「子育ての精神論はもういいです!」怒らずラクな子育てができる「しくみ」【やってみた】

出産・子育て

更新日:2022/3/30

マンガでわかる 精神論はもういいので怒らなくても子育てがラクになる「しくみ」教えてください
『マンガでわかる 精神論はもういいので怒らなくても子育てがラクになる「しくみ」教えてください』(中島美鈴:著、あらいぴろよ:マンガ・イラスト/主婦の友社)

 子どもの朝の支度が遅くていつも遅刻ギリギリ。ゲームばかりで宿題をせず気づいたら寝る時間になっている…。そんな時、「また怒らないといけないの!?」「あのセリフ何千回言ったかな…」とうんざりしますよね。静かに忠告しても聞かないから、ほどなくして声を荒げることになり、それでも終わらなくて最後は親子でバタバタ。だけど問題自体は解決していないから、翌日また怒ることに。

 怒るって精神的にも肉体的にもしんどい。怒らなくていいなら、どれだけラクだろうか…。

 そんな“怒り”の無限ループに陥っている人に、『マンガでわかる 精神論はもういいので怒らなくても子育てがラクになる「しくみ」教えてください』(中島美鈴:著、あらいぴろよ:マンガ・イラスト/主婦の友社)をおすすめします。物の場所を決めたりタイマーを使ったりして「物と時間の管理」をしながら、「環境と物理的な問題」に向き合うだけで“自分を管理できる子”を育んでいく、すごい本なのです。

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マンガでわかる 精神論はもういいので怒らなくても子育てがラクになる「しくみ」教えてください p.48

マンガでわかる 精神論はもういいので怒らなくても子育てがラクになる「しくみ」教えてください p.49

 たとえば、朝の着替えに時間がかかってしまう子は、「何を着ようかと考える」だけでストレスがたまっているのかも。その悩みさえ解消すれば着替えがスムーズにいくはず! そこで、さっそく「物の管理」を変えてみましょう。

 本書が提案するのは「朝の着替えをワンセットにして丸めておく」というもの。洗濯物をたたむ段階で「Tシャツ・ズボン・靴下・マスク・ハンカチ」をワンセットにし、最低でも5セット作っておけば、平日の朝に着ていく服に迷って支度が遅くなることはありません。ポイントは、子ども自身がセットを作ること。これで、「着たかった服があるのに洗濯されていない!」と毎朝ケンカになることはなし。おまけに、子どもが着ない服を処分できるお掃除効果もアリ。

実際に試してみたら、いいこと尽くし

 筆者もさっそく試してみました。息子はまだ保育園児で、園の着替えを分けておく必要があるため、朝の着替えセットではなく、脱いだパジャマに下着を挟んでから置き場所に戻すという“パジャマセット”を作ってみました。ただでさえ「まだ遊んでるからお風呂に入らない!」とダダをこねる息子に、パジャマの準備をイチからさせるのは到底ムリでしたが、これなら「引き出しからセットを取り出す」のワンアクションで息子のやる気もアップ。怒られることなく「自分でできた」のが嬉しいらしく、「僕パジャマの場所知ってるよ」と得意そうです。「親は怒らない」「子どもはご機嫌」「自分から進んでやる」と、まさにいいこと尽くし。

物や時間の管理は放っておいても身につかない

「物の置き方」「物の置き場所」「時間の管理」などは、得手不得手はあるにせよ、大人なら自分で把握できているもの。でも、まだ発達途中の子どもの場合、放っておいて自然に身に付くものではないのだとか。つまり親が教える必要があるのです。

 とはいえ、「どうやって教えるの」となりますよね!? そこが難しいところだし、特に自分自身が管理や整理が苦手な人にとってはつらいところ(筆者含め)。それをイチから教えてくれるのが本書なのです。個人的な意見ですが、塾の先生から“勉強のやり方”を教わると、伸び悩んでいた成績が伸びていく…というのと近い気がします。方法がわかれば解決する問題って意外と多いのかもしれません。

しくみを見直して行動を変える「認知行動療法」

 本書の著者は、認知行動療法を専門とする臨床心理士の中島美鈴さん。自身にADHDの傾向があり、時間や物の管理が苦手なことから、しくみを見直し、行動を変えながら生きてきたとか。なぜそれができないのかを分析し、それを元に、どうしたらできるのかを考えて行動を変える。「認知行動療法」というと言葉は難しいけれど、子どもに物事を教えるのにこんなにわかりやすい方法はないな、と本書を読んで感じています。

マンガでわかる 精神論はもういいので怒らなくても子育てがラクになる「しくみ」教えてください p.170

マンガでわかる 精神論はもういいので怒らなくても子育てがラクになる「しくみ」教えてください p.171

 朝の支度のほかに、多くの親が直面する子どもの困りごと…たとえば、忘れ物が多い、プリントがランドセルの下でぐしゃぐしゃになっていて当日発見される…、夏休みの宿題や読書感想文が終わらない…などなど。それらの悩みもスパッと解決しそうで、「こんな方法があるなんてありがたすぎる」と感動すら覚えています…!

 時間がかかる? と思うかもしれませんが、それは最初の「しくみを作る」時の作業だけ。道具も紙やスマホアプリなどを利用するくらいで、家にあるもので済ませれば、お金もかかりません。最初は「管理」するのですが、それが子どもの「習慣」になってしまえばこっちのもの。一生モノの習慣が身に付きます。

マンガでわかる 精神論はもういいので怒らなくても子育てがラクになる「しくみ」教えてください p.54

マンガでわかる 精神論はもういいので怒らなくても子育てがラクになる「しくみ」教えてください p.55

 ポイントは、親が一方的に進めるのではなく、親子がチームになって相談しながら環境を変えていくこと。その繰り返しによって「成功体験を積む→チャレンジできるようになる→自分を責めたりせずに前向きに切り替えができる→自立する」と、幸せな将来に向けたループができていくのだとか。これまで、そもそも子どもが把握できていない物や時間の問題でガミガミ怒っていたなんて、大反省。でも、ここからが振り出し。「18歳までに“前向きな切り替えができる子”になる」のが目標です!

「認知行動療法のすばらしいところは、問題行動の原因をその人の人格や性格のせいにしないことです。私はそこが大好きです」

と著者は語ります。朝の支度や宿題ができないのは、やり方を知らないだけ。問題があるとしたら人格や性格ではなく物の考え方。「こうすべき」という考え方のクセを変えていくことで、行動を変えることは可能なのです。子どもが「だらしない」わけでも、自分が「ダメ親」なわけでもなかったんだ…と自分を責めることがなくなり、勇気をもらいました。それに、子どもに相談を持ちかけると意外とスムーズに対応してくれるし、チームとして作戦を立てていくのってすごく楽しいんですよね。

 コミックとコラムが交互に展開されて非常にわかりやすく、あらいぴろよさんの漫画はめちゃくちゃ面白くて、感動どころまであり、疲れが吹っ飛びます! 気合いや根性、心の余裕などの精神論は必要なし。子育て論の常識が覆されるので、「子育て本を読んできたけど変われなかった」という人にもおすすめです。

文=吉田あき

▼本書の紹介動画はこちら

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