もう「やる気」に頼らない。テレワーク、おうち時間のダラダラを科学的に解決できる本

暮らし

公開日:2022/4/4

科学的に自分を思い通りに動かす セルフコントロール大全
『科学的に自分を思い通りに動かす セルフコントロール大全』(堀田秀吾、木島豪/ディスカヴァー・トゥエンティワン)

 テレワークが浸透して働き方が個人に委ねられ、食生活や趣味でも選択肢が増えた時代。自律的に動けるかどうかで仕事や私生活の充実度が変わると頭では理解しつつも、自分の欲望やダラダラ癖に負けてしまう。そんな人が多いのではないだろうか。

『科学的に自分を思い通りに動かす セルフコントロール大全』(堀田秀吾、木島豪/ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、そんなあらゆるシーンでの困った「ダラダラ」を、小さな行動や習慣づけで解消する方法を伝える1冊だ。世界の114の研究結果や脳科学などの医学的見地から導かれるセルフコントロール法を、「仕事」「生活」「体」「心」というテーマに分けて紹介している。著者のひとりは、裁判や捜査など事件に関わる人の心理を分析する言語心理学者の堀田秀吾氏。事件を起こした人の「ついやってしまった」という心理や各種依存症に対する理解から、脳の動きやセルフコントロールについてよく知る人物だ。そしてもうひとりの著者・木島豪氏は、治療やその後の患者の人生の質向上にも尽力している医師。現場で得た知見も踏まえながら、医学的根拠に基づくセルフコントロール法を紹介している。

 テレワークをしたことのある人なら共感する困りごとが並ぶのが、「仕事」のパートだ。「仕事をしなきゃいけないのに、なかなか机に向かえない」「仕事中なのに10分おきにネットサーフィン」「5分休憩のつもりが、30分休憩になってしまった」など、身に覚えがある人も多いことだろう。紹介されている対処法の中には、強制的に働く環境を作る、ポジティブな言葉を書いて部屋に貼るなど、よく聞くノウハウもあるが、その根拠が明快に書かれているため納得して行動に移せる。また、「かわいい写真を見る」、「ヴィヴァルディの『四季』の『春』(もしくは高揚感を高める曲)を聴く」など意外なセルフコントロール術も。少なくとも、本書やこの書評を読むくらいの根気があればできそうと感じる簡単なものばかりなので、単調なテレワークの刺激として試してみるのも良さそうだ。

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「二度寝」「お菓子をあと1個だけ」「ジャンクフードがやめられない」など、体に関するダメな習慣への対処法も充実。中には、二度寝にはメリットもあるから、あえて二度寝をスケジュールに組み込む、チョコレートは体にいいので適量を食べるなどの意外なアドバイスもある。「我慢はしたくない」という人も、欲求に従いながら自分をコントロールする方法なら、前向きに取り入れられるのではないだろうか。

 本書を締めくくる「心のダラダラ」のパートも読み応えがある。暗いニュースばかり気になる、イライラするといった心の癖の原因と、それとうまく付き合うヒントが書かれている。イライラしたらラムネを食べる、迷ったら選択肢を減らすなど、ひとつでも習慣づけておけば、気持ちを落ち着ける心のお守りになりそうだ。

 ダラダラ癖の悩みは、仕事環境などが変われば、増えたり減ったりもするだろう。仕事に集中できるようになったら、別の生活の悩みが生まれるかもしれない。本書は、そんなときに一息ついて対処法をチェックできるひとつの取扱説明書として持っておくと良さそうだ。社会状況など自分ではコントロールできないことも多い今こそ、自分をケアすることの大切さを教えてくれる1冊。

文=川辺美希

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