他人に振り回されてしんどい…。我慢を手放して“自分らしく”生きるためのヒント

暮らし

公開日:2021/12/23

我慢して生きるほど人生は長くない史
『我慢して生きるほど人生は長くない』(鈴木裕介/アスコム)

“自分らしさ”がキーワードの現代。とはいえ、現実を理想に近づけるのは難しい。生きていれば多かれ少なかれ、他人に振り回される場面もある。無茶なスケジュールで仕事を振られたり、行きたくない飲み会に誘われたり……。本音では嫌なのに、相手に合わせてしまうのは余計なストレスにも繋がる。

 心に溜まったモヤモヤをどうすればやわらげられるのか。そのヒントを教えてくれるのが、心療内科医で秋葉原内科saveクリニック院長の鈴木裕介さんによる書籍『我慢して生きるほど人生は長くない』(鈴木裕介/アスコム)だ。


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不快な距離をみきわめるポイント「ラインオーバー」

 他人に振り回されないための第一歩は、相手との距離をみきわめること。著者は「ラインオーバー」に目を向けようとアドバイスする。

 ラインオーバーとは、自分と相手の間にある心の境界線を越えた状態を指す。何をもって不快とするか厳密な基準はない。注目するべきは相手とのやりとりで「モヤモヤとした気持ち」が残るかどうか。「なんだか嫌だな」「その言い方はないんじゃないかな」とささいな感情を大切にすればよく、このとき「自分にも落ち度があるし」と卑下する必要はない。

 家族だから、先輩や上司だから、お世話になっている方だからと、相手の肩書きや相手との関係にとらわれる必要もない。「ラインオーバーされている」と思うなら、自分の感覚を信じてみる。そうすることで「守るべき自分の領域」がだんだん見えてくるという。

紙に書き出して思考や感情を客観的に理解する

 自己肯定感の低さも、他人に振り回される原因だ。ふとした瞬間に「なぜ私はこんなにダメなのか」と考えてしまう人に対して、著者は「自分に対し、頭の中だけで、『なぜ』という問いかけを行ってはいけない」と諭す。

 自分に対して「なぜ」と問いかけても、前向きな答えが返ってくることはほぼない。結局は「自分がダメだから」という考えにたどりついてしまい、自己評価が下がり続ける負のスパイラルに陥りやすい。

 ただ、やり方次第では自分を見つめ直し、自己肯定感を上げられる可能性もある。著者がすすめるのは「紙に書き出す」方法だ。文章にする作業をはさむと、頭の中にある思考や感情を客観的に理解できる。

 例えば、仕事で失敗したとき「いつ、どのような指示を受け、どのように作業を進めたか」と書き出せば、「どこに問題があったのか」「次回からどうすればいいのか」が具体的に見えてくる。それをもとに、信頼できる誰かにアドバイスをもらうこともできる。

お腹が痛い…自分の「野生の感覚」を磨き上げる

 人それぞれ得手不得手もあれば、合う合わないもある。しかし、現実には「社会人だから」「大人だから」「仕事だから」という言葉に縛られて、自分らしく振る舞えない場面もある。

 人間のセンサーは意外と敏感で、自分にとって「危険な場所」「不快な場所」と判断したとき「なんかしんどい」「よくわからないけどお腹が痛い」など、身体がきちんと教えてくれる。いわば無意識に働く「野生の感覚」で、これを習得するのが心地よく生きるためのコツだと著者はいう。

 体感時間も合わない場所をみきわめるヒントで「時間が経つのが遅く感じる」と思われる仕事や場所から離れるのも選択肢。最初は「そんなことをしてはいけない」と葛藤が生まれるかもしれないが、少しずつ慣れていけば、心地よく過ごせる場所を見つけられるようになる。

 本書を読むと「逃げる」というのも、けっして悪くはないと気が付く。他人に合わせて暮らし続けるのは、やはりしんどい。毎日に辛さを感じている人たちに、手にとってほしい一冊だ。

文=カネコシュウヘイ

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