ヤンデレとヘタレ、魔女アリア…三角関係がどんなふうに物語をかきまわしていくのか?期待高まる『魔女と使い魔様』

マンガ

公開日:2021/12/25

魔女と使い魔様
『魔女と使い魔様』(藤代千鶴/白泉社)

 森の中には怖い魔女が住んでいる、という噂のせいで、人間から忌み嫌われている魔女・アリアと、本当は人間と仲良くしたい彼女の意に反し、森を訪れた人間をトカゲに変えるなどして、噂を補強してまわっている使い魔のドラゴン・リオ。といってもリオが人間を脅すのは、アリアにいじわるしたいからではなく、ひとえにご主人様をひとりじめするため。そんなヤンデレ使い魔(人間バージョンは超イケメン)と、隙だらけの魔女アリアの2人暮らしを描いたマンガ『魔女と使い魔様』(白泉社)の1巻が12月に刊行された。

 猫目のアリアは一見、気が強そうで、おそろしげな魔女に見えないこともないのだけれど、実際は母親が人間だったこともあり、魔力は小さめ。押しに弱くて、むしろ誰よりお人好し。傷だらけのドラゴンを看病していたら、騙し討ちのように使い魔契約を結ばされ、押しかけ女房よろしく、かいがいしく世話を焼かれ、仕事も手伝ってもらっているせいで、追い出そうにも追い出せずに、ずるずる同居を続けてしまっているという気弱っぷりである。前述のとおり、人間と仲良くするのも邪魔されているアリアは、いわゆる“愛されすぎて困っています”状態。けれどずっとひとりぼっちで暮らしてきた彼女にとって、リオは唯一の家族ともいえる存在になりつつあった(それもまたリオの思惑どおりなのだろうけれど)。

 ところが、そんな2人っきりの日々を邪魔するように現れたのがウィリアム。国を守る騎士団の隊長で、アリアの旧友である。実は王族でもあるウィルという爽やかイケメンが現れて、当然のことながら敵愾心むきだしのリオなのだけど、2人の間にはもうひとつ強い因縁があった。実はリオ、王都の聖域で何百年も封印されていた凶悪なドラゴンで、ウィルはその行方を追っていたのだ。リオを匿っているアリアも処罰の対象になると知ったウィル、怒るでも慌てるでもなくただひたすら顔面蒼白。言ったセリフが「僕も死のう」「アリアのいない世界なんて生きていけない」。ふだんカッコつけてるだけで、実のところはまったくもって後ろ向きな騎士(王子)様である。

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 ヤンデレとヘタレ。どちらに転んでもふりまわされて大変なことには変わりない2人と、なりゆきで仕方なく、3人暮らしをすることになったアリア。ちょっと目を離すとすぐ殺し合いに発展しかねない喧嘩を始める2人はもちろん、アプローチの異なる2人と接することで浮かび上がってくるアリアの魅力もまた、読みどころのひとつ。自分が魔女であるせいで、病気の母親を助けてもらえず(母親は人間なのに…!)死なせることになってしまったアリアは、人間を恨んで世をひがんでいたっておかしくない。けれど、母親から注がれた愛情に背かないよう、人々を救う魔女になるのだと強く成長し続ける彼女だからこそ、2人は途方もなく惹かれてしまうのだということが、読んでいると伝わってくる。

 押しの強すぎる使い魔と、力関係が逆転している魔女。そして幼なじみのヘタレ王子。その三角関係がどんなふうに物語をかきまわしていくのか? 2巻以降も楽しみである。

文=立花もも

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