「勉強についていけない」「学校に行きたくない」――新学期だから知りたい、悩み多き小1のトラブル対処法

出産・子育て

更新日:2022/4/3

隂山先生が教えてくれる 小1の不安「これだけ! 」やれば大丈夫です
『隂山先生が教えてくれる 小1の不安「これだけ! 」やれば大丈夫です』(陰山英男/日本実業出版社)

 毎年春を前に話題にのぼる「小1の壁」という言葉が象徴するように、子の小学校進学に不安を抱える親は多い。この書評を書いている筆者自身の娘も4月から小学生だ。毎日、保育園で遊んでいた子どもが勉強に集中できるのか。幼稚園や習い事で学習を進めている子どもに後れをとらないか。仕事をしながら小学校に通う子どもをケアできるのかなど、心配事を考えると枚挙にいとまがない。かといって慌ただしい年度末に何をすべきかしっかり考える時間もなく、モヤモヤしたまま春を迎える人も多いのではないだろうか。

 そんな不安に悩む人に読んでほしいのが、『隂山先生が教えてくれる 小1の不安「これだけ! 」やれば大丈夫です』(陰山 英男/日本実業出版社)だ。著者は、小学校教師の経験を活かしたメソッドを伝える教育クリエイターで、「百ます計算」の普及で知られる隂山英男氏。小学校1年生にとっての学びや、親としてあるべき姿勢に関して、「これさえおさえればOK」というポイントを教えている。シンプルかつ、子どもの学習や将来を左右する重大事項がわかるため、忙しいけど子どもの教育が気になる親にはぴったりだ。

 本書が伝える内容は大きく分けて、「小1の学びの基本的な考え方」「具体的な学び方」「小1が学ぶ上で大切な生活習慣」「将来のために今、親ができること」の4つ。各パートの中で、「勉強が好きな子にするには何をすればいいですか?」「子どもが『小学校に行きたくない』と言い出しました」といった質問に著者が答える形式だ。多くの親にとって、子どもの小学校入学は、親のサポートが必要な幼児期を抜け、子どもが自分の人生を歩み始めたと感じるタイミングだろう。そんな時期の親が気になり始める「好きなことを見つける」「かしこい子に育てるために」「中学受験」「夢を叶える」といった言葉も並ぶ。

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「入学前の勉強はどんなふうにやるといいですか?」といった学びに関する項目では、この時期の子どもに向く教材や学び方などの具体的な対処法を教えてくれる。一方で、「小学1年生の勉強の目標ってなんですか?」「小1の1年間の勉強で大事なことはなんですか?」というテーマでは、すべての学びの基礎となる計算や、小1こそやるべき「暗記」など、この時期に力を入れるべきことも理解できる。そして著者が繰り返し伝えるのが、「子どもが勉強を好きになる」ことの大切さだ。早いうちからあれもこれもと詰め込んだり、間違いを叱ったり、長時間勉強をさせようとしたりといった親がやりがちな行動が、勉強が嫌いな道へと導くリスクがあると知り、身が引き締まる。

 生活習慣や日ごろの親の接し方も、子どもの学びに直結するという。中でも印象的だったのが、親が子どものためにすべきなのは、適切に目標を設定することだけというアドバイスだ。子どもの今の状態に応じて楽しくがんばれる目標を設定することはかなりの親が苦戦しそうだが、本書全体を読むと、その重要性に深く納得できる。

 小学校でテストや通知表で我が子の評価が数値化されると、周りと比べて不安になってしまう人もいるだろう。なんとかしなければと焦ってしまうことは、子どもの成長に従ってさらに増えるかもしれない。しかし、本書で紹介される習慣や考え方から自分が納得できるものを取り入れて、これさえ守れば大丈夫という我が家のルールを作れば、壁を乗り越えられそうだ。新生活に対する漠然とした不安を抱える心を、課題を整理することで穏やかにしてくれる1冊。

文=川辺美希

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