食事の用意や介助、お口のケア……在宅介護をめぐる「困った」によりそう実用書

暮らし

公開日:2021/12/27

「食べる」介護のきほん 誤嚥を防いで食の楽しみをキープする、食事介助&お口のケア
『「食べる」介護のきほん 誤嚥を防いで食の楽しみをキープする、食事介助&お口のケア』(齋藤真由/翔泳社)

 超高齢社会、在宅で介護をする家庭が増えてきた。特に多い悩みが食事のこと。「口から食べること」は心身の健康や生活の質にも直結するから、食べることを楽しんでほしい。そう思ってはいても、介護食の準備や介助、お口のケアまでを手厚く行うのは、介護する人にとってかなりの負担だ。

 そんな在宅介護に悩んでいる人にオススメしたいのが、『「食べる」介護のきほん 誤嚥を防いで食の楽しみをキープする、食事介助&お口のケア』(齋藤真由/翔泳社)。介護する人に寄り添う、在宅介護の実用書シリーズ「はじめての在宅介護」の中の一冊だ。この本では、歯科医師で栄養士の齋藤真由先生が、「口から食べる力」をできるだけキープするために、家庭で実践できることを紹介。イラストも多く、介護初心者にもとっつきやすいし、何より頑張りすぎない方法を教えてくれるのが嬉しい。大切なのは「どこに重点を置いてやればいいのか」を押さえること。この本に学べば、介護する側の負担もされる側の負担も減らすことができるかもしれない。

「食べる」介護のきほん 誤嚥を防いで食の楽しみをキープする、食事介助&お口のケア p.30-31

「食べる」介護のきほん 誤嚥を防いで食の楽しみをキープする、食事介助&お口のケア p.40-41

 たとえば、食事は毎日のことなので「食事を用意するのが大変」「食事量が減って心配」という悩みは尽きないだろう。一回一回の食事に向き合っていると、「支度する時間がない」「食べてくれない」と焦る気持ちが生まれてしまうが、齋藤先生によれば、食事は3日間くらいで見て食事量がとれていればOKなのだとか。「明日、デイサービスで栄養バランスのとれた昼食がでるから今日は簡単でいい」といった考え方もできるから、気持ちが少しラクになるだろう。介護食も毎日頑張って作るのは大変だ。レトルト食品や冷凍食品、バナナやアボカドなど、すぐに食べられるものを常備しておく、一度にたくさんの料理を作って冷凍しておくなど、毎日の支度をラクできる方法はたくさんあるのだ。

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「食べる」介護のきほん 誤嚥を防いで食の楽しみをキープする、食事介助&お口のケア p.20

「食べる」介護のきほん 誤嚥を防いで食の楽しみをキープする、食事介助&お口のケア p.64-65

 お口のケアについてもポイントを押さえればいい。もちろん理想は1日3回歯磨きをして口腔内を清潔に保つことだが、それは、介護度が高いほど難しいだろう。そもそも、お口のケアをする一番の目的は、口の中の細菌数を減らして誤嚥性肺炎をはじめとするさまざまな病気になるのを防ぐこと。口の中の細菌数は夜間にグッと増えることがわかっているから、1日3回は無理でも「夜は絶対に口のケアをする」と決めて実行すれば、その目的を果たすことができる。訪問歯科も利用し、数週間に1回でも専門的な口腔ケアや、口の中の点検をしてもらうとより安心。口の専門家に定期的にキレイにしてもらい、日常はそれを維持すればいいと思えば、介護する人の負担は減ってくる。

 その他にもこの本では「食べやすい食事」の用意の仕方や、食事介助での困りごとへの対応方法、誤嚥予防のポイントや入れ歯の疑問などについても詳しく解説されている。この本は「頑張らなくては」と力みすぎていた介護する人の心と体に優しく寄り添うような実用書。在宅介護の「食事」をめぐるトラブルに悩まされているならば、解決のヒントとなるだろうし、「これから在宅介護を始める」という人にとっても強い味方となるに違いない一冊だ。

文=アサトーミナミ

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