立ち塞がる謎の高性能モビルスーツに連邦とジオンの部隊が共闘!『機動戦士ガンダム外伝 ミッシングリンク』

マンガ

公開日:2022/3/30

機動戦士ガンダム外伝 ミッシングリンク
『機動戦士ガンダム外伝 ミッシングリンク』(おおの じゅんじ:漫画、矢立肇・富野由悠季:原作、バンダイナムコゲームス:協力/KADOKAWA)

 宇宙世紀0079年、地球連邦軍の秘密部隊「スレイヴ・レイス」と、ジオン公国軍の特殊部隊「マルコシアス」が戦うさなか、生き別れた父と子が敵味方として再会する。さらに謎のモビルスーツ(以下MS)「ペイルライダー」に乗った少女が両軍の前に立ちふさがった――。

『機動戦士ガンダム外伝 ミッシングリンク』(おおの じゅんじ:漫画、矢立肇・富野由悠季:原作、バンダイナムコゲームス:協力/KADOKAWA)は、2014年に発売されたプレイステーション3用ソフト『機動戦士ガンダム サイドストーリーズ』に収録されているエピソードのコミカライズだ。

 最近ではスマホアプリ『機動戦士ガンダム U.C. ENGAGE』のリリースや、プレイステーション5やPCなどでプレイする最新作『GUNDAM EVOLUTION』の発表など、以前から多くのゲーム作品が生み出され、ゲーマーたちからも「ガンダム」は高い支持を獲得している。本作の原作ゲームも当時大きな話題となり、登場するオリジナルMSのガンプラも発売され人気を博したタイトルである。

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 本作のポイントは大きく3点ある。まず『機動戦士ガンダム』の「一年戦争」の裏で繰り広げられたかもしれないif的な物語を描いている。連邦軍内での勢力争いや、公式記録に残らない高機能MSの実戦投入などをストーリーの根幹にしているのだ。

 2点目は戦争で数奇な運命をたどる登場人物たちだ。スペースコロニーを地球に落下させたジオン軍の“コロニー落とし”によって何もかもを失い、MSパイロットになった少女。そしてコロニーを落とす作戦に参加したジオン軍の兵士と、連邦軍に居る彼の父親……。戦争に翻弄される彼らの複雑な心情が丁寧に描かれて感情移入してしまう。

 そして最後のポイントは、ガンダム作品の華・MS戦である。この時代に存在していたかもしれないハイペックなMS同士の戦いは必見。おおの じゅんじ氏の高い画力も相まって、緻密な描写と迫力のバトルシーンは、メカ好きならばかなり燃えることだろう。

 オリジナルストーリーとはいえ「ガンダム」の時系列に沿って物語が進み、アニメに登場する組織や基地の名称がちりばめられているので、「一年戦争」とその後の展開を知っていたら大いに想像力をかきたてられる外伝である。

戦争に振り回される父子と、運命を決定づけられた少女の物語

機動戦士ガンダム外伝 ミッシングリンク

 地球連邦政府とジオン公国による「一年戦争」の最中に物語は始まる。連邦軍第20機械化混成部隊・「スレイヴ・レイス」はMSの実戦テストという名目とは別に、連邦軍の高官・グレイヴの命令で、連邦軍内でスパイなど不正を行う人物を処刑・暗殺するという特殊任務を遂行していた。実は隊員もまた、さまざまな軍規に違反した犯罪者たちであり罪の抹消を条件に戦っていた。隊長のトラヴィス・カークランドは、戦前からジオン公国に住む妻と息子に連絡をとろうとした行動をスパイ行為とされ、極刑を言い渡されていたのだ。

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 戦局はというと、連邦軍が地球上のジオン最大の補給基地を攻略した「オデッサ作戦」を経て、ターニングポイントを迎えていた。そこでジオン軍は地球上での反攻をはかり、連邦軍の本拠地・ジャブローに総攻撃を仕掛ける。そこで「スレイヴ・レイス」とジオン公国のキシリア・ザビ直下のMS部隊「マルコシアス」が交戦し、トラヴィスは息子のヴィンセント・グライスナーと戦場で敵味方として再会することに。

 その戦闘中に連邦軍のMS「ペイルライダー」が突如現れ、次々と「マルコシアス」隊のMSを撃破していく。さらにその銃口はトラヴィスとその部下たちにも向けられた。「ペイルライダー」は「スレイヴ・レイス」を闇に葬ろうとする刺客だった。黒幕はグレイヴ。トラヴィスたちは彼にとって用済みになっていたのだ。

 圧倒的な戦闘力をみせた「ペイルライダー」だったが、「スレイヴ・レイス」が「マルコシアス」隊と共闘したこと、さらにMSを自爆させるというトラヴィスの機転によって退却する。

 連邦軍に追われる身となった「スレイヴ・レイス」の面々は、ヴィンセントたち「マルコシアス」隊の残存兵と協力し合い、共に宇宙へ。目的は自分たちを裏切ったグレイヴへの復讐を果たすためだ。

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 物語のもう一人のキーとなるキャラクターが、「スレイヴ・レイス」の前に立ちふさがる「ペイルライダー」を操縦する少女、クロエ・クローチェ。彼女もまた、グレイヴの“使い捨ての駒”となっていた。トラヴィスは彼女と互角に戦うために「ペイルライダー」の2号機である「キャバルリー」に乗り込む。彼はグレイヴを倒すために、自分と同じ境遇の相手と相まみえなければならない。

 さらに後にクロエを助けるヴィンセントは、彼女のすべてを奪ったコロニー落としに参加していたことが明らかになる。そして「一年戦争」の勝敗が決していても戦い続ける彼らの運命は――。

MS戦のハイライトは宇宙で繰り広げられる同型機の戦い!

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 本作の魅力のひとつであるMSを紹介する。トラヴィスが最初に乗っていた機体は、「陸戦型ガンダム」の改修型で隊の名前と同じ「RX-79[G]SW スレイヴ・レイス」。彼の部下であるフレッド・リーバーの機体は「RX-78XX ピクシー」。そして彼らと戦うのが、クロエの「RX-80PR ペイルライダー」である。その後宇宙へ上がったトラヴィスが搭乗することになるのが「RX-80PR-2 ペイルライダー・キャバルリー」だ。この「ペイルライダー」2機の戦闘は本作の大きな山場である。

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 ジオン軍側では「グフ」と「ドム」の特徴を兼ね備えた「MS-08TX イフリート」や「MS-06Z サイコミュ試験用ザク」が登場。さらにアニメ『機動戦士ガンダム』本編のメインキャラクターたちの機体も“カメオ出演”しているのは、原作ゲーム『機動戦士ガンダム外伝 ミッシングリンク』と同じ演出。何がどこに出てくるのかは読んでみてのお楽しみだ。

「一年戦争」の裏というファン心をくすぐる設定、戦いに翻弄される登場人物たちのドラマ、そしてオリジナルMSのバトル。さまざまな要素が凝縮されたサイドストーリーで、ガンダムという作品の懐の深さをじっくり堪能してみてはいかがだろうか。

文=古林恭

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