『このライトノベルがすごい! 2022』の人気ランキングから読み取る読者が求める多様性とは

文芸・カルチャー

公開日:2022/1/2

このライトノベルがすごい! 2022

編集:
出版社:
宝島社
発売日:
このライトノベルがすごい! 2022
『このライトノベルがすごい! 2022』(『このライトノベルがすごい!』編集部/宝島社)

 いまが旬のライトノベルを紹介するライトノベル総合情報誌『このライトノベルがすごい! 2022』(『このライトノベルがすごい!』編集部/宝島社)が11月25日に発売された。

 本誌は、読者アンケートによるベストランキングに加え、今年の第1位作家へのスペシャルインタビュー、ジャンル別作品ガイドなどを掲載し、ライトノベルの流行を読み解くガイドブックとなっている。

 注目を集めるベストランキング「文庫部門」では、昨年度に続き『千歳くんはラムネ瓶のなか』(裕夢/小学館・ガガガ文庫)が1位を獲得し、二連覇を達成した。

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『千歳くんはラムネ瓶のなか』は、最近のライトノベルでは珍しい超絶リア充男子・千歳朔を主人公とした学園青春ストーリー。学業や部活、そして恋愛など思春期の悩みを抱える少年少女の高校生活を描く。文武両道で人当たりもよく、クラスの美少女たちに好かれ、ややもすれば男性陣からの嫉妬で嫌われそうな千歳くん。だが、実は努力家で友人思いのヒーローであり、困難に正面から向き合う姿が読者の支持を得ているようだ。

 ランキングを見ると、アニメ化もされた『ようこそ実力至上主義の教室へ』(衣笠彰梧/KADOKAWA・MF文庫J)や、『探偵はもう、死んでいる。』(二語十/KADOKAWA・MF文庫J)などの人気が健在だが、トップテンの半数に新作がランクインする新展開を見せた。

 とくに1位と投票数で数ポイント差の大接戦を繰り広げたのが、『春夏秋冬代行者』(暁佳奈/KADOKAWA・電撃文庫)だ。TVアニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の原作者・暁佳奈の完全新作。神に代わって春夏秋冬をもたらす四人の代行者と、それぞれの守り人たちの人間模様を綴る現代和風ファンタジー。投票者からは四季の情景の美しさと、登場人物の繊細な心情の人間ドラマに胸を揺さぶられたというコメントが載せられている。

 続くこちらも新作の『ミモザの告白』(八目迷/小学館・ガガガ文庫)は性自認をテーマとした青春物語。また、時代性といえば、ラブコメも昨今の世相を反映しているのか内向き志向が見られる。両親の再婚で義兄妹になった陰キャ男子とギャルJKの同居生活を描く『義妹生活』(三河ごーすと/KADOKAWA・MF文庫J)や、人前では辛辣だが誰にも通じないロシア語でデレてくるハーフ美少女との学園ラブコメ『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん』(燦々SUN/KADOKAWA・角川スニーカー文庫)のように、周囲に干渉されずに主人公とヒロインの間だけでひっそりと育まれる関係というのが現代の読者にウケる要素のようだ。

 その他、流行に敏感な90人以上のこのラノ協力者が推薦するオススメ紹介などもあわせ、ライトノベル業界の今が読み取れる内容になっている。

 最後に『このライトノベルがすごい!』編集部からダ・ヴィンチニュース読者へのメッセージをご紹介する。

 オタク文化が多様化し、メディアミックスが当たり前の時代です。ライトノベルもマンガやアニメ、ゲームへの発展がヒットの定石でしたが、それがさらに多様化しています。オーディオブックやASMR、VTuber化や動画コンテンツなどキャラクターコンテンツへの進出など、小説内にとどまりません。

 新規の作品群は、常に時代の先端を行く要素を貪欲に混ぜ合わせてきています。ジャンルにしてもモチーフにしても、ライトノベルは「ミクスチャー小説」として多様性を見せてくれます。ライトノベルの様々な試みを『このラノ』の中から見出してもらえたら幸いです。

『このライトノベルがすごい!』編集部・岡田

文=愛咲優詩

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