地でも治す」と思い、2年かけて病気を完治させることができた。

茶トラのやっちゃん

 やっちゃんは、類さんの家族にも幸せを運んだ。保護時、猫を飼うことに乗り気でなかったお母さんはやっちゃんのお世話係に就任し、イキイキするように。そして、頑固だったお父さんは、すっかり丸くなったのだとか。

 自分たちの日常を変えてくれたやっちゃんに対し、類さんは感謝を込め、こんな言葉を寄せている。

助けたつもりだったのに、いつの間にか私が助けられていました

 こうした心境に共感する猫飼いさんは、きっと多い。自分よりもはるかに大きな体の人間を心から信頼し、寄り添ってくれる小さな家族に私たち飼い主は何度心を救われ、笑顔を貰ってきたことだろう。

 そんなかけがえのない存在にこれからも“おてんば”でい続けてもらうため、自分には何ができるか…。そう思わせられもする本作を手に取ると、「動物と暮らす」ことに込められた重みを、改めて考えてみたくなる。

 実際に類さんが行っている粗相対策や猫の生態に関する豆知識など、タメになる情報も盛り込まれているので、猫飼い初心者さんも手に取ってみてほしい。

文=古川諭香

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