特殊体質の少女探偵が連続殺人鬼を追い詰める

小説・エッセイ

公開日:2012/10/18

キョウカンカク

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 講談社
ジャンル: 購入元:電子文庫パブリ
著者名:天祢涼 価格:810円

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キョウカンカクというのは、共感覚のことです。人間に外界の情報を伝える五感は、聴覚、視覚、嗅覚、味覚、触覚からなりますが、共感覚の持ち主はこれら音・光・匂い・味・圧力や熱、を別の情報として受け取る特別な体質を有するのです。つまり、音を形や色として感じたり、見えるものを味覚として味わったりするのであります。

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フランスの天才詩人・ランボーに、母音のアルファベットを色で表現する作品がありましたが、もしかしたらランボーも共感覚の持ち主であったのかもしれません。

それはそれとして。本作に登場する少女探偵・音宮美夜こそ、あやまたず共感覚を武器として捜査を進める特異体質のヒロインなのであります。

女性を殺し、そのあとで焼却するという連続猟奇殺人事件が、ある地方都市で起こった。事件は捜査を闇の中に包んだまま、ついに三人目の被害者、女子高生の花恋を出すに至る。花恋の幼なじみ山紫郎は、ひょんなことから銀髪を腰までなびかせた少女探偵・美夜に引き込まれ、捜査協力の片棒を担ぐことになる。声を色として「見る」ことのできる美夜は、はたして殺人鬼を追い詰めることができるか。

登場人物の名前がそろいも揃ってラノベ的。でも、この作品の本質はラノベじゃありませんね。れっきとしたミステリーです。まず、キャラクターが、それ的にカリカチュアライズされていない。伏線が絶妙に張ってある。推理の筋道が綺麗に通っている。そして、これ、すごい動機が発明されています。けっこう虚を突かれます。でもって、動機を知ってから、冒頭からの流れを思い返すと、「おおー、そうかぁ」と感服しますね。

本格もののファンの方、ラノベかっとスルーせず、どうぞ読んでやって下さい。


もくじがなかなかソソる

エピグラフもかっこうよく

事件のあらましはこの通り

おぞましい猟奇犯罪