もしも借りた本を失くしてしまったら? コミック『税金で買った本』で描かれる、“図書館”を舞台にした人間関係が面白い

マンガ

公開日:2022/2/13

税金で買った本
『税金で買った本』(ずいの:原作、系山冏:作画/講談社)

 多くの人は、一度くらいは「図書館」を利用したことがあるのではないだろうか。本を読むことはもちろん、借りることもできるので本好きにはたまらない施設といえる。しかし利用者の中には、もしかしたらこういう経験がある人もいるかもしれない。「本を失くしてしまった」「本を破損してしまった」──。こういう場合、一体どうすればよいのか。『税金で買った本』(ずいの:原作、系山冏:作画/講談社)は、図書館で起こるさまざまな問題などを扱った珍しいタイプの漫画だ。

 本作の主人公は高校生の石平くん。見た目がヤンキーでガラは悪いが、意外と素直な性格である。そんな彼が久々に訪れた図書館で図書館員の早瀬丸や白井たちと出会い、さまざまな問題に直面しながら図書館のことを知っていくのだ。本稿では物語を紹介しながら、意外と知られていない図書館のことについて触れていきたい。

図書館の本を失くしたらどうする?

 久々に図書館を訪れた石平は貸出カードを作ろうとしたが、図書館員の早瀬丸からある事実を聞かされる。それは「10年前に借りた本を返していない」ということだ。図書館では未返却の本があると、新たな本の貸し出しができなくなる。石平は引っ越しした際に失くしたと答えるが、その場合は「弁償」になるという。この場合の弁償は金銭によるものではなく、あくまで「新しい本」を用意しなければならないのだ。子供の頃に借りた本を買うことに躊躇する石平だったが、なんとか購入して弁償を完了。無事、貸出カードを受け取るのだった。

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図書館の本を破損してしまったら?

 図書館を訪れた石平は、早瀬丸が本を修理している姿を見かける。基本的に破損した本は、図書館員が修理するのだ。中には利用者がセロテープで修理してしまうケースもあるようだが、これはやめたほうがよいという。普通のセロテープだと劣化してベタベタになるので、修理用のテープを使う必要があるからだ。また漫画では利用者の中に、本をわざと破ってしおり代わりに使うケースも登場。早瀬丸が思わず「処刑ですよ!」と言ってしまうように、これは言語道断の行為だ。それでも早瀬丸は「市民の財産ですから、大事に使い切りますよ」と、丁寧に修理する。そう、図書館の本は税金で購入された「市民の財産」なのである。だから大事に扱うように心がけていきたいものだ。

 本書の原作者であるずいの氏は、図書館勤務の経験を持つ。だから漫画に登場するエピソードは、基本的に実際にあった事案である場合がほとんどだろう。また各エピソードの最後には「図書館だより」としてネタの補完情報も掲載されているので、より図書館の実務を知ることができる。そして何より漫画が非常に面白く、まさに「漫画にできないテーマはない」ということを証明してくれる作品なのだ。本好きや図書館好きにはもちろん、普通に漫画が好きだという人にもオススメできる良作だと感じた。

文=木谷誠

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