『鎌倉殿の13人』が100倍楽しめる必読書!キーパーソン・北条政子の意外な素顔とは

文芸・カルチャー

公開日:2022/1/11

「わきまえない女」だった北条政子
『「わきまえない女」だった北条政子』(跡部蛮/双葉社)

 小栗旬主演の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』がついにスタートした。脚本は、三谷幸喜。武士の世を盤石にした男・北条義時は一体どのように描かれるのだろうか。義時やその家来たちの活躍も気になるところだが、加えて気になるのは、小池栄子が演じる、初代将軍・源頼朝の妻・北条政子の姿。北条政子といえば、「悪女」というイメージが強いが、実際には、男たちを従え政治を取り仕切った才女だったらしい。

『「わきまえない女」だった北条政子』(跡部蛮/双葉社)は、そんな北条政子の生涯を詳らかにする一冊。この本を読むにつれて、今まで彼女に抱いてきたイメージが変わる。本書の中からほんの少しその記載をご紹介するとしよう。

義経の妾・静御前には同情的だった

 政子は「悪女」として名高い。それは、夫・頼朝の愛人の家を破壊したり、政局の中で多くの者を死に追いやったりした史実が残されているためだろう。だが、同時に、彼女は、多くの女性たちの庇護者でもあった。特に、源義経の妾・静御前(しずかごぜん)に対しては同情的だったらしい。たとえば、義経を討とうとする頼朝の前で、静御前が義経への思いを込めた白拍子の舞を披露した際、激怒する頼朝を政子はなだめた。また、頼朝は聞き入れなかったが、静御前が義経の息子を出産した時には、敵の子を生かしておけないことは政子だって痛感していたはずだが、その殺害を止めようとした。「悪女」と呼ばれた政子とはいえ、血も涙もない人間では、決してなかったのだ。

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「鎌倉殿の13人」を定めたのも、北条政子?

 政子は、将軍の正室としての力を最大限に用い、「鎌倉殿」である夫に準じる権限をもって政治にかかわった。大河ドラマのタイトルにもなっている「鎌倉殿の13人」も、その成立に政子が大きくかかわっていると言われている。頼朝の急逝後、二代目の「鎌倉殿」となった当時18歳の頼家の政治は失政続きだった。そこで、誕生したのが「鎌倉殿の13人」だ。幕府の大きな役割は、御家人の土地を巡る紛争の解決にあるが、訴訟処理はすべて幹部13名の合議機関で採決することに定められたのだ。頼家の親裁権を停止させることができたのは、政子の他にはいない。政子にはそれだけ大きな力があった。その力は、執権であり、政子の弟である北条義時を凌ぐものがあったとさえ伝えられている。

「鎌倉殿」の「家」、「血筋」を守り続けた生涯

 政子は常にあらゆる手を使って夫・頼朝と築いた「鎌倉殿」の「家」を守ろうとしてきた。三代目将軍・実朝(さねとも)に世継ぎが生まれなかった時には、彼女は、頼朝の隠し子に次期将軍になるよう要請したり、血筋として源氏にひけをとらない宮家から将軍の下向を画策したり、している。どちらも叶わないと分かると、孫や子の中で唯一生き残っていた竹御所(たけのごしょ)を実朝の正室の猶子とし、摂関家からきた将軍候補・三寅(のちの藤原頼経)に娶せることによって源氏の血筋の温存を図った。結局、源氏の血脈は絶え、北条の天下が確立することになったが、生涯にわたって彼女の行動はブレなかった。すべては、「家」を守るため。そのことに尽力し続けた女性だったのだ。

 この本には、北条政子の意外な姿がたくさん描かれている。そして、読めば読むほど、鎌倉時代に活躍した人間たちがいきいきと動き始める。これを読めば、ますます大河ドラマが楽しめそうだ。

文=アサトーミナミ

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