伝説の料理本『豆腐百珍』&『卵百珍』を現代風にアレンジ! 「江戸グルメ」の魅力が詰まったレシピブック

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更新日:2022/1/10

奥村彪生の 豆腐百珍 卵百珍
『おいしくアレンジ! まいにち使える江戸レシピ 奥村彪生の 豆腐百珍 卵百珍』(奥村彪生/NHK出版)

「豆腐」と「卵(玉子)」――どちらも今の日本の食卓になくてはならない食材だ。そのまま食べても充分おいしいけど(冷ややっこ! かーらーの、卵かけごはん!)、そこにひと手間を加えれば、料理のバリエーションは無限に広がる。おまけにヘルシーで、栄養価もばっちり。もう言うことなし!だ。

 そんな「みんなの人気食材」である豆腐と卵は、江戸時代には、すでに庶民の間で食べられていた。その証拠が、天明2年(1782年)に出版された『豆腐百珍(とうふひゃくちん)』という本。「日本初の単独食材のレシピブック」とも言われる同書には、その名のとおり、100種類もの豆腐料理が紹介されていた。

 その3年後(1785年)に出版されたのが、『卵百珍(たまごひゃくちん)』。卵の料理を103種類も紹介したレシピ本で、当時の食文化の「粋」な面が随所に詰まっているーー人々は、昔っから、最新のグルメ情報に夢中だったんですね。

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 具体的には、どんな料理が紹介されていたのか? 気になるそのレシピを教えてくれるのが、本書『おいしくアレンジ! まいにち使える江戸レシピ 奥村彪生の 豆腐百珍 卵百珍』(NHK出版)だ。著者の奥村彪生氏はさまざまな時代の料理を当時の文献に基づいて再現する「伝承料理」の研究家で、いわば「歴史レシピ」の達人。ちなみに本書は、2017&19年に『NHKまる得マガジン 江戸グルメ本に学べ!』が番組内で紹介したレシピに加筆・修正して構成されている。

 では、具体的にレシピを見ていこう。まずは『豆腐百珍』から! 各メニューは調理の方法(焼く/煮る/蒸す、など)によってわかりやすく分類されている。たとえば、名前だけでもハッピーになれそうな「ふはふは豆腐」――豆腐と卵を混ぜ、よくすり合わせたものを“ふわふわ煮”にする料理なのだけど、本書のレシピでは、そこにトマトの酸味と、焼き海苔の香ばしさもプラス。まろやかな味を現代風に程よく引き締めつつ、食感はもちろん「ふはふは!」のままだ。

 続いて「再炙田楽(ふたたびでんがく)」。豆腐を醤油で漬け焼きし、味噌をつけて炙るというシンプルな料理で、それだけでも香ばしい匂いが漂ってきそう――なのだけど、本書では、そこにひき肉をベースに作った肉みそを載せることで、おかずとしてのボリューム感をさらにアップ!……といった具合に、本書のレシピは、元本の『豆腐百珍』をただそのまま再現するのではなく、現代人の食生活に合わせ、より「進化した」料理に仕上げている点が一番の特徴なのだ。

 一方、『卵百珍』の料理も、負けず劣らずおいしそう。そもそも『卵百珍』の著者、器土堂(きとどう)主人は、中国やオランダ系の料理を和風化した「卓袱(しっぽく)料理」を長崎で学んだ粋人で、その影響からか、こちらの料理は『豆腐百珍』以上にモダン。中には「カステラ卵」や「冷やし卵羊羹(ようかん)」のようなスイーツのメニューまで含まれている――今と同じく、デザートは別腹だったんですね。

 現代の「創作料理」に通じる、食の楽しいアイデアがいっぱい詰まった『豆腐百珍』と『卵百珍』の料理たち。2022年の年始めは、本書を片手に、あなたも自宅のキッチンで、「江戸グルメ」デビューしてみませんか?

文=内瀬戸久司

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