あの潜入捜査官が、再びあの一流ホテルへ! 累計480万部突破、東野圭吾の大人気シリーズ最新刊!

文芸・カルチャー

公開日:2022/4/20

マスカレード・ゲーム
マスカレード・ゲーム』(東野圭吾/集英社)

 あの敏腕警察官が、再びあの一流ホテルで潜入捜査を行う! シリーズ累計480万部突破、木村拓哉・長澤まさみ主演で映画化されたことでも話題となった東野圭吾氏の「マスカレード」シリーズ。ミステリーとしての面白さはもちろんのこと、ホテルの裏側に迫る「お仕事もの」としても見どころ満載のこのシリーズの最新刊『マスカレード・ゲーム』(東野圭吾/集英社)がついに刊行される。本作はシリーズの集大成となる重要な1冊。シリーズ未読の人ももちろん楽しめるが、特に、一度でもこのシリーズに触れたことがある人は絶対に見逃すことができないだろう。

 描かれるのは都内で発生した3つの不可解な殺人事件。捜査で明らかになったのは、事件の被害者は皆、過去に人を死なせながらも、軽い刑罰しか科せられなかったということ。そして、その時に亡くなった人たちの遺族には皆、憎き相手が殺された事件当日に完璧なアリバイがあるということだった。警察は、遺族たちが協力し合ってそれぞれの復讐を代行する「交換殺人」を行った可能性があるとして捜査を進める。そして、3つの事件の容疑者全員が、同じクリスマスの時期に、一流ホテル・コルテシア東京に宿泊予定だということが判明。過去にこのホテルで発生した2つの事件を解決に導いた刑事・新田浩介は、またもやホテルクラークに扮して潜入捜査を行うことに。現在はコルテシア・ロサンゼルスに勤務するコンシェルジュ・山岸尚美とのコンビ復活はあるのか。新田はどうやって事件を解決に導いていくのだろうか。

 昨今の東野圭吾作品では、2021年4月に発売の『白鳥とコウモリ』にしろ、ガリレオシリーズ最新作の『透明な螺旋』にしろ、「罪への意識」「贖罪」というテーマが見え隠れする。本作でもそれは同様。事件関係者たちの、過去の罪との向き合い方が、この事件の大きな鍵となっていく。

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 だが、そんなミステリーとしての面白さはさることながら、本作の大きな見どころは、新田の変化だ。若手だった新田も今や警部に昇進。捜査一課の係長として部下を率いながらも、上司の命令には背くことはできない身だ。本作ではそんな中間管理職となった新田の苦悩や悲哀が描かれ続ける。特に彼を悩ませるのが、本シリーズ初登場の女性警察官・梓警部。本作のタイトル「マスカレード・ゲーム」の「ゲーム」とは、新田と梓間の捜査上の競い合いが示唆されているに違いない。梓は、女性ならではのハンデを物ともせず、出世を重ねてきたかなりの切れ者ではあるが、事件解決のためなら、上司たちが自ら手を染めるのを躊躇うような違法捜査を厭わない。盗撮・盗聴は当たり前。聞く耳も持たずに危なっかしい行動ばかりを繰り返す彼女に新田は振り回され続ける。

「ホテルを訪れるお客様は、皆さん仮面を被っておられます。その仮面を守るのが私たちの務めだと思っています。それは同時に、仮面の下の顔を信じることでもあります。たとえ警察が容疑者だと断定していたとしても、私たちはその方に対して、犯人ではないという前提で接しなければならないと考えています。それがホテルマンの姿勢です」

 新田が梓の捜査に憤りを覚えるのは、彼がホテルマンの仕事の姿勢を誰よりも理解しているからだ。今までのシリーズでは、新田は好き勝手な行動を繰り返してきたはず。だが、新田はことあるごとに山岸から習ったホテルマンとしての教えを思い出し、慎重に捜査を行うのだ。梓との対比によって浮き彫りになる、新田の成長。思慮深いその姿は、いつの間にか若手時代を終え、中堅層となったサラリーマンたちの心に染み渡るに違いない。どんなに上手くいかないことがあっても、自分の信念を忘れない。どんなに理不尽な目にあっても、上司として部下を守る。そんな新田の姿に何だか勇気づけられてしまう。

 そして、クライマックスでは衝撃の展開が…。あなたも中間管理職となった新田の奮闘をぜひとも見届けてみてほしい。この作品は、仕事への情熱が湧いてくる、ミステリー×お仕事小説。シリーズ未読の人も、元々のファンという人も、この無上のエンターテインメントに魅了されること間違いないだろう。

文=アサトーミナミ

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