婚約回避のため男装して婚約者探しに奔走! なのに、王子の溺愛が止まらないっ!?

マンガ

公開日:2022/1/5

王子に溺愛されたくないので元プリンセスですが男装執事になります!
『王子に溺愛されたくないので元プリンセスですが男装執事になります!』(にーづま。/白泉社)

 自分の人生を自由に生きたい。それは多くの人が思っていることだが、同時に誰かの大切な人になりたい、自分を必要としてほしい、という気持ちもまた心のどこかにあるのが人間だ。日常でも、何にも縛られない自分の時間を過ごしたいと思いながら、何だかんだで頼られると悪い気はしない、むしろ燃えてしまう、なんて人も多いのではないだろうか。『王子に溺愛されたくないので元プリンセスですが男装執事になります!』(にーづま。/白泉社)は、そんな思いに揺れる、ある執事の物語だ。

 本作品の主人公は、女人禁制の学生寮で寮執事を務めているジュノン。学園および学生寮では、名立たる貴族王族の子息が生活しており、ワガママで女嫌いな王子・ラウルもまたそのうちの1人だった。そうした中、ラウルに「1年後に結婚相手を決めろ」という王命が下されて相手を探すことに。だが、毎日山のように送られてくる婚約候補の令嬢たちの手紙や姿絵を前にしても、ラウルの心は1ミリたりとも動かない。それどころか、「自己陶酔しているようにしか見えないな」「王太子妃の座しか見ていない必死で哀れな女たちだ」とますます嫌悪感を募らせていく。

 しかしジュノンには、どうしても1年以内に結婚相手を決めてもらわなければならない理由があった。実はジュノンは、前国王の一人娘であるプリンセス、リリー・キャベンディッシュで、ラウルの婚約者最有力候補だったのだ。ある日突然その事実を突きつけられたリリーは、当時小さな村で慎ましくも幸せな日々を過ごしていた。彼女にとってその村での生活はとても大事なもので、守りたいものだった。そこでリリーは執事となり、ラウルの側で花嫁探しに奔走していたのだが――。

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 一方ラウルには、長い間忘れられずにいる女性がいた。そしてその相手こそが、なんとリリーだったのだ。しかも思いを募らせている間にだいぶ恋を拗らせて記憶を捏造しており、先日発売された2巻では、リリーのことを「地に舞い降りし天使」「鈴の音のような温かく癒される声」と恍惚とした表情で話す始末。ジュノンはそんなラウルにドン引きしながらも、自分のことをそこまで思ってくれていたのかと少しずつ心を揺さぶられていく。

 ひょんなことから再び「リリー」としてラウルに会うことになった際、ラウルはリリーにしか見せない柔らかで優しい表情を見せる。それは普段ジュノンとして接しているときには見せない、昔と変わらない姿だった。そのあともラウルは、リリーをこれでもかというくらい大切に扱い、彼女を困惑させていく。

 一見羨ましいように感じる、愛され王太子妃というポジション。しかしそこにあるのはきっと「用意された世界」で、村でのような自由な生活はできない。もし自分がリリーの立場だったら、何をどう選択していくだろう? そう考えずにはいられなかった。2巻では、リリーとラウルの距離が急接近していく。ようやく再会することができた初恋の相手を前に、ラウルの思いはもう止まらない――っ! そして、ジュノンの真の姿がリリーであると見抜いている、王太子側役ノアの存在も気になる。

 この『王子に溺愛されたくないので元プリンセスですが男装執事になります!』は、まだまだ道半ば。ラウルとの関係はどうなっていくのか、ノアはどう動いていくのか、リリーは何を選ぶのか……。一歩一歩進んでいくジュノンの、リリーの、ラウルの物語を、ぜひとも最後まで見届けたい。

文=月乃雫

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