シュウマイにだって第7世代がある! シュウマイの歴史から人気店の商品誕生秘話まで。「シュウマイ」を知りつくす本

暮らし

公開日:2021/12/18

シュウマイの本
『シュウマイの本』(シュウマイ潤/産業編集センター)

 餃子と同じ点心でありながら、多くの人が知っている食べ物でありながら、なぜかあまり脚光を浴びてこなかった「シュウマイ」。しかし今、シュウマイに「第7世代」が続々と登場し、徐々に注目を集めているという。『シュウマイの本』(シュウマイ潤/産業編集センター)は、そんな中で登場した、シュウマイ好きの、シュウマイ好きによる、シュウマイ好きのための本。

 著者であるシュウマイ潤さんは、シュウマイを2015年から6年間かけて約1000種類も食べてきたシュウマイ研究家。近年「マツコの知らない世界」などのメディアにも多数出演し、活躍の幅を広げている。このシュウマイ潤さんが言うには、シュウマイも第1世代~第7世代に分けられるらしい。シュウマイは「飲食店系シュウマイ」「テイクアウト系シュウマイ」「スーパー、デパート系シュウマイ」と大きく3つに分けられるが、これを世代別に分けていくと、だいたい以下の7つになるそうだ。

・第1世代……日本の中華料理上陸と、中華街文化で生まれたシュウマイ
・第2世代……第1世代から生まれた「ジャパニズムシュウマイ」
・第3世代……地域の定食屋として育まれた町中華のシュウマイ
・第4世代……豚(肉)まんの相棒、おみやげシュウマイ
・第5世代……家庭で気軽に食べられる「冷凍」「チルド」「惣菜」のシュウマイ
・第6世代……全国のご当地食材を生かした「ローカルシュウマイ」
・第7世代……従来のシュウマイの常識に囚われない「新世代シュウマイ」

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 シュウマイを含む「点心」は、中国で隋の時代に登場し、唐の時代に「飲茶」の文化ができて定着。その後、鎌倉時代に「精進料理」として日本に入ってきたのが始まり。当時の中国のシュウマイは、皮がかなり厚く「主食」として食べられており、今のシュウマイとはだいぶ違うものだったという。

 そこから日本で広まっていく中で、当時の日本でも手に入れられる食材を用い、日本人の舌に合うよう改良された第2世代の「ジャパニズムシュウマイ」が登場し、認知されていく。関東でシュウマイというと多くの人が真っ先に思い浮かべる「崎陽軒」も、この第2世代だ。当時、列車の中でも食べやすい小ぶりなサイズで冷めてもおいしいシュウマイを、という思いで作られたのだとか。本書には、「シュウマイ企業訪問」として、「崎陽軒」などさまざまなシュウマイ企業の工場の様子も掲載されている。

シュウマイの本 P.48~P.49 崎陽軒
▲「崎陽軒」の「シウマイ弁当」と工場の様子

 ちなみに、関西といえば! な「551蓬莱」は第4世代。551蓬莱は、神戸の元町駅近くにある「四興樓」がおみやげに提供しはじめた「豚まん+シュウマイ」という組み合わせのヒットからヒントを得て、大阪の「豚まん+シュウマイ」を確立させていったそうだ。筆者も神戸出身なので、「四興樓」の豚まんはなじみ深く、学生のころから友達とよく食べていた。551蓬莱の豚まん、シュウマイ、海老シュウマイも大好きだ。しかしその歴史や本書に綴られているような企業努力を知ったのは初めてだった。長く愛されているお店は、やはり研究を重ねて歴史を作っている……! お店のファンにはぜひとも一読してほしい。

シュウマイの本 P.92~P.93 551蓬莱
▲「551蓬莱」のシュウマイを作っている様子

 また、各世代のこうした歴史が具体的に記されているほか、シュウマイ潤さんの九州シュウマイ巡りの旅、シュウマイに関するコラムなども掲載されている。九州の旅では、第6世代のシュウマイとして感銘を受けたという佐賀県唐津市呼子町の「いかしゅうまい」、福岡県糸島市で見つけた「牡蠣シューマイ」など、シュウマイ潤さんが実際に食べた魅力的なシュウマイが! 呼子のいかを使ったシュウマイ、ぜひとも現地で食べてみたい。

シュウマイの本 P.148~P.149 呼子
▲呼子の様子と「いかしゅうまい」

 本稿で紹介した情報は、本書のごくごく一部にすぎない。この『シュウマイの本』には、まだまだシュウマイの歴史や文化、注目したいシュウマイ、各社の企業努力、著者のシュウマイ愛がこれでもかと詰め込まれている。今まで何気なく食べていた人も、この本を読めばきっとシュウマイの見方が変わるはず。筆者もシュウマイ巡りの旅がしてみたくなった。

文=月乃雫

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