腸内環境に悪影響を与えるものとは? 専門医が提唱する「毎日ルーティン」

健康・美容

公開日:2022/2/27

医師がすすめる 太らず 病気にならない 毎日ルーティン
『医師がすすめる 太らず 病気にならない 毎日ルーティン』(石黒成治/KADOKAWA)

 ここ20年の医学的研究から、「運動不足が多くの病気の原因」であり、「筋トレをすると腸内環境も改善する」ことがわかってきた。大腸がんの専門医であり、予防医療のヘルスコーチでもある石黒成治氏の最新刊、『医師がすすめる 太らず 病気にならない 毎日ルーティン』(KADOKAWA)より、抜粋してご紹介する。

※本稿は『医師がすすめる 太らず 病気にならない 毎日ルーティン』(石黒成治/KADOKAWA)から一部抜粋・編集しました。

運動をすると「善玉菌」が増える

 ここ20年の医学的研究により、健康かどうかを決めるのは、「腸内環境」であり、良い腸内環境とは、「腸内細菌の多様性が高い」(多種類が存在する)状態であることがわかってきた。

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 そして、「腸内細菌を多様にする」には、腸内細菌のエサになる多様な食物(特に、週に30種以上の野菜・果物)を摂ることが重要であり、さらに最新の研究結果により、運動によって腸内の「善玉菌」の割合が増え、腸内細菌の多様性を増やすことがわかってきた。

 習慣的に運動を行っている人は、運動を行っていない人と比べて明らかに「腸内細菌の多様性が高い」ことも報告されている。

「運動不足」が腸内環境に悪影響を与える

 腸内環境に悪影響を与える外的要因には、①抗生物質、②果糖液糖、③運動不足、④睡眠の乱れ、などがあるが、ここでは「運動不足」について紹介しよう。

 運動不足の代表は、デスクワークで座っている時間が長い人だ。座位時間が伸びれば伸びるほど、死亡のリスクが高まることが報告されている(※ Med Sci Sports Exerc.2009 19346988)。

 その要因は、筋肉の血流が低下することだ。座った状態では、筋肉、特に下肢の筋肉内の血管の刺激がなくなり、血管細胞で作られる一酸化窒素合成酵素が低下し、慢性炎症を引き起こしてさまざまな疾患の誘因になる。

 もうひとつの要因は「最大酸素摂取量」だ。イスに座って生活する時間が長いと最大酸素摂取量は当然かなり低い値になる。

 座りがちな人の50歳時の値が、積極的な運動をしている人の80歳時の値に相当すると報告されている。つまり30年分の健康被害があるといえるのだ。そしてそれは健康寿命の差に直結する。

 これを防ぐためには、連続して15分以上座ることがないように、適宜立ち上がって簡単な下肢運動(屈伸や背伸びなど)を欠かさないようにしなくてはならない。

健康寿命を延ばすために、最も効果的な運動

「最大酸素摂取量」を改善するには、ランニングのような「持久的トレーニング」をイメージする人が多いだろう。週3回、60分程度の持久力トレーニングであれば、健康上のメリットが得られる。しかしそれ以上は体にとってはストレスになる。

 短時間の運動で最大酸素摂取量を向上させるために最も取り組むべきは、「筋トレ」だ。筋肉の力を増強し、筋肉を大きくするための刺激を与えるだけでなく、最大酸素摂取量も増やす。

 特に初期体力が低い場合は、筋トレをするだけで、筋力と心肺機能を同時に向上させることができる。30秒から始めて、4分程度の腕立て伏せ、懸垂、スクワットのような自重トレーニング、タオルやイスを利用した自宅でのトレーニングで、十分健康効果が得られる。

 習慣化のためには、毎日続けられるように、疲労を残さないレベルで運動を止めることが大切。運動の習慣ができるまでは、ちょっと物足りなというレベルで十分だ。

 疲労を残さないために十分な睡眠を取ることも必要。運動は酸化ストレスを与えるため、普段から抗酸化物質豊富な野菜・果物を摂取することも忘れてはいけない。

【著者プロフィール】
石黒成治
消化器外科医/ヘルスコーチ。1997年、名古屋大学医学部卒。国立がん研究センター中央病院で大腸がん外科治療のトレーニングを受け、名古屋大学医学部附属病院、愛知県がんセンター中央病院、愛知医科大学病院に勤務。現在は予防医療を目的とした健康スクールを主宰しヘルスコーチとして活動中。Dr IshiguroのYouTubeチャンネルは登録者数18万人超(2022年2月21日現在)。著書に『食べても太らず、免疫力がつく食事法』『医師がすすめる少食ライフ』(クロスメディアパブリッシング)がある。

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