1年に外出するのは65日以内、大人気ゲーム実況者の日常

エンタメ

公開日:2022/2/4

だから僕は大人になれない
『だから僕は大人になれない』(ぺいんと/KADOKAWA)

 子どものころ、時間を忘れて熱中したことと言えば、何を思い出すだろう? スポーツ? 鉄道? ゲーム? 最近だとYouTubeだろうか? いつからか社会に馴染むために熱中したことを諦めて、大人になっていく。「大人になるってそういうことでしょ」と自分を納得させる。でも忙しい仕事の合間、ふと、「あのときずっと諦めずに続けていたら、今は違う自分になっていたかも…」と想像することはないだろうか?

 今回紹介する本の著者であるゲーム実況YouTuber・ぺいんとは、ゲームと実況への情熱を持ち続けた“子ども”といえるだろう。先に紹介しておくが、ぺいんとは登録者数170万超(2022年1月現在)の“日常組”というゲーム実況グループのメンバーだ。YouTuberといえばキラキラとしたイメージを持たれがちだが、ぺいんとは全くの逆。「1年で300日以上外出しない」と語るほどの引きこもりで、極度の人見知り。レジでのやり取りすら苦手なそうだ。

 そんな初対面の人と話すのが苦手なぺいんとが、なぜYouTuberになれたのだろう? 彼の初エッセイ本『だから僕は大人になれない』(ぺいんと/KADOKAWA)で明らかにされている。本書は、最初は引きこもりゲーマーだったぺいんとが、YouTubeでゲーム実況を始め、いかにして“日常組”を作っていったかがわかるサクセスストーリーだ。発売後すぐに重版が決定し、累計8万部を超えた。“日常組”のファンはもちろん楽しめるし、初の短編小説も痛快で一読の価値あり。また、ぺいんとの苦悩や熱狂についても描かれているので、仕事や人間関係に悩んでいる人にもおすすめしたい1冊だ。

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欲求に従って「楽しい時間」を選び取る

 本書にはぺいんとの“ゲーム”と“実況”への愛やこだわりが詰まっている。勉強や他の時間はそっちのけで、動画投稿にのめりこんだ彼の青春が描かれる。

 ただ、彼が初めて上げた動画の再生回数はたった5回だったらしい。普通ならすぐに諦めそうなものだが、不思議と「辞めよう」とは思わなかったとのこと。そこからぺいんとは、編集や企画にとことんこだわり、試行錯誤を繰り返した。ゲームへの情熱があったからこそ、他の人が思いつかないような企画が出てくるし、ファンもついてくる。今では動画をアップすれば一気に100万回再生を突破するまでになっている。
まわりの目も気にせずに、欲求に忠実に、楽しい時間を自分で選び取ってそこに没頭する。大人が忘れがちで大事なことがここにあるような気がする。

まわりの大人たちから「夢や目標を見つけろ」って言われたこともあった。
だけど、他人の作った目標を追っていった先に
自分が楽しめるものなんてないと思う。

あえて大人にならない時間も必要

 とはいうものの、好きなもの・没頭するものを見つけるというのは、難しいとも思う。仕事や家事などに追われて過ごすうちに、もう1日が終わってしまうという人も多いだろう。

 たとえ没頭するものを見つけたとしても「将来性あるの?」「意味ないじゃん」と言われることもあるだろう。そんなときには、「自分がやっていることに、いつ意味がつくのか、誰が意味を見つけてくれるのかは分からない」という本書でのぺいんとの言葉を思い出してみてほしい。たしかに、YouTubeもはじめはお金にもならなかったが、今では人気のコンテンツとして世の中に愛されている。

 目まぐるしく変わる世の中だから、あなたの没頭していることがいつか日の目を見ることもあるかもしれない。大事なのは、あえて大人にならずに、“子供心”を忘れずに欲求や楽しいことに正直になること。本書『だから僕は大人になれない』は、それを改めて自分に問い直す機会を与えてくれる。本書を読んで「自分の好きなことって何だっけ…」と考えてみてはどうだろう?