彼女が「察して」アピールを見せたとき、彼氏はどうするのか!? 恋愛初心者な恋人たちが織りなす恋愛模様

マンガ

公開日:2022/1/22

柚子川さんは、察して欲しい。1
『柚子川さんは、察して欲しい。1』(茶菓山しん太/集英社)

 先日、小説家で僧侶の瀬戸内寂聴氏が亡くなったが、氏は「恋をすることの大切さ」をよく説いていた。恋をすれば相手を大切に思い、それが「他者を思いやる心」を育むことにも繋がるだろう。ただ、恋に限らず他者を理解することは難しく、時には誤解から仲たがいに発展してしまうこともあるかもしれない。とかく相手を「察する」ことは難しい。『柚子川さんは、察して欲しい。1』(茶菓山しん太/集英社)は、付き合い始めたばかりの男女が相手を察しようとして失敗したり、相手に気づいて欲しかったりするのにうまくいかない恋愛初心者の悲喜こもごもを描いた恋愛コミックだ。

 本作は、高校に入学したての串間託須がクラスメイトの柚子川久留莉に告白し、交際するところから始まる。ふたりとも男女交際は初めてであり、何をどうしてよいか全く分からない状態。さらに久留莉はあまり人付き合いが上手ではなく、一見するとキツめな女子である。感情表現もさほど大きくないので、託須は彼女の感情や考えを理解するのが難しい。そんなふたりがどのようにして関係を深めていくのか、ここが本作の見所といえよう。

 ヒロインの久留莉は積極的なタイプではないので、愛情表現も分かりにくい。しかし決して、恋人らしいことをしたくないというワケではないのだ。そのことを託須に分かって欲しくて、彼女なりに「察して」アピールをするのである。たとえば、髪を切れば気づいて欲しくて自分の髪をいじってみたり、試験が近づいてくると勉強について話を出したり、「一緒に勉強しよう」アピールをしてくるのだ。

advertisement

 託須にとっては、久留莉の「察して」アピールは試練の連続である。彼女が託須の友人たちを酷評するのも、別に悪口ではなく「嫉妬」であり、髪をいじる久留莉が日の経つごとに不機嫌になっていくのも、彼女が髪を切ったことを託須が気づかないためなのだ。恋愛初心者である託須にとって久留莉の行動はある意味「駆け引き」であり、彼は相当なプレッシャーを感じている。しかしそれでも託須は久留莉を理解したいと思い、必死に思考を巡らせるのだ。

 久留莉のことを「察する」のは託須にとって確かに試練ではあるのだが、もちろんただツラいだけではない。久留莉のことを理解できたとき、彼女の見せる笑顔や行動が、とにかくカワイイのである。恋人らしく手を繋いだり、ふたり並んでお弁当を食べたり、託須と久留莉の距離が徐々に縮まっていくさまは、非常に好感が持てる。もちろん、託須がうまく「察する」ことができずに大変なピンチが訪れることもあるのだが、それを不器用ながら挽回しようとする姿も微笑ましいのである。ふたりの交際はまだ始まったばかりであり、恋人たちにとって1年の行事は盛りだくさんであろう。今後も久留莉の「察して」アピールに託須は翻弄されるのであろうが、きっとそれも苦にはならないはず。なぜなら、察することができてもできなくても、彼女のカワイイ仕草が見られるのだから。……うらやましいな、マジで!

文=木谷誠