「真実は見えるか」──40周年を迎えた『太陽の牙ダグラム』が、令和の時代に甦る!

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更新日:2022/4/4

Get truth 太陽の牙ダグラム (1)
『Get truth 太陽の牙ダグラム (1)』(太田垣康男:著、高橋良輔:監修/小学館)

 アニメ制作会社「サンライズ(2022年4月1日より「バンダイナムコフィルムワークス」へ社名変更)」は、ロボットものをはじめ、多くの名作を生み出してきたスタジオだ。代表作はやはり『機動戦士ガンダム』シリーズであろうが、もちろん他にもさまざまな名作ロボットアニメが存在する。2022年で誕生から40周年を迎える『太陽の牙ダグラム』もそのひとつ。全75話、1981年から1983年まで、足かけ約1年半の歳月をかけて描かれた物語は、ロボットアニメの醍醐味に加え戦争での駆け引きや家族をめぐる人間ドラマを色濃く描いた非常に硬派な内容で、今でもコアなファンが多い。そしてこの令和の時代、ついに『Get truth 太陽の牙ダグラム (1)』(太田垣康男:著、高橋良輔:監修/小学館)として復活を遂げるのである。

 まず『ダグラム』とはどういう物語なのか。地球の植民惑星「デロイア」は、地球への不満から独立の気運が高まっていた。そんな中で地球連邦評議会のドナン・カシムらが監禁される事件が起こるのだが、これは地球側が仕組んだ狂言であり、それを知ったドナンの息子である「クリン・カシム」は、デロイア独立運動に身を投じることになる。そしてクリンはデロイアの独立派が開発した最新鋭コンバットアーマー(以下「CBアーマー」)である「ダグラム」を駆り、デロイア解放戦線「太陽の牙」のメンバーとして戦うのだ。

 地球連邦の圧政に対し独立を求めるという構図は『ガンダム』と共通するところだが、主人公が独立運動に参加して父親らと戦う「骨肉の争い」を描いたことで、戦闘の側面だけでなく人間同士の割り切れない感情や対立、内面を描くことで、物語に一層のリアルさを感じさせた『ダグラム』。コミックとして復活を果たした『Get truth 太陽の牙ダグラム』は、『機動戦士ガンダム サンダーボルト』の太田垣康男氏が手がけている。硬派な物語に加え、CBアーマーもミリタリー色が強く、太田垣氏の劇画寄りな作風に非常にマッチしている印象だ。

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 本作はテレビシリーズの物語をベースに描かれるわけだが、もちろんすべてをトレースするというものではない。クリン・カシムの辿った戦いの軌跡の中で、漫画オリジナルの「ライバル」的な存在が登場するのだ。トラビスとアウラの2人は上官と部下であり恋人同士でもあるが、太陽の牙との戦闘において敗北。トラビスはパイロット生命を絶たれ、アウラも右眼を失った。しかし何よりも戦場でクリンに見逃され命をつないだことに屈辱を感じ、執拗に太陽の牙を狙うようになるのだ。独立を勝ち取る大義のためとはいえ、戦えば敵の恨みも買うことになる。トラビスらの存在によって、物語はよりドラマティックに彩られていくのである。

 本作のタイトルに冠されている「Get truth」は、アニメの次回予告で使われた「Not even Justice, I want to get truth. 真実は見えるか」に由来している。まさしくデロイア独立運動の渦中でクリンが感じた思いであり、タイトルに冠するフレーズとしてはこれ以上ないものだ。『ダグラム』をロボットアニメとして子ども時代に本放送で観ていて、その重層的で難解な内容を理解できなかった人もいるかもしれない。だからこそ、大人になった今こそ「真実」を知るべきなのだ。そして、懐かしく思う人や、まだ知らない人には、この物語をぜひこの機会に楽しんでほしい。クリンたちが駆け抜けた独立の闘争において、一体何が真実なのか。40周年を機に、改めて向き合ってみたい。

文=木谷誠

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