狡猾で残忍、薄汚くて、臭い。愛すべきクズ、砂漠の便利屋・砂ぼうず見参！

自らの悪業によって文明が滅びて数百年。地球はほぼ全土が砂漠化…。照りつける太陽を遮るものは何もなく、体感温度は実に50度。日が落ちたら落ちたで、今度はマイナス10度の極寒世界。地獄の様な砂漠の時代。しかし幸か不幸か、人類は、それでもなんとか生きながらえていました。そして、生き残った子孫たちは、自らが犯した過ちを悔い改め、より良い世界を再建するべく奮闘…

―――など全くせず、やっぱりぜーんぜん懲りていませんでした。
という痛快なモノローグで始まる本作・砂ぼうず。関東大砂漠にその名を轟かせる便利屋のお話です。その筋では“砂漠の妖怪・砂ぼうず”と恐れられ、受けた依頼は必ずこなすスゴ腕中のスゴ腕。神出鬼没！ 正体不明！

…と、プロフィールだけ聞くとメチャクチャ格好良いハードボイルっぽいですが、噂とは得てして尾鰭がつくようで…。その正体は！！ なんと！！ ペテン・小細工・だまし討ち、依頼のためなら脅しや人質なんでもござれ、煩悩まみれのアルティメットクズ野郎です。そして、傲慢でクズなので、まぁ女子にもモテません。（というかほぼみんなに嫌われます）チェリーボーイ故に、美女や巨乳に騙されることもしばしば。…もうどっからどうみても救い難い…。

しかし、考えると、過酷な世界で生き抜くには仕方ありません。そもそも砂漠世界は無法地帯であり、「ヒャッハー！水だァーッ！」を地で行くマッドマックスな治安。よって、対する相手もドがつくほどの下郎共であり、情けなど無用！ 弱肉強食の争いであります。

砂ぼうずもゴミクズですが、大体の人類がクズ。これが本作の憎めない所なのです。砂と汗にまみれて臭い人類は、人間臭さも強烈です。稀に見る悪者主人公という要素の他にも、劇画の技術に裏打ちされたやたら濃いオッサン達や迫力の銃撃戦が異彩を放つ本作。実はアニメ化もされており、動く下道共の活躍も見ることができます。

ちなみに、電子版ではよりコントラストがクッキリ出ているので、日差しのキツイ砂漠っぽさが満点。読み比べて見るのもオツですね。絵的にもシナリオ的にも、もっと評価されるべき1作！