映像のクオリティを職人的に支える、「動画検査」の仕事とは?/TVアニメ『鬼滅の刃』第8話

アニメ

公開日:2022/2/3

鬼滅の刃
©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

 轟音とともに渦巻く剣戟がうねる。二本の日輪刀に埋め込まれた爆薬(爆薬丸)が弾け、圧倒的な破壊力を持つ連撃を放つ。鬼と戦う人間たちの組織・鬼殺隊最強の一角、音柱を務める宇髄天元。彼が放つ「音の呼吸 伍ノ型 鳴弦奏々」が、ド派手に炸裂した。

 TVアニメ『鬼滅の刃』遊郭編の第八話「集結」は、原作コミックス第10巻87話「集結」、第88話「倒し方」、第11巻第89話「混戦」をアニメ化している。ついに音柱・宇髄天元と上弦の陸・堕姫、妓夫太郎が対峙する。そこに竈門炭治郎が駆けつけ、激しい戦闘が始まった。妓夫太郎の血鎌に仕込まれた猛毒に蝕まれながらも、一歩も退こうとしない宇髄。彼には戦うべき理由があった――。やがて我妻善逸、嘴平伊之助が集結し、戦いは激化。善逸と伊之助は堕姫、宇髄と炭治郎は妓夫太郎と、刃を交わすことになる。

 二刀流の血鎌から放たれる血の斬撃と、無数の刃物のような帯で斬りつけてくる鬼の兄妹。どの攻撃も、一撃受けたら命を絶たれそうな殺気に満ちている。炭治郎たちはその攻撃を日輪刀で捌くが、攻撃を防ぐことに精いっぱいで、なかなか鬼の本体に斬撃を与えられない。兄妹の鬼を倒すには、両方の頸(くび)を同時に斬る必要がある。防戦一方の炭治郎たちと、圧倒的な強さを見せつける鬼たち。アニメ遊郭編・第八話では、人間と鬼の迫力あふれる相克を、迫真のアクション作画で描いていた。

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 殺気みなぎる鬼に対抗するために宇髄が使う「音の呼吸」の技は、ストーリー的にも映像的にも、見どころのひとつ。この第八話で宇髄が放つ「音の呼吸 伍ノ型 鳴弦奏々」は爆薬を仕込んだ二本の日輪刀を両手で振り回し、爆発とともに周囲を切り刻む技だった。鮮やかな作画と弾けるようなエフェクト(特殊効果)が、その技の独特なアクションを表現していた。『鬼滅の刃』の圧倒的なアクションシーンは、キャラクターのアクロバティックな剣さばきを描くアクションアニメーターたちや、ド派手なエフェクトで映像を彩る撮影スタッフたちの腕前や技量から生まれている。優れた技量の結晶である本作のアクションシーンは、見ごたえたっぷりだ。

 しかし、アクションアニメーターと撮影スタッフだけで、アニメは完成するものではない。アニメは、多くのセクションのスタッフがひとつのカットに重層的な作業をしていくことでできあがっている。まず、原画を担当するアニメーターが絵コンテをもとに画面のレイアウト(構図)を設計、キャラクターの動きの基本となる絵(原画)を描き、時間軸の中でどの絵やどの効果を入れるかを決めていく(タイムシート)。次に、動画を担当するアニメーターはその原画の線をトレースし、タイムシートにしたがってキャラクターの動きに足りない絵(中割り)を描く。そうしてできあがった動き(動画)に、仕上げのスタッフが彩色し、迫力あるアニメの映像ができあがる。つまり、アニメの視聴者がTVで見ている映像は、原画のアニメーターが描いた線ではなく、動画のアニメーターがクリンナップした線なのだ。

 この動画と仕上げの工程は大量の作業になるために、どうしても多くのアニメーターの力が必要になる。多くのアニメーターが参加すれば、品質にばらつきが出てしまう可能性が増してしまうのだが、そこで最後の砦として機能するのが、「動画検査」という役職だ。動画検査というセクションは、上がってきた動画をチェックし、作画のミスをチェックし、作画のクオリティアップを行う。たいてい動画としての経験を数年積んだアニメーターが、動画検査を担当することになり、そこで安定した仕事をした者が原画や作画監督にステップアップしていくのである。

 アニメ『鬼滅の刃』では竈門炭治郎 立志編(第1期)では12人、遊郭編では8人(第8話現在)の動画検査のスタッフが活躍している。彼らが縁の下の力持ちとして動画のクオリティを維持しているから、アニメ『鬼滅の刃』の映像は見ごたえのあるものになっているのだと思われる。

 アニメーターのスタッフワークに注目しているファンは、動画検査にクレジットされているスタッフをチェックするのがオススメだ。きっと、彼ら・彼女らが次世代を担うアニメーターに成長していくのだろう。

 宇髄の嫁のひとり・雛鶴が放った毒によって、上弦の陸・妓夫太郎は動きを止めた。伊之助と善逸は、堕姫の帯を切り刻む。いよいよ鬼殺隊の反撃が始まる。より激しくなる鬼との戦いとスタッフたちの活躍にこれからも注目していきたい。

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