一年戦争の裏で繰り広げられたガンダム同士の激戦! 一世を風靡した傑作ゲームのコミカライズ『機動戦士ガンダム外伝 ザ・ブルー・ディスティニー』

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更新日:2022/4/11

機動戦士ガンダム外伝 ザ・ブルー・ディスティニー
『機動戦士ガンダム外伝 ザ・ブルー・ディスティニー』(たいち庸:漫画、千葉智宏:シナリオ、大河原邦男・NAOKI:メカニックデザイン、矢立肇・富野由悠季:原作/KADOKAWA)

※この記事は作品の内容を含みます。ご了承の上お読みください。

 一年戦争の裏で行われていた対ニュータイプ用戦闘システム「EXAM(エグザム)」を巡る戦い――。『機動戦士ガンダム外伝 ザ・ブルー・ディスティニー』(たいち庸:漫画、千葉智宏:シナリオ、大河原邦男・NAOKI:メカニックデザイン、矢立肇・富野由悠季:原作/KADOKAWA)は「ガンダム」シリーズにおいて、エポックメイキングな作品である。

 本作は、セガのゲーム機・セガサターンのソフトとして1996~1997年に3部作で発売された『機動戦士ガンダム外伝 THE BLUE DESTINY』のコミカライズだ。当時このゲームが大ヒットを記録したことで、オリジナルキャラクターとモビルスーツ(以下MS)を描いた「外伝のゲーム」が次々と制作されるようになった作品なのだ。

 思い返してみれば、私の周りでも「ブルーのジムめちゃ強い!」「後半に出てくるガンダム格好いい!」などとゲームの発売当時にかなりの熱さで盛り上がっていた。

 そしてこのコミック版は、ストーリーの大筋は同じくしながらも、MSのデザインや各種設定をリファインした新たな解釈で描かれており、かつてゲームをやりこんだ人も改めて楽しめる内容になっている。

 ストーリーのキーになるのは、極秘開発された対ニュータイプシステム「EXAM」。一年戦争末期、地球連邦軍側でもニュータイプ研究が深く進んでいたという設定は、「機動戦士Zガンダム」以降の作品とのつながりを想起させる。そして大きな見どころが「EXAM」と一人の少女を巡って勃発する“ガンダムvs.ガンダム”のバトルなのである。

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一年戦争の裏で戦場を駆けた蒼きMS

機動戦士ガンダム外伝 ザ・ブルー・ディスティニー

 宇宙世紀0079年、地球連邦軍とジオン公国軍の間で起きた一年戦争は、連邦軍がジオン軍の資源拠点の奪還作戦(オデッサ作戦)を成功させたことで、新たな局面を迎えていた。

 当時の連邦軍は量産型MSを投入し始めたところで、MS運用のノウハウ、実戦データを取るための実験部隊を組織した。通称「モルモット隊」のユウ・カジマ少尉は、とある任務の途中でジムに似たブルーの機体色のMSと遭遇する。ジオン軍のMSはもちろん、連邦軍側にも無差別に攻撃を仕掛けてくるのだった。やがてそのMS「ブルーディスティニー」1号機は「モルモット隊」に配備されることになる。

機動戦士ガンダム外伝 ザ・ブルー・ディスティニー

「ブルーディスティニー」は対ニュータイプ攻撃システム「EXAM」を搭載するMS。「EXAM」は人の“殺気”を感じることができ、オートマチックに反応する。ただその反応速度は人体に多大な負荷をかけ、搭乗するパイロットの命を奪うことさえあった。さらに暴走すると、敵味方の区別なく殺気を放つ相手を狙い続けるのだ。

 ユウは「ブルーディスティニー」1号機に搭乗すると、コクピットで謎の少女、マリオン・ウェルチの存在を感じるようになる。彼女は「EXAM」システムの開発にかかわったテストパイロットであり、システムに魂を奪われていた……。

機動戦士ガンダム外伝 ザ・ブルー・ディスティニー

「ブルーディスティニー」1号機は、“ジオンの騎士”と呼ばれるニムバス・シュターゼン大尉のMS「イフリート改」と戦う。ニムバスはかつて、「EXAM」システムを完成させるために、マリオンと戦闘テストを行っていた。戦いの果てにユウは「イフリート改」を倒すが「ブルーディスティニー」1号機も大破してしまう。

機動戦士ガンダム外伝 ザ・ブルー・ディスティニー

 ただ戦いはこれで終わらない。ニムバスが開発中だった「ブルーディスティニー」2号機を強奪したからだ。ユウは「ブルーディスティニー」3号機に乗り込み、「EXAM」を巡るる戦いに幕を下ろすため、ニムバスとの決戦の地・宇宙(そら)へ向かう。彼らの“執念”の行きつく先は――。

他作品ともリンクしたガンダム同士の戦い

 本作にはガンダムタイプのMSが複数登場し、敵味方に分かれて直接戦う。これは本作の大きなポイントだ。宇宙世紀作品だと『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』や『機動戦士Zガンダム』などでガンダム同士の戦闘はあるが、カラーリングは違えど同型のガンダムが戦うという図式は、原作ゲーム時代にはかなり衝撃的な展開であった。

 では本作に登場するガンダムタイプのMSを紹介していく。まず「モルモット隊」を襲い、後にユウが搭乗した「RX-79BD-1 ブルーディスティニー1号機」は、ジムに似た頭部だがベースは「RX-79[G] 陸戦型ガンダム」である。

機動戦士ガンダム外伝 ザ・ブルー・ディスティニー

 次にユウが乗るのが、当時の連邦軍の最新鋭の技術を導入されて完成した機体「RX-80EXAM-3 ブルーディスティニー3号機」。全身ブルーの1、2号機と違い、ボディカラーは白が基調だ。

機動戦士ガンダム外伝 ザ・ブルー・ディスティニー

 そしてニムバスが奪い、敵となるのが「RX-80EXAM-2 ブルーディスティニー2号機」。3号機との違いは機体カラーと「EXAM」のリミッターがないこと。パイロットへ過剰な負荷がかかる可能性と、暴走の危険性があるが、ニムバスはその操縦能力で乗りこなし、ユウの「3号機」と決戦を行うのだ。

機動戦士ガンダム外伝 ザ・ブルー・ディスティニー

 さらにこのコミック版「ブルーディスティニー」には、PlayStation 3用ゲームソフト『機動戦士ガンダム サイドストーリーズ』に収録されている『機動戦士ガンダム外伝 ミッシングリンク』や『機動戦士ガンダム外伝 宇宙、閃光の果てに…』の登場人物とMSがゲスト的に登場。外伝ゲーム同士のつながりが描かれ、物語にさらなる奥行きを与えている。

「ミッシングリンク」の機体は、陸戦型ガンダムを改修した「RX-79[G]SW スレイヴ・レイス」。いきなり3号機に“半分”本気で戦いを挑んでくる。

機動戦士ガンダム外伝 ザ・ブルー・ディスティニー

 そして宇宙に上がったユウと3号機は「宇宙、閃光の果てに…」に登場する「サラブレッド」隊に合流し、実戦トレーニングを行うことに。相手はフォルド・ロムフェローの駆る「RX-78-5ガンダム5号機」だ。そんなガンダムとの戦いを経験し、いよいよユウはニムバスと「ブルーディスティニー」2号機との決戦に挑む。

機動戦士ガンダム外伝 ザ・ブルー・ディスティニー

 生まれ変わったコミカライズ『ブルーディスティニー』もついに最終章に突入。シナリオ担当の千葉智宏氏は9巻のあとがきで、ラストが近いことは認めつつ、「物語にさらなる展開を用意している」と明言していた。ぜひゲームをプレイした方もそうでない方も、新しい結末を見届けてほしい!

文=古林恭

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