まさに密室殺人のフルコース! 『このミス』大賞文庫グランプリ受賞の本格ミステリーに、読書メーターユーザーも大いに唸る!!

文芸・カルチャー

更新日:2022/3/4

密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリック
『密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリック』(鴨崎暖炉/宝島社)

 これは、密室好きによる密室好きのための密室ミステリーだ。描かれるのは、密室づくしの6つの謎。「3密」どころか「6密室」。陸の孤島と化した雪山のホテルで、密室のスペシャリストが次々に密室トリックを解き明かしていくというのだからワクワクするではないか。

 この作品こそ、第20回「『このミステリーがすごい!』大賞」文庫グランプリを受賞した、鴨崎暖炉さんの『密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリック』。舞台となるのは、殺人現場が密室である限り、罪に問われないというパラレル日本。発生する殺人事件の3割が密室という、未曽有の密室黄金時代を迎えた世界だ。

 そんな中、著名なミステリー作家が遺したホテル「雪白館」で、密室殺人が起きた。谷にかかった橋は落とされ、外界との通信手段も断たれたクローズドサークルで、繰り返される凶行。幼なじみの朝比奈夜月とホテルを訪れた葛白香澄は、偶然この場に居合わせた中学時代の同級生・蜜村漆璃とともに相次ぐ密室の謎に挑むことになる。

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 冒頭から一気に作品世界に引き込み、最後まで驚きが止まらないこの作品。読書メーターにも多くの賛辞が寄せられている。

うみ
ウッハーーー♪ 密室を追い求め、密室と共に生き、密室をみつめ続けるミステリ好きにはたまらない1冊。そうさ、自分のことさ! 読んでも読んでも密室密室密室密室、そして密室のオンパレード!! 汲めどもつきせぬ密室の泉よ♪ 推理合戦も楽しければ、謎に挑む彼らの造形も魅力たっぷりの、何度読んでも楽しいミステリ。終わりの形も美しい。

mao
雪の館、密室殺人、クローズドサークル、おもしろいに決まってる!登場人物も個性的で、私的には名前と人物が一致しやすくて助かりました。テンポ良く、笑いが在りつつも事件が起こり、密室があらわれる!六つのトリック、犯人は?ミステリー好きにはたまらない一冊!

pao
“密室トリックが解けない限り、密室殺人事件の犯人は無罪→密室殺人が激増”という設定がまず良い!警察の密室課、密室代行業者、密室探偵。もう密室だらけ。そんな中、山奥のホテル・雪白館で密室連続殺人が起こる。しかも、雪が降り電話線が切られ橋が落とされるド定番のクローズドサークルものなんて面白いに決まってる♪メインも犯人当てではなく密室トリックの解明で、様々なトリックを存分に堪能出来る。筆者の密室へのこだわりや密室愛が溢れる1冊。

花嵐
あの事件も密室、この事件も密室と密室づくしの本作。そもそも前提となる「現場が密室である限りは無罪であることが担保された日本」という世界観がもう密室しか勝たん!という状況を生み出している。連発される密室とそれを解く探偵という、その構図こそが至高だと思える人にこそオススメしたい一冊。

えりか
密室好きの密室好きによる密室好きのための作品。密室愛に溢れた作品。とにかく密室に始まり密室に終わる。トンデモトリックだとしてもアンフェアぎりぎりだとしてもいいんです。人物描写もホワイダニットもいらない。これはただひたすらに密室殺人への渾身の愛がつまっているのだから。

み☪︎
ネタバレあり:発売前からずっと楽しみにしていてやっと読めました。出てくる事件が全部密室で、事件が起きたら直ぐに現場の図と解決の時にはトリックの図を挟んでくれるから理解もしやすくて、読みやすかった。文体もライトノベルのように軽くて親しみやすい。一緒に密室のトリックを考えたのですが解けたのは一つだけでした。伏線もしっかりと張り巡らされていて、確かにこんなこと言ってた!書いてあった!と沢山ありました。今度は答えがわかった上で読んでみたいな。最初から最後まで飽きずに一気読み出来るほど面白かったです。

三編 柚菜
ネタバレあり:密室に始まり密室に終わる一冊。密室トリックに付随する快感を濃縮に詰め込んでいます。五つの密室のうち四つは著者が高校時代に考案したものも含まれ、五つめの密室に対する助走の役割を果たしていたのではないでしょうか。ライトな語り口で疑心暗鬼に拘わっていないからこそ、読者は純粋にハウダニットに挑める。特に推すべきは五つめで、解決の手がかりは最初から張られており、四つの密室を侮ると最後には足を払われます。密室黄金時代を活かした動機や密室談義、加えて十戒等存分に楽しめました。シリーズとして読みたいが難しいかな?

mayu
‘このミス’文庫大賞グランプリ作品。この作家さんはミステリーが大好きなんだろうなぁ?!!と感じさせる要素がギュッと詰まっている。とにもかくにも密室密室密室。ノンストップで次から次へと続く密室に読む手も止まらず。ミステリーものによくある特徴のある名前にコミカルなキャラ達は少し軽さが気になるものの、読みやすい。山奥の館で起こる密室殺人なんてそりゃあ気になると手に取ったけれど、最後まで息つく暇ない密室の謎に頭が追いつかなくなりながらも楽しい読書だった。

ヒース
世界観から事件の舞台や登場人物の過去や趣味嗜好、さらには宗教までもが密室殺人に満たされている。次々と起こる密室殺人がいとも鮮やかに解かれていくさまは読んでいて心地いい。登場人物の名前が役割やキャラとして使われており、軽快な地の文も相まってとてもスラスラと読める。このリーダビリティと密室がどう作られたかを知りたい欲求が組み合わされば、あっという間に物語は終わってしまう。密室殺人にフォーカスが当たりまくる、なかなか見ない傑作である。

 どのコメントからも、「最高の密室ミステリーに出会えた!」という喜びと興奮がほとばしっているのがおわかりいただけただろう。「ミステリーは登場人物の数が多すぎて、誰が誰やら」という人、「密室の状況説明が難しくてついていけない」という人も臆することなかれ。語呂合わせのような人物名、とにかく詳細でわかりやすい状況説明によって、ミステリーに不慣れな人でも謎解きに集中できる。まだ2月ではあるが、今年のミステリーランキングで確かな爪痕を残してくれそうな一冊だ。

文=野本由起

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