「戦争」の歴史を学び、未来への教訓にする『バトルマンガで歴史が超わかる本』

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公開日:2022/4/14

バトルマンガで歴史が超わかる本
『バトルマンガで歴史が超わかる本』(茂木誠:著、大久保ヤマト:マンガ/飛鳥新社)

 まさか2022年になって「第三次世界大戦」の危機が叫ばれるなんて思いもよらなかった……まさに今、多くの人がそう考えているだろう。戦争は多くの犠牲者を出す愚かな行為であるのに、なぜ人類は戦争をやめられないのか。それを考える上でのひとつの方法は、人類が歴史において、どんな戦いを起こしてきたのかを見ていくことだろう。現在、Amazonの「その他の歴史関連書籍」でベストセラー1位(2022年4月4日時点)と話題の『バトルマンガで歴史が超わかる本』(茂木誠:著、大久保ヤマト:マンガ/飛鳥新社)は、「人類と戦争」を考える入口になってくれそうな1冊だ。

 本書は歴史上重要な18のバトルをマンガ化して解説することで、世界の歴史を学ぼうというもの。テスト前に歴史マンガのお世話になった人はピンとくると思うが、マンガだと「歴史の理解」がとにかく早い。当時の装束や暮らしぶりも伝わってくるし、登場人物の関係性だけでなくその気持ちまで理解できるからだ。こと戦争に関しては両者の思惑がはっきりしているし、ドラマも迫力もあるのでマンガ向きといえるだろう(実際、少年誌の人気作にはバトルマンガが多い)。著者の茂木誠氏は駿台予備校の世界史講師であり、マンガ本編の前後に「バトル前」として戦いにいたるまでの理由や背景を、「バトル後」にその後の歴史への結果までをきっちりフォロー。子どもにとっては歴史入門にもなるし、大人にとっては「学び直し」にもなるだろう。

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 中には「日本史じゃなく世界史なのに、たった18で大丈夫?」と思う方もいるかもしれない。だがそこはさすが人気予備校講師による本だ。厳選された18のバトルはいずれもその結果が次の時代を大きく変えたり、巨大なトラウマを残したりする人類史上のキーになるものばかり。これらを押さえると2500年の歴史の流れがわかる上に、世界史と日本史もつなげて理解することもできてしまう。

バトルマンガで歴史が超わかる本 p.24-25

バトルマンガで歴史が超わかる本 p.26-27

 たとえば第1章では紀元前5世紀のペルシアvsアテネの「ペルシア戦争」をとりあげる。次々と周囲を攻め滅ぼし中東全体を支配していた巨大な独裁国家・アケメネス朝ペルシアは、都市国家が分立するギリシアへと勢力を伸ばしアテネと決戦。結果はアテネの奇跡的な勝利に終わったが、この戦いの結果が意味することは「民主主義が独裁主義に勝った」ということ。逆にいえば、もしペルシアにアテネが敗北していたら、民主主義はこの世になかったかもしれないことになる。このようにある戦いを通じて、歴史が現在に残した意味を見つけていくのもこの本の面白さだ。

「この世界は、弱肉強食。それが歴史の法則」と著者。現在の国際情勢をみると、第二次世界大戦の悲劇を経てもなお、人間の本質は変わっていないのかと思えてくる。過ちを繰り返さないためにも、戦いの歴史を知り、未来への教訓にしたいものだ。

文=荒井理恵

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