ヨシタケシンスケ『かみはこんなに くちゃくちゃだけど』発売記念! 今のあなたにぴったりのヨシタケ作品は?【YES/NO絵本診断】

文芸・カルチャー

更新日:2022/4/20

かみはこんなに くちゃくちゃだけど
(ヨシタケシンスケ/白泉社)

 絵本作家として不動の人気を誇るヨシタケシンスケさん。4月1日には最新刊『かみはこんなに くちゃくちゃだけど』(白泉社)を上梓。1つのりんごをめぐって主人公がひたすら妄想をふくらませる絵本『りんごかもしれない』でデビューし、イラスト集も含めるとヨシタケさんが発表した単著は30を超える。そこで、“今の気分”で、自分にあった1冊が見つかるYES・NO絵本診断をつくってみました。ぜひお試しください!

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それしか ないわけ ないでしょう

それしか ないわけ ないでしょう』(ヨシタケシンスケ/白泉社)

「ねえねえ、知ってる? 未来は大変なんだぜ」というお兄ちゃんの一言にショックを受ける女の子に、おばあちゃんは笑顔であっけらかんという。「だーいじょうぶよ!」。

 未来なんて誰にもわからない。大人はよく「どっちがいい?」と聞くけれど、差し出された選択肢のどれもピンとこないのならば、自分で新しい選択肢を創ってしまえばいいのだと。いいことも、悪いことも、楽しいことも、つまんないことも、なんだって起きる可能性があるのなら、みんなが決まったことのように言うネガティブな未来なんて、思いつく限りの楽しい可能性で吹き飛ばしてしまおうと、おばあちゃんの言葉をきっかけに女の子はあれこれ想像をふくらませていく。

「それしかないわけないでしょう」というヨシタケさんの口癖をきっかけに生まれたという同絵本。ありえそうなことも、ありえなさそうなことも、あれこれ考える女の子の姿にかわいくもハッとさせられる。あなたなら、どんな“それ以外”を考える?

ものは言いよう

ものは言いよう』(ヨシタケシンスケ/白泉社)

 40歳にして絵本作家デビューし、瞬く間に国内外から称賛されるようになったヨシタケさん。子どもの頃から、自分の意見なんて持っていなくて、進路も決められなかったし、小心者で、自分に自信もなかった。けれど人一倍常識的で、目立つのが嫌いだったヨシタケさんだからこそ、読む人の心にそっと寄り添う絵本を描くことができるのだということがわかる、ヨシタケシンスケ解説ブック。

 100問100答コーナーも、「だいたい100問くらい」とするゆるさがヨシタケさんらしい。「子どもと向きあうときに大事にしているのは、相手がねむたいかどうかの見極め」「自分の絵本で気に入っているのは、あんまり笑顔がでてこないところ。楽しいことなんかそうそうないもんネー」など、ユニークな回答にくすりとさせられたかと思えば、各作品の制作秘話にはっとさせられもする。大人になった今でもなりたい自分に追いつくことはできるのかも、と勇気と希望ももらえる一冊。

つまんない つまんない

つまんない つまんない』(ヨシタケシンスケ/白泉社)

 いつもは大笑いするバラエティ番組も、号泣必至の映画も、友達とのおしゃべりも、何ひとつ興味がわかない。なんか、全部が、つまんない。そんなくさくさした気分は誰にだって訪れる。「なんかつまんないんだけど」と訴えた男の子は、忙しいお母さんに「自分でなんとかしてちょうだい」と一蹴されて、しかたなく「なんでつまんないんだろう?」「つまんないのは誰のせい?」と考え始める。

 ずーっと何かが同じだとつまんないのかな。全部がちょっとずつ違うものはおもしろいのかな。そうだ、世界一つまんない遊園地なんてものはあるんだろうか。ジェットコースターが遅い? ジュースがぬるい? なにそれ、おもしろい! ……あれ? つまんないを考えていたはずなのに? この「あれ?」が、ヨシタケさんの魔法。「つまんない」と「おもしろい」は表裏一体。おもしろいと思った瞬間にがっかりすることももちろんあるけれど、すべては自分の発想次第だということを教えてくれるのだ。

あつかったら ぬげばいい

あつかったら ぬげばいい』(ヨシタケシンスケ/白泉社)

 大人になると、常識やまわりの目が気になって、些細なことさえ「こんなことしていいのかな」「こうするべきじゃないんじゃないか」と迷ってしまう。「暑かったら脱げばいい」。そんなことさえ「上司や先生に怒られたらどうしよう」とできなくなってしまうこともある。だけど「いいんだよ」「なんならこういう選択をしてみてはどうでしょう?」と提案してくれるのが、ヨシタケシンスケさんの絵本だ。

「意味の分からないページがあったら、バンバンとばしてわかるとこだけ読めばいい」「誰もわかってくれなかったら、しばらくしまっておけばいい」「あんまりおいしくなかったら、お口直しを探す旅に出ればいい」……。言われてみれば簡単なことなのに、なぜだかできずにいることも「いいんだよ」と背中を押してくれる。どうしたって脱げない場所はあるだろうし、読み飛ばしちゃいけない本もあるけれど、「できるときにはすればいい」と考えるだけでほっとラクな気持ちにさせてくれる一冊だ。

かみはこんなに くちゃくちゃだけど

かみはこんなに くちゃくちゃだけど』(ヨシタケシンスケ/白泉社)

「きれいなものが何かだんだんわかってきたの。片方の目は見えなくなってしまったけれど」なんて言われると、切ない気持ちになる。「とっても素敵な友達ができたの。その場所でめざしていたことは形にならなかったけれど」「欲しいものが手に入ったの。第一希望じゃないけれど」。

 100パーセント幸せな状態をずっと手に入れられている人なんて、ほとんどいない。たいていは「……けれど」という、挫折や悲しみを背負って、今がある。だけど、「けれど……」のあとにポジティブな言葉を続けることで、マイナスよりもプラスの輝きのほうが目に映り、明日をもう少しだけ頑張ってみる力がわく。

「けれど」の位置を逆にして、ネガティブな言葉を続けてしまったら、せっかく手に入れたはずの幸せも濁ってしまうだろう。どうしたって変えようのないできごとを、どんなふうに解釈していくかは自分次第。ヨシタケさんが教えてくれる、言葉遊びという名の小さな魔法で、日常に光を当ててみよう。

文=立花もも

(※白泉社刊行作品のみの診断になります)

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