「災害列島」日本で暮らす私たちが生き抜く手掛かりに。最先端技術「防災テック」の今

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公開日:2022/4/12

私たちはいつまで危険な場所に住み続けるのか
『私たちはいつまで危険な場所に住み続けるのか 自然災害が突き付けるニッポンの超難問』(木村駿、真鍋政彦、荒川尚美/日経BP)

 地震、津波、豪雨、洪水……。「災害列島」といわれる日本では、安全地帯はどこにもない。直近でも、3月16日に福島県沖でマグニチュード7.4、最大震度6強の大地震が発生、火力発電所の損壊や東北新幹線の脱線など、多くの人たちの生活に影響を及ぼした。

 災害対策は、この国にとって避けては通れない課題だ。そして、近年ではテクノロジーを駆使して防災に努める「防災テック」の研究に精を出す人もいる。災害分野や土木分野の専門記者たちがまとめた書籍『私たちはいつまで危険な場所に住み続けるのか 自然災害が突き付けるニッポンの超難問』(木村駿、真鍋政彦、荒川尚美/日経BP)では、防災テックの最前線が紹介されている。


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熱海市の土石流で活用された静岡県の「オープンデータ」

 2021年7月3日、静岡県熱海市伊豆山で大規模な土石流が発生した。災害発生の翌日、自治体は原因が「盛り土」にあったと発表。異例の速さでの発表は、大きな話題を集めた。

 それを可能にしたのが、静岡県が整備していた「オープンデータ」だった。オープンデータとは「行政機関などが持っている大量の情報を、機械判読に適した形式で、誰もが2次利用できるようにして公開したデータ」のこと。静岡県では、仮想空間に静岡県を構築する「VIRTUAL SHIZUOKA」構想により、誰でも扱える形式の地形データを整備していた。

 土石流発生後、原因が「盛り土」にあったと究明したのは行政機関ではなく、静岡県の職員がSNS上で集めた専門家による即席チーム「静岡県点群サポートチーム」だった。災害の陣頭指揮を取った静岡県の難波喬司副知事は、記者会見で「データをオープンにしているので、様々な人が、様々な解析をしてくれた。そういう面で時代が変わったと痛感している」と述べたという。

昼夜を問わず、災害状況を把握する人工衛星

 2018年6月28日発生の西日本豪雨や、2019年10月中旬に日本へ上陸した東日本台風など、大規模な広域災害で被害状況を把握するのはたやすくない。

 その現状を克服するための技術として、近年は人工衛星が注目されている。人工衛星を駆使すれば「大まかに被害の全体像を把握して調査箇所を絞り込んだり、調査ルートを検討したりして、詳細な調査はドローンなどで、といった使い方」も期待できるという。

 実際、大規模な土砂災害などが生じた2011年9月に発生した紀伊半島大水害では、土砂により川の流れがせき止められてしまう「河道閉塞」の未確認箇所が、人工衛星により発見された事例もあった。従来、夜間での地表観測は困難だったが、現在では「電波(マイクロ波)を地表に照射して反射波を観測」できる「合成開口レーダー(SAR)」と呼ばれる技術もあり、「昼夜・天候を問わず広範囲の被害を把握できる」という。

 将来、全国的に甚大な被害が出るといわれている南海トラフ地震など、私たちの不安は尽きない。テクノロジーが防災へどう貢献していくのか。その動向からは目が離せそうにない。

文=カネコシュウヘイ

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