『カムカムエヴリバディ』るいとジョーを繋いだのは、トランペットだけじゃない。サブキャラの魅力を通して、大阪編を振り返る

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公開日:2022/2/8

連続テレビ小説 カムカムエヴリバディ Part1 NHKドラマ・ガイド
『連続テレビ小説 カムカムエヴリバディ Part1 NHKドラマ・ガイド』(NHK出版)

 現在放送中の、朝の連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』。朝ドラ史上初めて、祖母・母・娘、三世代の女性たちを主人公にしたファミリーストーリーです。物語は舞台を京都に移し、三人目の主人公・ひなたが誕生。ひなた編が始まりました。しかしるい・大阪編の人々が少し恋しい方もまだまだ多いはず。今回はるい(深津絵里)とジョー(オダギリジョー)のふたりを見守った大阪編のサブキャラクターたちの魅力を通して、大阪編を振り返ります。

るいにとって家族以上の存在になった、竹村夫妻

 家族に良い思い出がなかったるいにとって、大阪に出てきて幸運だったのが、住み込み先のクリーニング屋を営む竹村夫妻との出会い。「あまり入り込まない、深く過去のことを聞かない、それが私たちの美学」と竹村和子(濱田マリ)が言うように、ふたりは複雑な過去を持つことが明らかなるいと適度な距離を保ちつつ、温かく見守ります。そんなふたりの存在が、るいにとってどれほどありがたいものか。それは、一緒に夕食を食べながら、たあいない会話で笑い合う瞬間にるいが涙するなど、いろいろな場面で描かれてきました。中でも印象的だったのが、ジョーが「るいと結婚したい」とふたりに伝えるシーン。夫妻への恩をまだ返していないのに大阪を離れてはいけない、と自分よりもふたりのことを考えるるい。その気持ちを汲んだ上で「そない、いつまでもおられても困るわ」とあえて強い言葉で返す和子。そしてジョーに向き合って座り、「娘をよろしゅうたのみます」と伝えた平助(村田雄浩)。子どものいない竹村夫妻にとって、るいがどれほど大切な存在になったかも伝わってくる、名シーンとなりました。

 そしてもうひとつの夫妻の魅力は、いかにも大阪らしい夫婦漫才。特に51話、トミー(早乙女太一)がクリーニング屋を訪ねてるいをダブルデートに誘うくだりを、和子がトミー、平助がるいになりきって再現するシーンには思わず笑ってしまいました。商店街仲間の映画店主・西山(笑福亭笑瓶)など近所の人とのやりとりなども、いかにも“大阪”らしい雰囲気。「大阪の温かみ、笑いどころのベースをつくってくれてるのがふたり」とジョー役のオダギリジョーも話すように、本作の大阪編にとって、なくてはならない存在でした。

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ジョーの親代わりとなった定一と木暮の愛

 同じく51話では、ジョーが岡山の喫茶店「Dippermouth Blues」に来ていた少年だと判明。店主・定一(世良公則)はお店の外でもジョーを気にかけていたこと、ホットドッグはジョーにとって定一との思い出の食べ物であることもわかりました。お店に出入りして他の客にトランペットを教えてもらい、巡業についていったことが、ジョーのトランペッターとしての礎となったのです。戦災孤児で、自分の名前を“じょういちろう”としか覚えていなかったジョーに、苗字と名前の漢字を考えてくれたのも定一。実は「錠一郎」の字の中に「定一」が入っていると気づいたとき、戦争で息子を亡くしかけた定一の、ジョーへの思いが胸に迫りました。そんな定一は、ジョーが大阪で住んでいた店「Night and Day」に岡山から巡業に来ていたときに亡くなってしまいます。そして「自分に何かあったときはジョーを頼む」と定一から言われていた「Night and Day」の当時の支配人に声を掛けられ、ジョーは大阪に拠点を移したのでした。るいと同じくジョーもまた、孤独な少年時代を経て居場所を見つけてきた人間なのです。

結局ふたりを一番応援。視聴者にも愛される、「俺たちのベリー」

 最初はジョーを巡る恋敵としてるいの前に現れたベリー(市川実日子)。しかし51話でジョーが唯一無二の存在としてるいと“共鳴し合っている”ことを知ると、身を引くことを決意。そのシーンでのセリフ「言うとっけど、私は負け犬やあらへん。ジョーが世界に認められるトランペッターになったら私の勝ちえ」には、しびれました。それからはジョーの好意を素直に受け入れられないるいのもとを訪れたり、東京に行ったジョーに気を使って全く連絡をとらないるいに「何をのんきな顔してんねん」と喝を入れたりと、ベリー独特の方法でふたりを応援。そんな姿が人気を集め、Twitterには前作『おかえりモネ』のハッシュタグ“#俺たちの菅波”にちなんだ“#俺たちのベリー”タグも登場。ベリーに信頼を寄せるファンからの言葉が集まっています。ひなたと同い年の娘・一恵も生まれ、彼女たちもまた友人になります。ベリーの活躍から、今後も目が離せません。

 こうして、周囲の人に恵まれながら、孤独な過去を乗り越えてきた、るいとジョー。京都編では家族に恵まれなかったふたりが親となり、試行錯誤しながら子どもと向き合う姿が描かれています。ひなたが主人公の京都編ではありますが、ふたりが今後どうなっていくのかにも注目です。

文=原智香

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