100人の保育士や幼稚園の先生も推薦! 4年をかけて丁寧に作られた絵本に息子も夢中。『くまのがっこう』作者の最新絵本

文芸・カルチャー

公開日:2022/3/3

パッピプッペポーのパンケーキ
『パッピプッペポーのパンケーキ』(あいはらひろゆき:文、宮野聡子:絵/KADOKAWA)

『いちばんしあわせなおくりもの』で第7回リブロ絵本大賞受賞の宮野聡子さんが絵を手掛け、シリーズ220万部「くまのがっこう」の作者・あいはらひろゆきさんが物語を考え、4年をかけて丁寧に作られた絵本『パッピプッペポーのパンケーキ』(KADOKAWA)。すでに100人の保育士や幼稚園の先生から推薦されているとか。筆者も読んでみました。

3兄弟のパッピプッペポーが、おばあちゃんの誕生日にプレゼント

パッピプッペポーのパンケーキ
(C)Satoko Miyano

 物語に登場するのはこぐまの3兄弟。一番上のお兄さんはパッピ、2番目の真ん中はプッペ、一番下の弟はポー。3匹あわせてパッピプッペポー。この覚えやすさと音感の面白さに、子どもはさっそく引き込まれてしまいます。

 何をするのにも一緒のなかよし3兄弟は、大好きなおじいちゃん、おばあちゃんと暮らしています。今日はおばあちゃんの誕生日。牛さんのミルクをしぼり、にわとりさんの卵をとって、あま〜いハチミツを集めて、おばあちゃんの大好きなパンケーキを作ったのですが、見ていたらお腹がぐーっと鳴ってしまって…。“おあじみ”をしているうちにパンケーキは小さくなってしまったのでした。

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おばあちゃんが3兄弟に投げかけた言葉に感動

パッピプッペポーのパンケーキ
(C)Satoko Miyano

 ふわっふわのパンケーキが完成した時の3兄弟は本当に嬉しそうな笑顔。でも、「小さくなっちゃったの。ごめんなさい」とおばあちゃんにあやまる時には悲しそうな顔になっています。そんな3兄弟をおばあちゃんは、ぎゅーっと抱きしめ、彼らに素敵な言葉を投げかけるのでした。

 悲しそうな顔のパッピ プッペ ポーは、“プレゼントが小さくなったからおばあちゃんに怒られる”と思っていたのかもしれません。でも、大好きなおばあちゃんにプレゼントを贈りたいと感じた気持ちは嘘ではないはず。その結果、怒られることはなく、思わぬ言葉を掛けられて、おばあちゃんの大きな愛情を感じたのではないでしょうか。

 子どもが「あれ?」「へえ〜」と驚きながら納得するような表情になる、この場面。大人もまた、気持ちがザワザワとします。子どもは好奇心旺盛で、いたずらをするたびに口を出してしまいますが、その裏にある気持ちを受け止めることができれば、親の愛情を感じ取って、やがて自己肯定感の高い大人に育ってくれるかもしれません。そんな気づきのある一場面でした。

おいしそうなパンケーキに子どもの目がクギづけ

パッピプッペポーのパンケーキ
(C)Satoko Miyano

 おいしそうなパンケーキも見どころのひとつです。ふんわりと焼けた生地に、とろりとかかったハチミツ、ピカピカの野いちご、やわらかなクリームと、ページからはみ出そうなほど大きく描かれたパンケーキに子どもの目はクギづけ。こんなにおいしそうなんだから、パッピ プッペ ポーも“おあじみ”してみたくなりますよね…。

 ちなみに筆者の息子も、この絵本を読み聞かせた翌朝はかならず「朝ごはんはパンケーキがいい」と言ってくるほど、ここに描かれたパンケーキに夢中になっています。

パッピ プッペ ポーたちの平穏な暮らしに何度も触れたくなる

 3歳頃から読み聞かせができる、ほんの短いストーリーですが、緻密に描かれたページは開くたびに驚きがあり、何度も楽しめます。ブルーベリーを収穫したり、木にくくったハンモックに寝そべったり、毎日の暮らしを楽しんでいる3兄弟。注目は、本のはじめに紹介された家の断面図です。木の幹の中に作られた部屋の様子が細やかに描かれていて、「今は2階でおやつを食べてるね」「地下のお部屋に遊びに行ってる」など、3兄弟を見つけて楽しめます。暮らしぶりが手に取るように伝わって、まるで彼らの暮らす森がどこかに実在しているかのようです。

 筆者の息子はパッピ プッペ ポーを服の色で見分け、1人ずつの行動を観察することにはまり、「パッピはやっぱりお兄さんだね」「ポーはまだ赤ちゃんみたい」と自分なりの発見を楽しんでいる様子。そんな楽しみ方もあると思います。

 本書を読んだ保育士さんからは、「子どもから『この絵本すき』の感想が多くありました」という声もあったとか。おいしそうなパンケーキ、3兄弟の楽しそうな笑顔、平穏な暮らしぶり、そんな愛情いっぱいの家族像が子どもたちの心にも届いて、何度も触れたくなるのかもしれません。

 最後までしあわせな気持ちになれる心温まるストーリーと、眺めているだけでも楽しくなれるイラストで、4年をかけて丁寧に作られたことが十分に伝わってくる1冊。大人にとってもひと息つける、そんな作品になりそうです。

文=吉田あき

『パッピプッペポーのパンケーキ』114人の保育士・先生の推薦メッセージはこちら
https://yomeruba.com/news/entry-12465.html

書籍情報:『パッピプッペポーのパンケーキ』KADOKAWA
https://yomeruba.com/product/ehon/322102001369.html

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