前作以上に続きが気になる便利屋事件簿第2弾。ロングシリーズの予感?

小説・エッセイ

公開日:2012/10/16

まほろ駅前番外地

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 文藝春秋
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:電子文庫パブリ
著者名:三浦しをん 価格:545円

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直木賞受賞作で映画化、漫画化もされた人気作品、『まほろ駅前多田便利軒』。その続編が今度はドラマ化! 映画化されたときと同じ多田=瑛太、行天=松田龍平主演、しかも『モテキ』の大根仁監督と聞き、楽しみで仕方がない。その原作は、サブキャラが語り部になるスピンアウトと、二人の今後のさらなる波乱が気になる続編の全7編からなる。

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妻と子を失った多田と、コミュニケーション不全の奇人と称されながらどこかピュアな行天。二人の便利屋たちは盛り場の喧噪と郊外の高級住宅地の窮屈さの狭間で、またも人々に振り回される。行天の場合は振り回す、と言うほうが適当かもしれないが。二人の傷は癒されていず、人付き合いも苦手なまま、でも相変わらず人間くさい。多田が恋に落ちてしまう「逃げる男」には驚いたが、今後の続編にさらに期待を持たされてしまい『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』を見たときのように満足と不満を同時に感じさせられる複雑な気持ちだ。

サブキャラが主人公となるスピンアウトのなかでは、なかでも横中バスの監視を命じる岡老人の妻の目線から描いた「岡夫人は観察する」がよかった。ゆったり恵まれた人生を送った人特有の、岡夫人の人間の好さが感じられてすごくほっとする。まさに、こういう人がいそうなのが“まほろ”という街であり、多田や行天はそういう街でこそふわりと生きていけるのだ。


「番外地」ではサブキャラが際立つ。曽根田のおばあちゃん、ちゃっかり行天と多田の名前を使って恋の想い出話

思わず吹き出してしまうような日常のシーンを淡々と掬いとる。この上手さは著者独特のものだ

多田が恋に落ちる瞬間。著者の手に乗せられていると知りつつ、続きが気になる!