人気爆発中!“謎に包まれた”ブリアナ・ギガンテに私たちが虜になる理由

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更新日:2022/2/27

世界でいちばん私がカワイイ
『世界でいちばん私がカワイイ』(ブリアナ・ギガンテ/幻冬舎)

「あなたの夢にお邪魔します」。つぶらな瞳にたくましい眉、ボリュームたっぷりのリップとセクシーなほくろ毛――一度見たら忘れられないメイクとファッションで人気爆発中のYouTuberがブリアナ・ギガンテ氏だ。2020年3月からYouTubeの動画投稿を始め、現在のチャンネル登録者数は32.2万人。グッズを出せば即完売、マツコ・デラックスをして「こんなにオシャレに世の中をバカにした人はここ数年いない」「コロナ禍に現れた救世主」と言わしめるほどの存在である。

 今回は、そんなブリアナ氏を、愛を込めてブリアナちゃんと呼ばせていただく。じつは筆者は毎回YouTubeでのブリアナちゃんの新作動画の投稿を心待ちにしているファンである。そんなブリアナちゃん初の著書となる『世界でいちばん私がカワイイ』(幻冬舎)が2月9日に刊行された。

 ブリアナちゃんを知らない人に、まずはその魅力の一端をお伝えしたい。ブリアナちゃんの生業はポールダンサー。コロナ禍でショーやレッスンの仕事が激減したことがYouTubeへの動画投稿を始めるきっかけだったという。

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 チャンネルに投稿されているのは、ゲームの実況、お食事をしている姿、アクティブにスポーツのようなことにチャレンジしている動画などさまざまだが、とりあえず筆者のおすすめ動画を勝手に紹介させていただく。

 まずはYouTube動画によくあるモーニングルーティン。こちらではブリアナちゃんの「シンプルなすっぴん」を見ることができるほか、メイクのコツも披露。

『相席食堂』などのバラエティ番組からブリアナちゃんを知った方に一度見ていただきたいのが、ポールダンスのパフォーマンスをしているカッコいい(けれどブリアナちゃんテイストも満載の)こちら。

 また、コラボ動画では、リル・グランビッチ、バブリーナ、枝豆順子、ドリアン・ロロブリジーダ、穴野をしる子といった錚々たるドラァグ・クイーンの面々がゲストとして登場することも。陰と陽、個性と個性のぶつかり稽古といった具合でこちらも楽しい。

 ブリアナちゃんは動画で、何かをまくし立てて面白おかしく紹介したり 、大きなリアクションをするわけではない。いつもマイペースにおっとりと行動し、あまり口に合わないお味のものを食べたときには、「(おいしさを)上手に感じられてない」と表現するなど、言葉の使い方、所作などに、美しい気遣いが感じられるのだ。そこがブリアナちゃんの動画が癖になるゆえんでもある。

 前置きが非常に長くなったが、2020年3月から250を超えるYouTube動画を投稿しているブリアナちゃんが、初投稿から2年を待たずして出版した初めての著書が『世界でいちばん私がカワイイ』だ。予約時点で発売前重版が決定し、発売後もさらに重版したというから、その注目度の高さがうかがえる。発売にあたってブリアナちゃんは次のようなコメントを寄せている。

皆さん、ご機嫌よを。ブリアナです。本を読む事がほぼ無いと言っても過言では無い私が世にも不思議な巡り合わせで本を出版する機会を頂戴致しました。大変光栄に思っております。この本は私が普段考えている事、人によっては本当に戯言でしかない事を大袈裟に、茶目っ気たっぷりに、皆さんにお伝えしようじゃあないかと夜な夜なしたためた本で御座います。タイトルは屈託の無い事実で御座いますが、皆さんの心にも何かしら浮かび出るものがあれば嬉しい限りです。とくと、お楽しみあれ。

 本書は、ブリアナちゃんのメイクやオシャレについて、恋にまつわること、人間関係や心について、といったトピックごとの3章構成となっている。

 CHAPTER 1「『美しい』を知って、かわいくなりましょう」 では、メイク、ファッションだけでなくスキンケアやダイエット、「食」への向き合い方など、「美しい」や「かわいい」って一体どんなことなのかしら? というテーマが語られる。「ルッキズム」という言葉が広く知られるようになった昨今、個人的には、ブリアナちゃんの存在自体が既存の「ルッキズム」に対する強力なカウンターパンチであるように思っている。

 かわいいって、ただ自由にそう感じるものではございませんか。好みって本当に人それぞれ。誰かの好きを、自分が好きにならなくてはいけない理由など一切ございません。同じように「かわいい」も、それぞれのかわいいがあって当然。

 と、基本的な考え方を前置きした上で、「かわいい」とはバランスのことではないかとブリアナちゃん自身のかわいい論を語っている。この章では、SNSでの情報収集や、お肌の保湿などのちょっとしたテクニックも書かれているので参考にしたい。

 続くCHAPTER 2「恋する毎日を続けましょう」 では、ブリアナちゃんが多彩な恋愛遍歴を経て、現在の彼氏・しゅきぴと出会い、素敵な関係を築いていくまでのことが語られる。読み進めていくと、過去の恋愛においてのブリアナちゃんはかなりの激情型だったよう。しかし、たくさんの出会いと別れ、失敗を経てきたからこそ、「立ち止まるべき相手」しゅきぴと巡り会うことができたという。帯にも書かれている「たくさん下手こきましょう」という言葉は、多くの下手こいた経験から今の幸せを掴んだ道のりを振り返っての言葉なのだ。

 CHAPTER 3は「心を軽くして、あなた自身を守りましょう」 。ブリアナちゃんのYouTubeチャンネルでは、お悩み相談の動画もいくつかあるが、プライベートではあまり人の相談に乗らないという。ただ、もし相談を受ける際には距離感をとても大切にしようと心がけているそうだ。自分を大切にすること=人を大切にすること、というブリアナちゃんの考え方は、本書の中で繰り返し書かれている。この章でも、ストレスとの向き合い方や、他人との距離感について、自分自身をどう大切にしていくかというブリアナちゃんなりの方法が語られている。

 また、本書には、絵本のような語り口と、アーティストmune氏の愛くるしい挿絵で構成された「ブリアナ物語」も収録。謎に包まれたブリアナちゃんの半生を語ったものだが、前書きでは「ものゴツくエグい話は割愛しちゃった」とされていた。しかし語り口こそ優しいものの、その波瀾万丈ぶりはなかなかのエグみがある。父親であるパパ・ギガンテが亡くなったあと、彼のパソコンからエッチな履歴を削除してあげようと考えたブリアナちゃんが、ブックマークに見つけたとあるサイトのくだりは、涙なしには読めなかった。

 本書には、ブリアナちゃんがさまざまな面で重視している「バランス」というキーワードが数多く出てくる。読み終えて、本書に関しても、ブリアナちゃんが「バランス」をとても意識して執筆されたのだろうということをとても強く感じた。どんな年齢で、性別で、性の個性を持っている人が読むのかわからないけれど、読み手それぞれの価値観や感じ方を否定せず尊重し、読み手を選んでしまうような人生のエグみはやんわりと。その上で、ブリアナちゃん自身が感じたこと、考えていることを丁寧な言葉で綴っている。

 個人的には、ものごっつ余計なお世話ながら、メディア露出が多くなるほど、“ちょっと見た目が奇抜な面白キャラクター”としてブリアナちゃんが消費されてしまうことに少し不安を感じていた。しかし、本書を読むと、そういったところもご自身できちんとコントロールされているようだ。続く2月14日には、アクリルカードが同梱されたムック『Briana Giganteのアクリルカード (TJMOOK)』(宝島社)が発売され、今年2022年公開の映画『シャイニー・シュリンプス!』続編への出演も決定している。自分らしく、世間の急流を乗り越えていくブリアナちゃんから、これからも目が離せない。

文=本宮丈子