朝起きられなくて子どもが学校に行けない…「やる気の問題」と誤解されやすい「起立性調節障害」とは

出産・子育て

公開日:2022/1/13

起立性調節障害(OD) 朝起きられない子どもの病気がわかる本
『起立性調節障害(OD) 朝起きられない子どもの病気がわかる本』(田中大介:監修/講談社)

 朝、何度起こしても起きなくて遅刻続き。最近は学校を休みがちになってきた…お子さんのそんな状況に悩んでいる親御さんはいないだろうか。「やる気がないから?」「怠惰な性格だからか?」などとつい思ってしまうかもしれないが、もしかしたらお子さんは「起立性調節障害(OD)」という成長期の子どもに多い病気の可能性があるかもしれない。『起立性調節障害(OD) 朝起きられない子どもの病気がわかる本』(田中大介:監修/講談社)によれば、中学生の約1割、不登校の子どもの3~4割が、ODに該当するという。

起立性調節障害(OD) 朝起きられない子どもの病気がわかる本 p.6~7
イラスト:梶原香央里

「起立性調節障害(OD)」とは、体の機能を調節する自律神経がうまく働かないためにさまざまな不調を起こす病気のことで、特に心臓が排出する血液の分布がアンバランスになって脳への血流が低下する起立直後や起立中に症状が出やすい。小学校高学年以降の子どもに多くみられる病気で、思春期の急激な身体的変化に自律神経の発達が追いつかなくなることが調節不全に陥る最大の原因と考えられている。なお身体的な成長がひと段落すれば自律神経の調節も次第にうまくいくようになり、大半の子どもは高校卒業くらいまでには症状が出にくくなるという。

起立性調節障害(OD) 朝起きられない子どもの病気がわかる本 p.12~13
イラスト:梶原香央里

 この病気の厄介なところは、朝は苦手でも夜は元気だったり、何かイベントや楽しみがある日は朝から元気だったりして、どうしても周囲には「怠けている」と誤解されてしまいがちなところだ(ちなみに夜元気なのはODの子は午後からが交感神経が優位の活動モードになる時間だから。また、イベントなどがあると朝起きられるのは緊張感から交感神経優位になりやすいから)。本人は起きたくても起きられないのに責められ、「自分はダメなのだ」と自らを精神的に追い込み、さらに症状が悪化することもあるというから注意したい。

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起立性調節障害(OD) 朝起きられない子どもの病気がわかる本 p.16~17
イラスト:梶原香央里

 以下は本書で紹介しているODによくある症状だ。もしもお子さんに思い当たる症状があるなら「専門機関の受診がおすすめ」とのことだが、事前にわかりやすくODの基礎知識から対処法まで紹介している本書を読んでおくと、理解がよりスムーズだろう。

(以下に3つ以上当てはまれば要注意)

□立ちくらみ、あるいはめまいを起こしやすい
□立っていると気持ちが悪くなる。ひどくなると倒れる
□入浴時、あるいはいやなことを見聞きすると気持ちが悪くなる
□少し動くと動悸、あるいは息切れがする
□朝なかなか起きられず、午前中調子が悪い
□顔色が青白い
□食欲不振
□臍疝痛(さいせんつう:おへそのまわりの差し込むような痛み)をときどき訴える
□倦怠(だるい)あるいは疲れやすい
□頭痛
□乗りものに酔いやすい
(日本小児心身医学会編『小児心身医学会ガイドライン集 改訂第2版』による)

 成長期の子どもに多いといっても、実際にはあまり病気の存在自体が知られておらず、誤解を招きやすいのがOD。症状の改善には「周囲の理解」が大きな鍵となるが、病気という認識がないまま知らず知らずのうちに子どもを追い詰めていることもある。本書はこの病気に悩むお子さんやご家族にはもちろんだが、子どもと関わる立場にいる人にも大いに参考になる1冊だろう。

文=荒井理恵

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