【初詣までに知っておきたい】神社にはなぜ鳥居があるの? 神社と寺の違いを説明できる?

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公開日:2021/12/31

『神社とは何か(講談社現代新書)』(新谷尚紀/講談社)
『神社とは何か(講談社現代新書)』(新谷尚紀/講談社)

 年末年始が近づき、初詣のマナーや参拝の作法などの情報が目立ち始めた。ところで、初詣は神社でも寺でも行うことができるのだが、神社と寺の違いを知っているだろうか。「神社には神、寺には仏」という大きな違い以外に、「神社には鳥居、寺には山門」という違いから読み取れることがあるようだ。

『神社とは何か(講談社現代新書)』(新谷尚紀/講談社)は、「神社とは何か?」に迫るため、歴史、民俗学、民俗伝承学ほか、さまざまなアプローチで神社の実像を明らかにしようとする、意欲的で読み応えがある1冊だ。本稿では、本書の第10章「神社と鳥居」から、ごく一部をご紹介したい。

 さて、冒頭の「神社には鳥居、寺には山門」という違いから読み取れることについて。本書は、これを神社と寺の性質をよくあらわしていると評している。寺院は病院、学院、修道院などと同じ「院の一種」であるため、壁囲いなどで周囲を囲って一定の領域とともに「世俗の世界から隔離した特別な場所」であることも主張しているという。そこへの入口が山門だ。「入門」「出門」という言葉があることからも、それがわかると本書。

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 他方、神社の鳥居はおもむきが大きく異なる。鳥居で想像するのは、もしかしたら伊勢神宮、出雲大社など神門があって神域の周囲に垣が廻らされているイメージかもしれないが、これは仏教建築の影響による新しい様式であり、本来の形ではないと本書は説明する。鳥居の本来の姿は、祇園八坂神社、厳島神社などのように神域が開放的で門構えがない形だそうだ。つまり、神社は自然の中にそのまま祭られている。

 そんな鳥居の役割だが、本書は考古学、民俗学、民俗伝承学などの視点で読み解こうとする。詳しい考察や論証は本書にゆずるが、本書が導き出した鳥居の役割は、自然の中に存在している神々を目前にして、人間が行いたい祭りを神々に受け入れてもらえるかどうかの確証を得るための装置である、ということ。供物をカラスや野犬などに早く食べられることを「神に供物を快く受け取ってもらえた」と喜ぶ「カラスグチの伝承」を紹介しつつ、これが発展・成長して鳥居となり、さらに文明化・文化化の洗練の過程を経て、現在の多様な鳥居の形になった、と本書は論じている。ちなみに、賽銭の習俗も、神事中の散米の作法に通じるもので、つまり神々へ供える行為なのだそうだ。

 初詣の際、眼前の鳥居に太古の人々が込めた想いを想像すれば、厳粛な気持ちで願い事ができそうだ。

文=ルートつつみ (@root223

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