2022年春アニメ放送中！ ファンタジー世界の不動産屋を舞台にしたお仕事コミック『RPG不動産』

　4月は始まりの季節。新たな生活がスタートし、その環境に適応すべく奮闘している人も多いだろう。また、自分に変化はなくとも、周囲が移り変わっていくことで新しい風を感じることも増える時期だ。そうした新しい日常を迎えているのは、この世界も異世界も同じ――かもしれない。

『RPG不動産』（険持ちよ/芳文社）は、RPG（ロールプレイングゲーム）的な世界の不動産屋を舞台に繰り広げられる、新生活とお仕事の奮闘を描く。『まんがタイムきららキャラット』（芳文社）で連載中のマンガで、2022年4月よりアニメが放送中だ。

　主人公は、春から「RPG不動産」という不動産屋で働くことになり田舎から引っ越してきた魔術師の少女・風色琴音（かざいろことね）。勤務初日に勤務先で家探しを始め、そこで初めて田舎と都会の家賃差を思い知るという世間知らずでちょっと天然な女の子だ。RPG不動産に勤務している僧侶・ルフリアに家賃相場という現実を突きつけられ心が折れかけるも、同社に「マスコット」として配属された尻尾の生えた謎の少女・ファーの紹介でどうにか住処を確保。そこから琴音の社会人生活がスタートしたのだった。

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　RPG不動産で働くのは、琴音とルフリア、ファー、そしてルフリアの幼馴染で戦士のラキラ。彼女たちは、不動産屋とは思えないドタバタを繰り広げながらも、訪れる客の望む家を提供しようと奔走する。RPG世界なだけあり、物件もお客さんも千差万別だ。

　例えば、洞窟内にある壁中が穴だらけの物件や、湿度が高く底冷えがひどい井戸のある部屋、なぜか部屋の隅が真っ黒に焦げた部屋など。しかしこうした物件にも需要があるのがこの世界。不思議と次々に契約が決まっていく。

　この成約率の高さは、琴音を含むRPG不動産の面々があってこそ。普段は自由人の集まりのような彼女たちだが、仕事中は客の希望条件と予算を、数ある物件と照らし合わせ、少しでも幸せになってもらえるようにと一件一件心を込めて対応していく。多少ポンコツな面もあるが、もしも筆者が異世界で物件を探すならこのRPG不動産を活用してみたい。そう思わせる魅力がある。

　しかし、ただただ平和な日常が続いていく――とはいかないのが本作品。ある時を境に、街にドラゴンが現れ暴れるという事件が頻発するようになったのだ。そしてそれと同時期に、ファーが夜中に不審な動きを見せ、その間の記憶をなくしていることが発覚。ドラゴンの正体は……。明るい日常と時折挟みこまれるシリアス展開とのギャップに目が離せなくなる。

　また、アニメ版と原作コミックスは衣装やセリフなど違う点がいくつかある。原作には原作の、アニメにはアニメの魅力があるので比較しながら読むとより楽しめるだろう。近年メタバースの活用が広がり仮想空間をデザインして楽しむ人も増えてきているので、本作のような個性豊かな物件の売買などが生まれるかもしれない。そう思わせる作品だ。

文＝月乃雫