又吉直樹、『ぐりとぐら』が芸人への道しるべに!? 「第3回小学生がえらぶ!”こどもの本”総選挙」ベスト10結果発表! 1位は?

文芸・カルチャー

更新日:2022/2/11

NPO法人こどもの本総選挙事務局

 こどもたちに面白い本と出会える機会を作り、本をもっと身近に感じてもらいたいという思いから開催されている「第3回小学生がえらぶ!“こどもの本”総選挙」(NPO法人こどもの本総選挙事務局)の結果発表会が、1月29日都内で行われた。

 今回で3回目となるこの総選挙は、過去2回の実績では延べ35万人以上のこどもたちが参加。第3回も、全国の小学生が「今まで読んだ本の中で一番好きな本」を投票し、総計168,405票の投票が集まった。また、こどもたちが社会を動かす第一歩を応援するプロジェクトとして、投票1票につき1円が、病気のこどもとその家族が利用できる滞在施設「ドナルド・マクドナルド・ハウス」に寄付される。

 結果発表会では、投票者の中から選ばれた“こどもプレゼンター”が、自ら投票した本と選んだ理由を動画で発表し、作者を表彰。第2回に続き、アンバサダーを務めるのは芸人・作家の又吉直樹さん。本との出会いや読書の楽しさを語り、会場を盛り上げた。発表会の様子は、2月11日(金・祝)にYouTubeチャンネル「こどもの本総選挙 TV」で配信される予定。

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又吉直樹さんコメント

「毎年、どんな本が選ばれるのか楽しみにしています。僕は絵本も好きで、こどもの頃に『ぐりとぐら』を読んで、後々自分のコンビ活動にも繋がっていったような気がします」とコメント。司会者から「ホントですか?」と突っ込まれると、「ウソかもしれません(笑)。ただ、仲間と一緒に何かするとか、冒険したり、発見したりする話は好きですね」と場を和ませた。

気になる10位~6位は?

 では、早速10位から順位を見ていこう。今回は、同一で9位が2作品となった。

第9位『ほねほねザウルス ティラノ・ベビーのぼうけん』(ぐるーぷ・アンモナイツ:作・絵、カバヤ食品株式会社:原案・監修/岩崎書店

ほねほねザウルス ティラノ・ベビーのぼうけん

〈作品紹介〉
 カバヤ食品から発売されている大人気の玩具菓子が、楽しい読み物なったのが、この「ほねほねザウルス」シリーズ。主人公のティラノザウルスの「ベビー」が、親友のトリケラトプスの「トップス」、ステゴサウルスの「ゴンちゃん」と一緒に冒険の旅に出る。謎解き、敵との戦いなど、わくわくするストーリーに、迷路やクイズなどが盛りだくさんの作品だ。

〈投票者コメント〉

・仲間で協力して、てきとたたかうところ(6年生)
・わるものの3人組が、勝負して、負けて、きゅうにやさしくなったのが、おもしろいとおもいました(2年生)

〈ぐるーぷ・アンモナイツさん コメント〉

今回は大変名誉な賞を頂きありがとうございます。何より、こどもたちが自分で選んでくれたのが一番嬉しいですね。

 

第9位:『スイミー ちいさなかしこいさかなのはなし』(レオ・レオニ:著、谷川俊太郎:訳/好学社)

スイミー ちいさなかしこいさかなのはなし

〈作品紹介〉
 小さな黒い魚スイミーは、兄弟みんなが大きな魚に飲まれ、一人ぼっち。海を旅して出会った仲間と、大きな魚に立ち向かいます。教科書にも掲載されるなど、世代を超えて愛され続ける作品。

〈投票者コメント〉

・スイミーがいろんなものを見るたびに、元気を取り戻すところがおもしろくてすき(2年生)
・あかいさかなが、スイミーとこれからたくさんのぼうけんができるとおもうと、わくわくする(1年生)

〈好学社・山口氏〉

 レオ・レオニ氏の孫であるアニー・レオーニ氏がコメントを寄せ、好学社の山口氏が代読しました。

「日本の読者の方々から、スイミーでこのような名誉な賞を頂き、大変光栄に思うと共に恐縮しています。小さなスイミーは世界中の子どもたちの想像の海を泳いできましたが、日本の子どもたちには特に愛され続けていると実感しています。協力しあうことや、実現不可能なものを追い求めることなどが、いかに大切であるかをこの話は伝えています。投票結果に喜ぶと共に、スイミーはとてもふさわしいと思いました。最後に日本の皆様に感謝申し上げます。そしてこれからも本のある世界を楽しんでください」

 

第8位『四つ子ぐらし① ひみつの姉妹生活、スタート!』(ひのひまり:作、佐倉おりこ:絵/KADOKAWA)

四つ子ぐらし① ひみつの姉妹生活、スタート!

〈作品紹介〉
 著者・ひのひまりさんのデビュー作。一人ぼっちだと思っていた主人公、実は四つ子だった⁉ それぞれ別の場所で育った4人が、一つ屋根の下で暮らす、キュートな姉妹生活が大人気の作品。

〈投票コメント〉

・四つ子が顔も声も同じだけど、せいかくがちがうから、ハチャメチャで、笑えるところが好き(4年生)
・こどもだけで頑張って暮らしているところが好き!(5年生)

〈ひのひまりさん コメント〉

 この度は、こどもの本総選挙で「四つ子ぐらし」に投票してくださってありがとうございます。これからも心躍るような話をたくさん書いていきたいと思います。読者の皆様にも、四つ子ぐらしの四つ子ちゃんと一緒に、ドキドキワクワクしてもらえたら嬉しいです。

 

第7位『りゆうがあります』(ヨシタケシンスケ:作・絵/PHP研究所)

りゆうがあります

〈作品紹介〉
 貧乏ゆすりをしたり、ストローをガシガシしちゃったり、こどもたちがついやっちゃうクセには、実はちゃんとした理由があるんです。こどもたちが考え出した、思いもよらない理由がいっぱいの作品です。

〈投票コメント〉

・共感できるところや、面白くて笑ってしまうところがいい。何度読んでも飽きないから、ずっと読める(6年生)
・次々に、絶対ないでしょうっていう言い訳みたいな理由を、てれながらいうことがおもしろいと思ったからです(3年生)

ヨシタケシンスケさん コメント〉

 この本は、主人公の男の子がいろんな理由をでっちあげる話なんですが、毎回どんなことにも理由があるわけで、読んでくれた人がそれぞれの理由を考えて、私にとって大切な理由ってなんだろうっていうことを考えるようなきっかけになれば嬉しいです。

 

第6位『5分後に意外な結末①赤い悪夢』(学研教育出版:編/学研プラス)

5分後に意外な結末①赤い悪夢

〈作品紹介〉
 5分程度の時間で読めて、話のラストにはあっと驚くどんでん返しが魅力の、5分後に意外な結末シリーズの第1作。シリーズ累計390万部の突破した人気シリーズ。

〈投票コメント〉

・短時間でも読めるから読書が苦手でも読みやすい。さいごは意外な結末だから面白い(6年生)
・一番最初は主人公が可哀そうと思っても、最後はどんでん返しが待っているという感じで、分かっていてもどんでん返しに引っ掛かってしまう(4年生)

〈学研プラス・目黒氏 コメント〉

 元々このシリーズは、中学生くらいを対象にして作っています。他社様ですが、ベストセレクションという文庫本も出ており、一般の読者の方にも多くの方に読んでいただき、今回は、小学生の皆さんにも選ばれて、非常にありがたいです。

9位から6位までを見た、又吉さんコメント

「バリエーションがすごく多いですね。小学生一人一人が投票していると思いますが、自分が選んでないものと触れ合えるすごくいい機会だなと思いますね。仲間と助け合う話であったり、ユーモアで乗り切る話であったり、そういった話が目立って印象に残りました」

さらに、初めてランクインした本が多く入ったことについて話題が及ぶと、

「スイミーは私が子どもの頃からあった本で、今でも読み続けられてるんだなと思いました。今読まれたものが、10年後20年後残っていくでしょうし楽しみです」

 と話した。

 

第5位 『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編 ノベライズ(みらい文庫版)』(吾峠呼世晴:原作・著、松田朱夏:著、ufotable:脚本/集英社)

劇場版 鬼滅の刃 無限列車編 ノベライズ

〈作品紹介〉
 大人気のコミックス、『鬼滅の刃』。一昨年公開され、日本の歴代興行収入1位を記録した『映画、劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』が小説になって登場。映画に負けず、ノベライズ版も小学生の間で大人気となった。

〈投票コメント〉

・読むだけでクスクスわらったり、なみだがでてくるような、かんどうする本(3年生)
・ほとんど字だけなのに、はくりょくがあるところが好き(5年生)

〈集英社担当者 コメント〉

 たくさんの方に読んでいただきとても嬉しいです。素晴らしい物語を紡いでくださった吾峠先生、松田朱夏先生、ufotableさん、そしてこの本に関わってくださった全ての方に御礼申し上げます。

 

第4位『りんごかもしれない』(ヨシタケシンスケ:作/ブロンズ新社)

りんごかもしれない

〈作品紹介〉
 作者・ヨシタケシンスケ氏の絵本デビュー作。テーブルの上にりんごが置いてあった。でも、もしかしたら、これはりんごじゃないかもしれない。大きなさくらんぼの一部かもしれないし、心があるのかもしれない。こんな風に考えることを果てしなく楽しめる、発想絵本。

 投票者の中から選ばれた、こどもプレゼンターが、動画でコメントを発表した。

〈こどもプレゼンター〉

 主人公の男の子が、机の上に置いてあったりんごを色々と想像して、実はなにかのたまごかもしれないとか、主人公の男の子を捕まえるためのワナかもしれないとか、考えているのがおもしろいと思った。ひとつのことから、たくさん想像を膨らませる様子が、読んでいてワクワクして楽しかったです。

ヨシタケシンスケさん コメント〉

 いろんなことを、あれかもしれない、これかもしれないと可能性を増やして考えていく話です。今こういう状況の中で、色々思い通りにならないこともあると思います。でも、こういう捉え方も出来るかもしれない。こういう風にして面白いことが出来るかもしれない。こうやっていろんな可能性を考えるきっかけになってくれたらいいと思います。いろんな考え方があることを楽しみながら、絵本を読みたくなるようなきっかけになってくれたらいいなと思います。

 

第3位『あるかしら書店』(ヨシタケシンスケ:著/ポプラ社)

あるかしら書店

〈作品紹介〉
 こんな本あったらいいな、が詰まった最高に楽しい、妄想書店を描いた作品。月明かりの下でしか読めない月光本、2つの本を合わせて初めて読むことができる2人で読む本などなど、読んだらきっと、やっぱり本っていいよねって言いたくなってしまう、1冊です。

〈こどもプレゼンター〉

 カリスマ書店の養成所のページで、訓練している人の表情が難しそうな感じやむずむずしながらご飯を食べている絵とか、ヨシタケさんの本はふっと読んで笑っちゃう絵が多いので、もっともっと読みたいです。ヨシタケさんの本を集めて、ヨシタケさんの家にしたいです。

ヨシタケシンスケさん コメント〉

『あるかしら書店』はいろんな本が出てくるお話です。お勧めの本はどれですか? という中で、この本を言ってもらえて嬉しいです。なぜなら、本が好きな人が勧めてくれたと思うからです。本は100年前の人の気持ちがわかったり、地球の反対側の人の面白さが共感できたり、とてもいいものだと思います。あるかしら書店を読んでくれた人が、こういう本もあってもいいなとか、僕だったらこういう本を作ってみたい、本に関わる何かになってみたいなんていう風に思ってくれたらとても嬉しいです」

 

第2位『おもしろい! 進化のふしぎ ざんねんないきもの事典』(今泉忠明:監修/高橋書店)

あるかしら書店

〈作品紹介〉
 生き物の、残念な一面に光をあてた、初めての本です。紫外線を浴びると光るサソリや、敵に襲われると死んだふりをするオポッサムなど、不思議な生き物を122種紹介しています。シリーズ累計455万部突破のベストセラー。

〈こどもプレゼンター〉

 私はいきものが好きです。いきものについて詳しい説明が書いてあったから面白かったです。大人も知らないことがたくさん書いてあると思うので、読んだことがない人は読んでみてください。

今泉忠明さん コメント〉

 長い間、モグラとかコウモリとかねずみとか、調べてきて良かったなと思いました。そのときに得た知識、これが『ざんねんないきもの事典』に役立っています。

5位から2位まで、又吉さんコメントは?

「こどもプレゼンターの声が聞けるとすごく嬉しいですね。同じ本を読んで、大人も一緒に面白がれるので、本のおかげでこどもたちと繋がれているような気がます」とコメント。さらに、「ヨシタケさんの本の家にしたいってありましたが、家族の了承を取った方がいいと思います」と笑いを誘った。

 また、こどもが読んで面白い本は、大人も面白いかもしれないとの発言を受けて、「僕の家にもヨシタケさんの本は何冊もあります。大人が読む本も伝わりさえすれば、こどもも楽しめるものがいっぱいありますから」と語った。

 印象に残った本について聞かれると、「どれも印象に残ってますよ。『りんごかもしれない』も、初めて読んだ時の衝撃はすごい大きかったですし、何度も読み返せる本でもあります。『ざんねんないきもの事典』も、今回改めて読み返したんですけど、読み返すたびに、気になるところが変わっていくというか。そのときの自分の生活と関連してるのかどうか分からないですけど、今回でいうと“甲羅に頭が入らないカメ”。前読んだときは、あぁ他の部分が面白いなあって印象に残ったんですけど、今回は強烈にそれが印象に残って、今の僕の何かを表してるのかなって。帰るところなくなってるのかなみたいな。そういう読み方もできる。皆さんどういう意図で読んでいるかは人それぞれだと思いますが、読書としては何度も読める。1度目が一番面白いとは限らないし、2回目3回目も読めるんで、本棚に好きな本を置いて読むっていうのが楽しいですよね」

 

第1位『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』(廣嶋玲子:作、jyajya:絵/偕成社)

ふしぎ駄菓子屋 銭天堂

〈作品紹介〉
 銭天堂は、幸運な人だけがたどり着ける、不思議な駄菓子屋。女主人、紅子がすすめる駄菓子が、たくさんの運命を翻弄する、ドキドキ感が魅力の作品。第1回から順調に順位を上げて、今回ついに1位に選ばれた。

NPO法人こどもの本総選挙事務局

〈こどもプレゼンター〉

 僕は自作の小説を書いています。言い回しは、銭天堂を参考にしています。なぜかというと、初めて銭天堂を読んだ時、暗くて不気味な女性が思い浮かんですごいなと思ったからです。

NPO法人こどもの本総選挙事務局

〈廣嶋玲子さん コメント〉

 こどもが選んでくれるということで、こんな素敵な賞はないと思ってました。その中に1人でも選んでくれたら嬉しいなって思っていたところ、1位に選んでいただけたということで、嬉しくて嬉しくてたまりません。本を書いて良かったなと心から思いました。

又吉さんコメント

 すごい面白かったです! 駄菓子屋の設定もワクワクしますし、運が良くなければたどり着けないところや、自分が欲しいお菓子がもたらす作用とか、副作用みたいなものに手加減がないというか。ちゃんとほんとに怖かったりするじゃないですか。ああいうところも含めて、解説書とか説明書ってちゃんと読まなあかんねんなって改めて思いましたし。そういう気持ちで集中して読んで、また本に戻っていけるような気もしますし。最後に、お金の硬貨に昭和何年って書いてくれてるじゃないですか。自分が小銭を使うときに、もしかしたら入り口があるんじゃないかとか、日常からこの不思議な世界に入っていけそうな、そういうワクワクする仕組みがいっぱいあって。年齢問わず楽しめる作品かなと思っています。

誰かが好きな本を想像して

 今回の“こどもの本”総選挙の全ての発表が終わり、総論として又吉さんが以下のように語った。

「幅広い作品がありました。廣嶋先生も仰ってましたけど、自分のこととして考えると、16万8000人以上のこどもたちが選んだそれぞれの1位があって、一人に選ばれること自体がすごい嬉しいです。それが、これだけ多くの人に選ばれるのは、素晴らしいことだなって思いました。

 また、自分が好きな本のために“投票する”という行動を起こしてるわけじゃないですか。それってすごい労力だし、思いの強さですよね。それに、1つの本に対してこれだけ好きだと表明できると、自分以外の誰かが好きな本についても想像する力も働くと思います。そうして、それぞれの幅が広がって、本と人を繋げていく。すごくいい場になってるなと改めて思いました」

 全ての順位の発表・表彰がされた後に質疑応答に入り、又吉さんに質問が及んだ。又吉さん自身がこどもに向けて、何か書きたいといった思いがあるかという問いに対し、又吉さんは、「僕自身小説を書いたり、エッセイを書いたりする中で、実は小学生から“『火花』を読みました”みたいな手紙を頂くこともあるんですよ。『火花』は漢字も多いし、芸人の世界のことを書いています。もしかしたら小学生には分かりにくいのかなって思ったりするんですけど、普通に読んで感想をくれる人もいるんで、僕がこども向けにっていう発想はあんまりなくて。こどもたちに読んでほしいって思っても、きっと普段僕が劇場でやってるコントみたいなことや、今まで書いてきた小説みたいな話を全力で書くのかなという風には思います」

 最後に、コロナ禍のこどもたちにメッセージを送った。

「本当は外に行ったり、友達と遊びたい。でも、家にいなきゃいけないとか、一人で過ごさなきゃいけない時間も多くて、さみしい思いをしているかもしれない。ただ、もしかしたら本をすごく読める時間も、あんまりなかったりするかもしれないので、発想を変えて、本を読める時間なんだって前向きに捉えられる人は、そう思ってもいいのかなって。そんな簡単ではないと思いますけど。僕は、今しかできないことってなんだろうって思いながらやってるので、皆さんも工夫してやってもらえたらと思います」

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