「北欧が好き!」その気持ちが予想外の人生を切り開く! 何歳になっても人生を諦めない発想の秘密

マンガ

公開日:2022/3/12

北欧こじらせ日記
『北欧こじらせ日記』(週末北欧部chika/世界文化社)

 好きなものにのめりこむことが、自分の未来につながる。そこに年齢や性別は関係ない。

 新卒一括採用、有利な20代の転職……。「新しい仕事をするなら若いうちに」という社会に生きながら、高齢化が進む日本で漠然とした不安を感じている人も多いだろう。年を重ねてから一念発起し、好きなことを起点に新しいキャリアを積むには勇気がいる。

『北欧こじらせ日記』(週末北欧部chika/世界文化社)は、自分の好きなものを愛し続けることと行動力で、新しいキャリアを切り開いたchikaさんが、愛らしい絵柄でその経験を具体的に描写するコミックエッセイである。

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 現在、chikaさんは日本の北欧好きを集めたコミュニティ「週末北欧部」を主催していて、そのアカウント名でSNSの発信を続けている。好きなものに対する愛情が人生の可能性を広げるという内容に多くの人が心を打たれ、単行本化が決まるやいなや予約が殺到した。

 本作にはSNSには載っていない描きおろしの漫画やコラム、北欧に関する写真もフルカラーで掲載されている。

 chikaさんは大のフィンランド好きである。その原点は、子どものころ、英会話スクールの先生からサンタの住む村がフィンランドにあると聞いたことにあった。

北欧こじらせ日記

北欧こじらせ日記

北欧こじらせ日記

 実際にフィンランドを訪れたchikaさんは、都市部にも湖などの自然があることや、ほどよい人との距離感、フィンランド語の響きなどに魅せられ、やがて「いつかフィンランドで働きたい」と願うようになる。

 だが、その決意に至るまでの道のりは平たんではなかった。

 大学を卒業後、北欧系の企業に就職したものの会社が無くなることになり、傷ついたchikaさんはしばらく北欧と距離をおくようになる。やがて他の企業で契約社員として働くようになった。

 これは多くの人が働き始めたとき、経験することではないだろうか。たとえば筆者も学生時代に「子どものころからの夢である書く仕事をしたい」と考えたが、就活で思うような成果が得られず、「自分は必要とされていない」と思い込んで他業種の企業に就職した。その後は他の仕事をしながら「もう20代半ばだから夢を諦めなきゃ」と思い込んでいた。

 本作で明かされるchikaさんの経験や過去の悩みは、普遍性のあるものなのだ。

 二社目では契約社員で雇用期間が決まっていたことから、次のキャリアのためにchikaさんは少しでも気になっていることをリストにして、あることに気づく。「北欧カフェ」「北欧イベント」など、並べた言葉がすべて北欧に関連したことだったのだ。

 フィンランドへの愛に再び火がついた瞬間だった。

 一般的に、したいことがあっても行動に移せない人が多いと言われているが、chikaさんの行動は早かった。平日は会社で働きながら週末だけカフェスタッフとして修業し、カフェのオーナーの励ましが契機となって、フィンランドで働く自分の未来を視野に入れるようになる。

“気になる分野があれば「自分に合うかどうか」を試してみることで、思いがけない出会いや学びがあり、それによって少しずつ「選べる選択肢」が増えていくのだと思う。”

 北欧での就職に向けて積極的に行動するchikaさんの前に、やがて想像もしていなかった選択肢が現れ、そこで得た新しい考え方が夢を追う意欲になった。

 コロナ禍で人生の選択肢が狭まったと感じている人がいるなら、本作をぜひ読んでほしい。今、している仕事や住んでいる場所を変えなくても、工夫しだいで人脈や学びを得ることは可能だし、重ねた年齢や今までの仕事は自分の培ってきたものとして、今後のキャリアにかならず生かせるという自信もみなぎってくるはずだ。

文=若林理央

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